第24話 勇者の剣技
お、おかしい。おかしすぎる。
いくら俺の運が良いからって、勇者様の剣技を使えるのはおかしい。
「ど、どうなってるんだ? 俺、勇者様の、剣技? あれ、何かフラフラする?」
「お、落ち着いてください、ヒカルさん!」
「お、おう」
ルリにそう言われて、ようやく一息つく。
いや、いまだに落ち着けてはいないのだが。
それにしても……、
「一体どういうことだ?」
色々考えるが、全然答えが出ない。
そもそも、ライフライオンを倒した剣技を発動した時、俺ほとんど無意識だったからな。
「考えられる可能性は二つ。伝説の神器があれば、誰でも勇者様の剣技が使える可能性。もう一つは、お前が何かしら勇者様と関係がある可能性だ」
リンカはそう分析したが、実際のところ、二つ目の可能性はあり得ない。
なぜなら、俺がこの世界で生まれた人間ではないからだ。俺はラオラルドで生まれていないので、勇者様と関わりがあるわけがない。
「二つ目の可能性はないと思う。一つ目の可能性だと考えるのが普通だろう」
「でも、ヒカルが持っているのは、神速の剣よね? 勇者様の剣じゃないはずよ」
「言われてみれば……」
神速の剣も伝説の神器には変わりないが、あくまでもハヤテ様の武器だ。
そういえば……、
「勇者様の武器って何なの?」
「ヒカルさん。それなら、この部分に書いてあります」
「ナイス、ルリ。どれどれ……」
勇者様は、勇者の剣を片手に、魔王と果てしない戦いを繰り広げた。
ということは、勇者様の武器はそのまんま、勇者の剣ということか。
「俺が今持ってるのがこれなら、とりあえず納得がいくんだけどな」
「さすがに、ハヤテ様の神速の剣では、勇者の剣技は使えないわよね」
うーん、八方塞がりだ。
せめて、何かヒントがあればいいんだけどな。
今わかってるのは、俺が勇者様の剣技を使ったということだけだ。
それ以外は何も、いや、何かが引っかかるぞ。
でも、それが何かわからない……、あ!
「あああぁぁぁっっっ!!!」
俺たちが今いる所は大図書館。
今の大声は、間違いなく迷惑行為だったが、他に人がいなかったおかげで助かったようだ。
俺が図書館で大声を出した理由。
それは、無意識下で剣技を使う前に、何者かの声を聞いたのを思い出したからである。
「あいつか、俺に剣技を使わせたのは!」
「あいつって、誰ですか?」
「あいつはだな……」
ルリからの質問に答えようとした俺は、途中で言葉に詰まった。
考えてみれば当然のことだ。声の主が誰かは、俺にもわからないのだから。
「すまん、わからん」
「わからない?」
「何言ってんだ、お前?」
「みんなの言いたいことはわかる。でも、わからないものはわからない!」
「そんなに自信満々に言い切られてもね……」
ミナの意見はごもっともだが、わからないものは仕方がない。
だが、声の主の正体はわからないが、その声の主が俺に剣技を使わせたことは断言できる。
「けど、どうやって俺に話しかけたんだ?」
「当事者のヒカルがわからないのに、私たちがわかると思う?」
「それはそうなんだけどさ。そもそも、精神に干渉する魔法ってあるのか、ルリ?」
「詳しいことは私も知りませんが、精神感応魔法という魔法はあります」
(精神感応魔法……。要するにテレパシーか)
確かに、その魔法を使えばいける気はする。
けど、仮にその魔法が俺に使われたとして、誰が魔法を発動したかまではわからない。
「ここに来て、余計に謎が深まったぞ」
「ねぇ、ヒカル」
「どうした?」
「ラオラルドが、東西南北四つの国に分かれてるのは知ってるわよね?」
「ああ、ルリから聞いた」
「その四つの国の中心に位置する山があるの。霊峰キリサネ、それがその山の名前よ」
「その霊峰がどうしたんだ?」
「霊峰キリサネは、勇者様が修行を積んだ場所だと言われているわ」
なるほど、そういうことか。
その霊峰に行けば、今回の謎について、何かがわかるかもしれない。ミナはそう言いたいのだ。
「その山、一般人が入れるのか?」
「一般人は無理よ。一般人は、ね」
「ハハハ。頼むよ、ミナ」
そうだったそうだった。
ミナは、俺たちと違って一般人じゃなかったな。
「霊峰の件は、ミナさんにお願いしましょう。他に役に立つ情報がないか、私たちはそれを探しますよ!」
ルリの号令で、俺たちは行動を開始した。
なんか、冒険らしくなってきたな!
◇
ミナのおかげで、(過保護すぎる)エブルド様から霊峰に入る許可を取った(今回は、エブルド様の権力を持ってしても、かなり厳しかったらしいが)俺たち。
食料等の準備は、ナユアリに向かう前にできている。
「キリサネに登るためには、まずは麓の小さな村に行かないといけませんよね?」
「任せて。その村までの道は、頭の中に入ってるから」
「色々頼んで悪いが、頼んだぜ、ミナ」
「私にできることがあったら、遠慮なく言ってくれ」
いいなあ、この感じ。
仲が良いパーティー感が出てる気がする。
ちなみに、サヒルドを出る前に、冒険者ギルドでパーティー登録は済ませてある。
パーティー名は、「運魔弓槍」。俺たちの特徴を、それぞれ一字で表し組み合わせたものだ。
「よし、行くぞ!」
「おー!」
俺たちの、いや、運魔弓槍の冒険開始だ!




