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第31話 推測

「遅い」


「これでも急いだんだぞ」


 俺たちは、少しお怒り気味のグレイルに呼ばれて慌てて神殿を後にした。

 急いだのは本当のことだ。そう、()()()()()


 だが、さすがに欲望には勝てなかった。

 俺たちは、目に入った金銀財宝を片っ端から異空間袋に放り込んできたのだ。

 そのせいで少し時間がかかってしまったが、そのことはグレイルには黙っておこう。


「それで、何か収穫はあったのか?」


「ありすぎて怖いぐらいだったぞ」


 これは先ほどと違って、嘘一つない事実だ。

 俺たちが手に入れた金銀財宝の中には、無限の聖水や要塞天幕のような伝説の道具らしき物もあったからな。

 まあ、一番の成果は……、


「こいつだろうな」


 そう言って、俺はグレイルに勇者の(つるぎ)を見せた。

 三人に言われた俺は、本格的に二刀流の特訓をすることに決めた。

 それで、勇者の剣を神殿から持ってきたわけなのだが……


「勇者の剣!?」


 そりゃ驚くよな。

 一緒に魔王を倒した勇者様が使っていた(つるぎ)を、ただの一般人である俺が持ってきたら。


「お、お前、その剣を一体どこで……」


「神殿の中に決まってるだろ……」


「そ、それはそうだが……。いや、そんなことはどうでもいい! 問題は、なんで()()()()勇者の剣を持てているかだ!」


「……は?」


 なんでって、なんでだ?

 剣ぐらい、一定の力があるやつは誰でも持てるだろ?


「ヒカルさんは神速の(つるぎ)も持ててましたし、そこまで驚くことでもない気がするんですが……」


「だよね? 別に、不思議なことはないと思うけど?」


「確かに、剣の重さだけを考えるなら、ヒカルが持ててもおかしくはないだろう。()()()()()考えるのならな」


 え? それってどういうことだ?

 勇者の剣を持つには、何か特別な条件でもいるのか?


「グレイル。詳しい説明を頼む」


「わかっている。勇者の剣は、()()()()()()()()()()()()()()()もてる剣なのだ」


 俺たちは、言葉が出てこなかった。

 グレイルの説明を信じるならば、それはすなわち、俺が勇者だということになる。

 しかしそんなことを、はいそうですかと簡単に信じられるわけがなかった。


「そ、それ、何かの間違いなんじゃあ……」


「少なくとも、この話は事実だ。もっとも、我も今ヒカルを見て、自分が知っていた話を信じられなくなったがな」


 ど、どういうことだよ。

 俺が、この世界の勇者?

 おかしい。それは絶対におかしい。


「でも、よくよく考えてみれば、辻褄が合うかもしれません」


 おかしいおかしいという俺の悩みは、このルリの一言で完全に崩壊した。


「どういうことか、私やミナにもわかるように説明してくれるか?」


「説明の対象に我も入れろ」


「お話したいのは山々なんですが……。その前に、ヒカルさん。話してもいいですか? ()()()()()


 最初は、ルリが何を言っているのかわからなかった。

 だが、今の一言を聞いて、ルリが何を言いたいのかを完璧に理解した俺は、ルリに全てを任せることにした。


「いいぜ。全部話してくれ」


「わかりました。それでは……」


 ルリが話そうとしていたのは、地球という異世界で死んで、ラオラルド転生してきたことだ。

 俺は、このことをルリ以外には話していなかった。


「そんなことが起こったのか……」


「嘘……」


 全てを知ったリンカとミナは、呆然として俺の方を見ている。

 当然の反応だ。俺も、このことに気づいた時は、かなりビックリしたからな。


「それで、ヒカルがこの世界に転生してきたのと、勇者の剣が持てることに、どのような関係があるんだ?」


 グレイルが、逸れかけた話題を元に戻す。

 ちなみに俺は、ルリがこの話をしようとした時点で、ルリが考えていることに見当がついていた。


「ヒカルさんが転生し、旅を始めるようになってから、厄災級の魔物が活発に活動するようになりました。それだけではありません。私たちは、魔王軍幹部を名乗る魔物と戦ったこともあります」


 魔王軍幹部との戦闘の話を聞いて、グレイルは驚いていたが、ミナは俺たちが簡単に説明していたので驚いてはいない。


「私は、ヒカルさんが転生してきたから、魔物が動き始めたとは思っていません。私が考えたのはその逆です。()()()()()()()()()()()()()()()()()、ヒカルさんがこの世界に呼ばれたのではないか、と」


 ルリの話した内容は、俺が予想していたのと同じものだった。

 つまり、ルリが何を言いたいのかというと……、


「復活したかもしれない魔王を止めるために、ヒカルはこの世界へとやってきた。そう言いたいの、ルリ?」


「そういうことです。それなら、ヒカルさんが勇者の剣を持てたことの説明ができます」


 ルリの話の内容の要約は、ミナがしてくれた通り。

 ルリは、俺が本当に勇者である可能性を考えたのだ。


 そして、当事者たる俺が言うのも何だが、この話はあり得ないこともないのである。

 なので俺は、ルリが思いついた可能性を否定しようと()()。ここが過去形になっている理由は、俺とルリを除く三人が納得してしまったからである。


「なるほどな。それが正解じゃないか?」


「これなら、ヒカルの運が異常な説明にもなるわね!」


「ヒカルが勇者だとは思いたくないがな」


 えーっと…………、もしかして俺、勇者だと認定されてます?

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