第32話 運が良ければ(?)精霊に出会える
なぜかみんなから勇者認定された俺は、とりあえず地上に戻ろうと提案した。
神殿内に取り残した物もなかったので、そのままグレイルに上へと連れて行ってもらった。
「さて……、これからどうするの?」
「当面の課題は、ヒカルの二刀流だろ。勇者問題は一回置いておくとして」
「俺の二刀流はどこで練習するんだよ?」
「おい。我はどうすればいいんだ?」
グレイルにそう言われて、そういえば、と俺たちは思った。
グレイルは、かつて勇者様と共に魔王を倒した実力を持っている。もし一緒に来てくれるなら、俺たち運魔弓槍の戦力も、大きく上がる。
「俺としては、一緒に来てもらえるなら是非お願いしたいんだけど」
「私もそう思います!」
その後、リンカとミナも賛成してくれた。
グレイル本人(グレイルは人ではないが)も、俺たちが反対しないならパーティーに入ってもいいとのことだった。
なので、よろしくお願いしますと頼み、パーティーに加わってもらったのだった。
「今更だけど、このパーティー強すぎない?」
「私たちは全員が伝説の神器持ち。それプラス伝説の聖龍だからな」
ミナの指摘通り、運魔弓槍の強さは凄いことになっている。
というか、グレイルは俺たちと一緒に街とかに入って大丈夫なのだろうか?
「おい、グレイル。お前、昔勇者様たちと冒険してた時は、街の中とかどうしてたんだ?」
「心配するな。我は気配を完全に消すことができる。街の外の人が来ないようなところで待っていれば良い」
なるほど。さすが伝説のドラゴンだな。
これで、当面の問題は俺の二刀流の習得のみになったわけだ。
「さて、練習相手ぐらいならやってあげるわよ?」
「……お願いします」
はあ。ミナが相手か。
……ボコボコにされる気しかしないな。
◇
ミナとの練習前の俺の予想は、見事に的中した。
「タ、タイムタイム!」
「また!?」
ミナが槍を下ろしたのを見てから、俺は地面に寝転がった。否、崩れ落ちた。
「む、無理だろ二刀流……」
「諦めるのはまだ早いわよ!」
「だらしないぞー」
「頑張ってください、ヒカルさん!」
先程から、ミナとリンカからはこのように文句を言われまくっている。
毎回のように励ましてくれるルリがいなかったら、俺はとっくの昔にギブアップしていただろう。
グレイルは、俺たちの近くで寝ている。
どうやら、かなり久しぶりに戦ったせいでけっこう疲れたらしい。
「俺も休みてー」
「何弱音吐いてんの! ほら、練習の続き!」
「もう夕方だぜ? そろそろ晩飯の時間だし、少しぐらい休憩させてくれよ」
「そうですよ。疲れた状態で練習しても、あまり効果がないと思います」
ルリマジで天使だわ。
もう貴女だけですよ、俺に優しくしてくれる人。
「ルリがそう言うなら、晩ご飯食べましょうか」
「準備手伝うぞ」
「よっしゃー!!」
そう叫ぶやいなや、俺は二本の剣を鞘に戻すと、要塞天幕を組み立てた。
鞘を丁寧に地面に置き、そのまま天幕内へとダイブを敢行する。
「ここは天国だわ。休憩がこんなにも素晴らしいものだったとは」
俺一人だけが晩ご飯の支度から外れているが、リンカやミナはそれに対しては文句は言わない。
おそらく、女の子三人で一緒に料理をするのが楽しいのだろう。
「ふあぁぁーー」
このままここでボーッとしていると、思わず寝てしまいそうだ。
寝落ちするのはさすがにまずいので、俺は半ば反射的に考え事を始めた。
二刀流の習得は思っていたよりずっと大変だった。
まず、右手の左手を別々に動かして攻撃するのがとても難しい。
右手だけ、左手だけならまだ大丈夫なのだか、両方を同時に操るのは今の俺では不可能だ。
かと言って、今更二刀流を諦めるわけにはいかない。
これはミナやリンカにそう言われたからではなく、俺自身の意思だ。
(やっぱり練習しないと上達しないよな……)
当たり前のことを頭に思い浮かべていた俺。
その意識は、徐々に暗転していった。
◇
「ふあぁぁー……、あれ?」
寝落ちするわけにはいかないと思っていながら、がっつり寝落ちした俺が目を覚ましたのは、真夜中だった。
見れば、ルリたちはもう寝ている。
俺を無理やし起こしたりはしなかったらしい。
いや、おそらくは起こそうとしたであろうリンカとミナをルリが止めてくれた(俺の独断と偏見である)んだろう。
「腹減った……」
晩飯を食べずに寝ていた俺。
昼間あれだけ動いていたので、当然お腹は減っている。
「何か食べる物ないか?」
そう思い要塞天幕から外に出た俺は、何やら光っている場所を見つけた。
「何だあれ?」
気になった俺は、要塞天幕の結界外で寝ているグレイルを起こさないように慎重になりながら、光っている場所に向かう。
「んんっ!」
ここで、叫ばなかった俺を後で褒めてやりたい。
光の原因。それは、幽霊だった。
「あれ? あなた、私が見えるんですか?」
しかも、話せる幽霊だった。
「幽霊さん? こんなところで何してるんですか?」
「私は幽霊ではありませんよ。精霊です」
何が違うんだよおぉぉーー! と思わず叫びたくなる俺であった。




