第38話 運が良ければ(?)煌神斬をマスターできる
煌神斬。
先代勇者様が使用していたとされる剣技。
グレイル曰く、「光り輝く剣で相手を斬る技。この剣技を使うと、使用者の速さは格段に上がり、そこから繰り出される一撃は、どんな敵でも一刀で両断すると言われている」とのこと。
俺は、この剣技を一度だけ使用したことがある。
その後、東国王都サヒルドの大図書館でこの剣技のことを調べて、霊峰キリサネでグレイルに聞いて以来、煌神斬に関することは何もしていない。
先代勇者様のことを知っている(先代どころか先先代やそれより前の代の勇者様のことも知ってそうな)リーリブと会った時でさえ、俺は煌神斬のことは聞いていない。
それなのに。
それなのに。
それなのに。
どうして今!
厄災級の魔物を目の前にして!
俺は!
(煌神斬のことなんか考えてるんだよ!)
心の中で自分自身のことを責める。
今の俺はおかしい。
気を抜いていた?
違う。俺は集中していたはずだ。真剣だったはずだ。
油断していた?
これも違う。強くなったのは確かだが、厄災級の魔物相手に余裕があるとは思えないし、余裕があると思っていたつもりはない。
では。
なぜ。
俺は。
煌神斬のことを!
そこまで考えた俺は、突如奇妙な感覚に襲われた。
(これは! あの時の!)
あの時。
俺が初めて(といってもその後一回も使用していないが)煌神斬を使った時。
(おそらくだが)なぜか先代勇者様のテレパシーにより、先代勇者様の声が聞こえた時。
その時と……、
(同じ感覚!?)
俺がそう思った瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
(懐かしいな。あの時の剣士が、これほどまでに成長しているとは。今のお前になら許可してやれる。さあ行け、勇者ヒカル!)
どれだけの時が経っていたのだろう。
超長時間。
あるいは、一瞬。
(厄災級は!?)
俺が我を取り戻した時、戦況はほとんど変わっていなかった。
いや、ほとんどどころか、俺が時が止まっていたと勘違いするほど、時は進んでいなかった。
だが。
その一瞬にも満たない時間は。
俺に、とてつもない力を与えてくれた。
「ハアアァァッッ!!」
厄災級の魔物の身体に、無数の傷が刻まれる。
魔物は、全く反応できていない。
これが、伝説の剣技、
「煌神斬」
呟くように口から放たれた俺のセリフには、果たしてどのような意図があったのか。
ドドーン。
厄災級の魔物は、攻撃の暇すらなく、地に伏した。
「ふう……」
どうやら、俺は自分自身の意思で煌神斬を使えるようになったらしい。
俺は、またまた先代勇者様のテレパシーに助けてもらったということか。
「何か素直に喜べねぇな」
今言ったこの言葉は、俺の心情を一番良く表現しているはずだ。
つまり、俺にとっては納得のいく言葉だといえる。そう、俺にとっては。
「ヒカルさんのバカ!」
「このアホ!」
「学習しないわね、アンタ」
自分自身で納得していただけに、突然美少女三人から飛んできた文句に俺は硬直した。
「え、えーっと、何をそんなにお怒りになっているので?」
「決まってるじゃないですか! また一人で無茶したことですよ!」
「あー……、なるほど……」
言われてみれば、前にルリと約束したな。
もう一人で無茶はしないって。
「約束を破って悪かった。でもな、今回は別に前みたいに無茶をしたわけじゃないんだ」
「え? そうなの?」
「ああ。前は無理やり、というか無意識に剣技を発動したけど、今回は自分の意思で使った。俺は手に入れたんだよ、煌神斬を」
「なるほどな。とりあえず納得したぞ。だがな、今ので納得できたのは、私とミナだけだ」
リンカの言葉通り、俺の目の前には、まだ怒り足りないという顔をしているルリがいた。
さて、どうしたものか。そんなことを考えていると、俺より先にルリが口を開いた。
「ヒカルさん、今回は身体に支障をきたす様な無茶はしてないんですね?」
「お、おう。そこまでの無茶はしてない」
「先程のヒカルさんの言葉を信じるなら、ヒカルさんは煌神斬を好きな時に発動できるようになったんですよね?」
「そうだ」
「なら、私と新しい約束です。今後煌神斬は、運魔弓槍の誰かがピンチになった時だけ使ってください。普段から使うのは、私が許しません!」
「うん、わかった。今後、煌神斬は簡単には使わない。約束するよ」
魔王討伐という任務がある以上、できる限り無駄な時間を作らないことが大切だ。
そのことだけを考えるなら、少しでも時間がかかる戦闘では、煌神斬を使うべきだろう。
そして、ルリは当然そのことに気づいている。それを承知で、俺のことを心配して、このような制約をつけたのだ。
この制約を守らないという選択肢は、俺にはない。
「とりあえず、一件落着ということで良いのか?」
「みたい。グレイルにも心配かけたわね」
「我のことは気にするな。それより、なぜミナが我に謝る?」
「べ、別に謝ってなんか、な、ないんだからね!」
ミナがめちゃくちゃ動揺している姿だけ視認した俺とルリは、何が起きているのかさっぱりわからない。
そんか俺たちを尻目に、「わかりやすいやつだな」とリンカが呟いていたが、気にしないことにした。




