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私が話を書くときは大抵が見切り発車なので、どうなるかあんまり分かってないです。
5月。段々と暑くなっていき、制服の衣替えが始まる頃合い。季節の変わり目は気温の上がり下がりが酷いから、体調管理と服を変えるタイミングが大事だ。
今日、アタシは制服を夏服に取り替えた。これから暑い日が続くらしいし、もしものことを考えてタオルケットも持ってきている。ついでに、ちょっと髪の結ぶ位置を上げておいた。ちょっと上げるだけで、首元が涼しくなるから。
少し家を出るのが遅れたせいか、珍しく天澄の後ろ姿を見つける。
「はよ」
「!」
声を掛けると、驚いた風に少し固まってから振り返った。そういえば、アタシから声をかけたのは初めてだったかも。
「あ、夏服にしたんだね」
目敏くアタシの服の変化に気付いたみたいで、天澄は目を細める。
「まーね。暑いし」
天澄も、上に着ているカッターシャツが半袖になってるから、多分夏服に変えたのかもしれない。男子はあんまり見た目変わらないよな、なんて少し考えていると
「髪型も変えた?」
そう、アタシの髪に触れて天澄が問いかける。
「っ、……少し」
気付かれるとは思ってなかった。だってほんの数センチしか上げてないし。誤差の範囲ぐらいだと思うよ、普通は。……でも、気付いてもらったのが少し嬉しくもある。……さすがモテ男ってやつなのか。
「ボクも夏服にしたんだ」
そう言って天澄は微笑みかける。気付いてたから、知ってるよ。昨日までアタシ達は冬服だった。だから、衣替えした時期が被った、って事実を認識して、なんだか変な感じがした。……嫌ではない、かも?
「お揃いだね」
なんて言ってのけるから
「それなら、夏服のやつと全員だろ」
って言い返してみる。
「それもそうだね」
『お揃い』か。あんまり友達とかともそんなもの持ってなかったな、とか考えてた。
5月。段々と暑くなっていき、制服の衣替えが始まる頃合いだ。厚い生地が薄く、長袖が半袖になる。まきは、いつぐらいに夏服になるかなぁ、と思いながら通学路でまきを探す。と、
「はよ」
「!」
後ろからまきの声がした。珍しいね、まきからボクに話しかけるなんて。そう思って振り返ると、
「あ、夏服にしたんだね」
短くなった制服の袖から、まきの細い二の腕が覗く。柔らかそうで、すごく美味しそう。
「まーね。暑いし」
と、いつもより、白いうなじがよく見えることに気が付く。
「髪型も変えた?」
髪に触れると、柔らかくてすごく良い匂いがする。
「っ、……少し」
気付かれるとは思ってなかったみたいだ。ボクがどれだけキミのコトを見てると思ってるの?夏服はやっぱり露出が増えるから、良いものだね。
「ボクも夏服にしたんだ」
そういって微笑みかけてみるケド、彼女は顔をしかめて嫌そうな顔をした。衣替えした時期が被ったのがそんないよくなかったカナ?
「お揃いだね」
なんて言ってみせれば
「それなら、夏服のやつと全員だろ」
ってつれないコトをいう。
「それもそうだね」
何か、お揃いのものをプレゼントしたいな、なんて。ちゃんと『お揃い』だって言えるようなものを、送りたい。アクセサリーは付けないだろうから、キーホルダーやストラップかな?




