1-1 闇に沈む幹線道路
連載はじめました! しばらくは日々アップします。
基本1章あたり4話構成でサクッと読めることを意識して書いています。
お気軽に楽しんでいただければ幸いです。
あと定番ですが…
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
某市内の幹線道路は、夜になると表情を変える。
昼間は通勤車で混雑するその道も、深夜には車がまばらになり、
街灯の光がアスファルトの上に細い帯を落とすだけになる。
その静けさを破るように、一台の車が遠くから近づいてきた。
エンジン音は不自然に高く、アクセルを踏み込むたびに
道路の闇が震えるようだった。
車はスピードを上げ、前を走る車へ距離を詰めていく。
ヘッドライトが獲物を照らすように強く光り、
パッシングが連続で放たれた。
次の瞬間、クラクションが鳴り響く。
深夜の静寂を破るその音は、
まるで怒鳴り声のように道路に反響した。
前を走る車は、怯えたようにわずかに揺れた。
運転席の女性――美咲は、バックミラー越しに迫る光に目を奪われ、
ハンドルを握る手が震えていた。
「やめて……お願い……」
彼女の声は車内に吸い込まれ、誰にも届かない。
後方の車はさらに距離を詰め、
蛇行しながら左右に揺れ、威圧するように迫ってくる。
まるで獲物を追い詰める捕食者のようだった。
信号が赤に変わる。
美咲はブレーキを踏み、車を止めた。
その瞬間、後方の車は前に割り込み、急停止し、道を塞いだ。
運転席の男が窓を開け、怒鳴り声を上げる。
「トロトロ走ってんじゃねぇよ!
お前みたいなのが道路に出てくんな!」
美咲は震えながら謝るしかなかった。
男は満足したように鼻で笑い、再び車を走らせた。
しかし、恐怖は終わらなかった。
男は前を走りながら、突然急ブレーキを踏んだ。
美咲は避けきれず、車は男の車に追突した。
衝撃。
シートベルトが体を締め付け、視界が一瞬白くなる。
美咲は震える手でスマホを取り出し、警察に連絡した。
だが――その後、事態はさらに悪化した。
男は事故直後の映像を編集し、
「後ろの車が勝手に追突してきた」
「煽られたとか嘘。こっちが被害者」
とSNSに投稿した。
動画は瞬く間に拡散された。
コメント欄には――
「女のくせに運転すんな」
「下手くそが事故起こして被害者ヅラ?」
「煽られたとか言い訳だろ」
「この人、前にもトラブル起こしてたんじゃね?」
と心ない言葉が並んだ。
美咲の名前は晒され、
勤務先にも嫌がらせの電話が届き、
精神的に追い詰められていった。
警察は「追突した側が悪い」と判断し、
煽り運転の部分は取り合わなかった。
美咲は絶望し、
最後の望みとしてアズラへ依頼を送った。
「どうか……あの男を止めてください。
私の人生を壊したあの人を……」
アズラは静かに依頼内容を読み、
久遠へ告げる準備を始めた。
闇夜のおしごとは、ここから始まる。




