第12話 激突
本日はもう一話投稿します。
よろしければそちらもぜひ。
紅蓮の弓を手に入れ、弓楓の森奥地に帰ってきた俺たち。
だが、森の奥地は魔王軍幹部によって攻撃されていた。
「この状況はおかしいです! 魔王は五百年以上前に、勇者様に倒されたんですよ!? その魔王の幹部が攻めてきたと言うんですか!?」
「私も、詳しいことはわからない。だが、あいつは確かに、俺は魔王軍幹部のテグコボラだと名乗ったんだ」
「テグコボラ……。聞いたことはないな。過去に勇者様方が倒された幹部の名前ではない」
「それでテンカ。森の状況は!?」
「木が燃えているけど、これは大丈夫よ。弓楓の森の木は、これぐらいの炎なら耐えるから。問題は、テグコボラが止められないことよ」
「どういうことだ?」
「今、あっちで森のみんなが弓で魔王軍を迎え撃ってる。取り巻きは倒せてるんだけど、テグコボラには全くダメージを与えられてないわ」
「テ、テンカ様。このままだと、あそこに魔王軍が……」
「落ち着いて、リンカ。大丈夫だから。ヒカル、何か作戦はない? 今の私たちじゃあ、弓を打つぐらいしかできない。伝説の神器を二つも持っている君たちなら、なんとかできるかもしれない」
「今はまだ何も思いついてない。だけど、このまま放っておけるわけないだろ! ルリ、望遠魔法頼む!」
「わかりました!」
望遠魔法。より遠くを見たい時に使えば、望遠鏡を覗いているみたいな効果が得られる。
まずはこれで、テグコボラの姿を確認して……
「あれか!」
そこには、四本の腕がある魔物がいた。
金棒と、鎖がついた鉄球を、左右の手に一本ずつ持っていた。
テグコボラの周りには、さっきテンカが言っていた、取り巻きらしい魔物がたくさんいる。
そして、テグコボラたちを、森のみんなが弓で狙っていた。
取り巻きは、意外と簡単に倒すことができているが、テグコボラは飛んでくる矢を避けようとすらしていない。
「こいつを倒す作戦か……」
いくら俺でも、この相手に運任せの突撃は無謀だ。
だが、今の俺たちに、あいつにまともなダメージを与えられる程の攻撃力はない……、あれ?
「うん? あいつ今、矢を避けたのか?」
「みたいですね。なんで急に避けたんでしょう? それも一回だけ……」
ルリと同じことを、俺も疑問に思った。
なんでだ? なんで一回だけ矢を避けたんだ?
今の攻撃で、矢が当たりそうだった箇所は……、あ!
「そうか、そういうことか! テンカ! もしかしたら、あいつを倒せる方法を思いついたかもしれない!」
「ホント!? ナイスよヒカル! それで、どうやってあいつを倒すの?」
「一つ聞くけど、テグコボラは、テンカが森の代表だって知ってるか?」
「ええ。私もさっき名乗ったから。そのまま戦おうとしたんだけど、みんなに止められちゃって……」
「大丈夫、かえって好都合だ。今から作戦を発表するぞ。と、その前に、リンカ、あれを」
「わかっている! テンカ様、これを」
リンカが差し出したのは、もちろん紅蓮の弓である。
このリンカの行為を見ていたら、代表であるテンカがこの森で一番の弓使いであることがわかる。
だが、俺はテンカに紅蓮の弓を渡す気はなかった。
「リンカ、それはテンカに渡すんじゃない。この森で、二番目に弓が使えるやつに渡すんだ」
「は? お前、一体何を……」
「この森で二番目の使い手はリンカよ。リンカ、それはあなたが使いなさい」
「テ、テンカ様まで!? なぜ私が紅蓮の弓を!?」
「ヒカルの作戦だからよ! リンカがヒカルの言う通りにしたくない気持ちはわかるけど、今はヒカルの言うことを聞いて!」
「わかりました。おい、ヒカル。変な作戦言ったら殴るからな!」
まさか、リンカに名前で呼ばれるとはな。
相変わらず口は悪いが……。それに、失敗したら殴る宣言かよ。
まあそれでも……、
「わかった。そん時は思う存分殴ってくれ。じゃあ、作戦を言うぞ!」
俺は、思いついた作戦をルリたちに伝えた。
見てろよテグコボラ! お前は必ず俺たちが倒す!
◇
「ほう、このテグコボラ様の前に立つ勇気がある者がいるとはな。ありがたい、弱過ぎる矢の雨に退屈していたところだったんだよ」
「その弱過ぎる矢の雨で、あんたの子分は全滅してるけど?」
「ふん、こいつらが役に立つとは思っておらん」
「部下をバカにする上司は嫌われるぜ」
「貴様、どうやら俺様に殺されたいらしいな」
「やれるもんならやってみろ、この野郎!」
そう言うと、俺はテグコボラに向かって突進した。
既にルリに身体強化魔法は付与してもらっている。
準備は万全だ。
テグコボラは俺を叩き潰そうと、金棒を構えている。
俺が金棒の攻撃範囲に入ったら攻撃してくるだろう。
だが……、
「なんだ貴様? そんな所で止まって、俺様を斬る気がないのか?」
「さあね」
「ふん。あの世で後悔しろ!」
テグコボラは鉄球を振り回して攻撃してきた。
それを、俺はとりあえず走りまくって避けまくった。
何か特別なステップをしているわけではない。
ただ、俺の場合はこうするのが一番良いというだけだ。
「なぜ俺様の鉄球が当たらぬ?」
「俺の運が良いからじゃない?」
俺は挑発を繰り返しながら、テグコボラの鉄球を避け続ける。
いや、俺の運が良いって言ったのは、嘘ではないんだが……。
けど、今の俺にできることはこれくらいだ。
運任せじゃあ、攻撃を避けるので精一杯だし。
だが、攻撃はルリたちに任せてある。
「ファイアートルネード!」
噂をすればなんとやら。早速、ルリの魔法が飛んできたぜ。
ならそろそろ……、
「私はこの弓楓の森代表、テンカである! 愚かな魔王軍幹部テグコボラよ、この地で朽ち果てるがいい!」
ビュッ!
「うおっ!」
テンカが放った矢を、テグコボラは無視せずに避けた。
いくらテグコボラでも、テンカクラスが打つ矢は嫌なんだな。
「今の矢は良かったぞ。この魔法もなかなかだ。だかな……、フンっ!」
テグコボラはルリのファイアートルネードを、振り回した鉄球でかき消した。
俺は、その隙にテグコボラの懐に飛び込み、神速の剣で斬りかかる。
キン。
俺の攻撃は、テグコボラの金棒で防がれた。
「今の剣も悪くなかったぞ」
「そりゃどうも。ところで、これ見てもまだ余裕でいられる?」
「何?」
驚くテグコボラの元に飛んできたのは、森のみんなが放った矢だった。
しかも、今回はその全てをテグコボラの顔に集中させてある。
でもまあ……、
「どうやら少しは頭を使えるらしいな。闇雲に打たずに、顔を狙ってきたのは褒めてやろう」
テグコボラは、飛んでくる矢を金棒と鉄球で、一つ残らず叩き落とした。
さすがにこれだけじゃダメだ。これだけじゃな!
「ほう、そう来るか」
そこにルリのアイスサンダーと、テンカが乱射した矢が飛んできた。
よし、ここまでやれば……
「悪くはないんだがな」
鉄球を振り回し、撃ち漏らしたものを金棒で潰す。
テグコボラはまだ無事だった。
そして、俺の姿はテグコボラの前から消えていた。
「姑息な真似を!」
文句を言われても無理はない。
テグコボラからすれば、俺が隙をついて、敵の背後を取るために、後ろに回り込んだように見えるのだから。
俺の姿を捉えようと、テグコボラは後ろを向いた。
甘いぞテグコボラ。
俺が背後に回っただけで、お前の首を斬れるわけないだろ。
グサッ。
「うぎゃああぁぁ!」
テグコボラの悲鳴が鳴り響く。
仕方ないよな。目を打たれたら、さすがに痛いよ。
「ふん。ヒカルの作戦通りか。なんか腹立つな」
ナーイス、リンカ。
代表のテンカが前にいるおかげで、後ろは無警戒だったからな。
さあ、テグコボラ。そろそろ決着をつけるぞ!




