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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
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彩綾の章「お泊まり女子会1〜お昼ご飯〜」

私の家からは学校を中間地点として反対側、5分ほど歩いたところにあるコンビニで乃蒼と待ち合わせしていた。私が行くとすでに乃蒼は大きなリュックを背負いコンビニのアイスコーナーを見るふりをして涼んでいた。

「お待たせ。アイス買う?」

「ううん、今来たところ。アイス…は…我慢する」

乃蒼は名残惜しそうにアイスコーナーを後にしていた。

私たちがコンビニの前で待っているとほどなくして桜子さんが迎えに来てくれた。普段制服姿しか見たことないので桜子さんのふわふわした私服がとても新鮮に感じる。

「お待たせ〜。じゃ、行こっか」

「桜子さん、荷物それだけ?」

桜子さんの荷物は小さなトートバッグひとつだけだった。

「ううん。昨日のうちに私の荷物は阿子の家に置いて来たの。だから今日はこれだけ〜」

阿子さんの家族は昨日から長野にある母親実家に行っているらしく今日は私達だけだ。ご飯とかも自分で作らねばならないが、料理には結構自信がある。乃蒼もなんだかんだで結構上手い。

「さて、今日は2人の秘密を暴露してもらうから覚悟しててね〜」

爽やかな桜子さんの笑顔が逆に怖かった。


「いらっしゃい。狭い家だけど入って」

阿子さんは桜子さんのふわふわと比べTシャツにパーカーを羽織っていてかなりラフな格好だった。

「どしたの彩綾。ボーッとして」

「なんか普段制服だからこうやって私服みると、やっぱりお姉さんだなぁと思いまして」

お姉さん2人は揃って顔を見合わせる。

「いい事思いついたよ阿子」

そう言って阿子さんの耳元でこしょこしょ話。

「うん、面白そう。よし、お昼ご飯食べたらそれやろう」

何かは教えてくれなかったけどどうやら楽しい遊びを思いついたらしい。


「お昼は冷蔵庫にあるものでテキトーに作るよ。2人とも料理得意?」

私たちは腕に覚えがあります。

「んじゃ私何つくろっか、、、」

「桜、ごめん。飲み物切れてたんだ。買ってきてくれない?」

被せ気味で阿子さんが最後まで言わせない。

「え〜、外暑いよ〜」

「お願いっ」

ど…土下座…?

「もぉ〜。しょうがないなぁ」

桜さんは渋々さっき待ち合わせしたコンビニまで飲み物を買いに行った。

「さぁアンタ達!桜が帰ってくるまでに作り終えるよ!」

阿子さんの必死の形相は私の中の疑惑を確定的なものにした。

「そんなに桜子さんて料理下手なんですか?」

必死の形相から苦い…というよりは苦悶の表情を浮かべる。

「桜の料理食べるくらいなら食品サンプル食べた方がマシよっ!」

固まったロウより劣る料理ってなんだろう?

「乃蒼!玉ねぎみじん切り。それ終わったらレタス千切って。彩綾!冷凍庫から冷やご飯出してチンして。そこに鍋あるから4人分のお湯沸かしてタマゴスープ作って。中華の素は棚にあるから」

め…めっちゃ手際がいい。是が非でも桜子さんには作らせない気だ。

「乃蒼遅い!そんなんじゃ桜が帰ってくる!いいアンタ達!桜に作らせたら今晩は地獄を見るわよ!とにかく早く作って!多少まずくたっていいの!それでも桜が作るよりはるかにマシなんだから!」

どんな味なんだろ?

その時阿子さんの携帯が鳴った。

「阿子さん、桜子さんからです」

「スピーカーで!」

私はスピーカーで着信を受け取る。

「どうしたの桜っ!」

話しながらでも手は止めない。

「そ〜いえばさぁ〜、何飲むの?」

「お茶とコーラとポカリ。あとピルクル買ってきて」

「え〜、あそこピルクルないよ〜」

「どうしても飲みたいの!直江津神社の向かいのローソンに置いてあるから!」

「直江津って!逆じゃん!」

「お願い桜っ!」

「も〜!わかったよ」

桜さんは携帯の通話を終了させた。

「よし、これで10分は稼げる!」

私は心に決めたのだった。絶対に桜子さんの作ったものは食べまいと。


「ただいま〜」

桜桜子さんが帰ってくる2分前に私たちはレタスチャーハンとタマゴスープ、それにハムサラダを作り終えた。

「ちょっとぉ!私作るのないじゃんよぉ」

「ごめん桜。2人とも手際良くてさぁ」

そりゃ手際も良くなるよ。鬼軍曹が台所に立ってたよ。

「よし食べよ〜。いただきま〜す!」

はむ………薄っ!味うすっ!

「おいし〜!」

え?桜子さん、これ美味しいの?味しないよ?

視線を感じてその方を見ると阿子さんが口を真一文字に結んで私を見てうなづいた。

味のわからない女、西野桜子(14歳)。

「阿子さん、これちょっと味薄、、、、」

「おいしーね!乃蒼!」

乃蒼、空気を読んで!

「いや、彩綾これ味う、、、」

「おいしーよね乃蒼!」

阿子さんからの援護射撃!

「え?あ、うん、はい?えぇ」

乃蒼、きっと今は味を楽しむ時間じゃない。何か得体の知れない恐怖から逃げる時間だよ!

「3人ともありがとね。私何もしてないのにお昼ご飯食べちゃって、なんか悪いなぁ。晩御飯は私が作、、、、」

「ピ…ピザだからっ!」

間髪入れず阿子さんが口を挟んだ。

「え?ピザ?けどピザ高くない?」

「わ…私ピザめっちゃ好き!やったあ(棒)」

演技力には定評がある私ですら棒読みになるこの緊張感。たまらない。いろんな意味で。

「そう?じゃあ夜はピザ作ろっか?」

「ド…ドレミピザの全部ぶっかけピザが食べたいなぁ(棒)」

「あぁ、それいいねぇ」

乃蒼、そこはナチュラルに乗っかってくるところじゃ…いや、結果オーライよ乃蒼!

「う〜ん。じゃあ私の手料理は明日の朝ごはんということで」

「は…はい…楽しみにしてます…」

そうか、明日は早起きか…。



「私何にもしてないから洗い物は任せて」

「あ、じゃあ私も手伝いま〜す」

桜子さんと乃蒼が台所に向かうと阿子さんは私のそばまで来て

「ねぇ、もしかしてだけど乃蒼って…天然?もしくは空気読めない?」

と耳打ちした。

「乃蒼は私達と絡むまであんまり友達付き合いしたことがなかったから高度な人間関係は未習得です。けど地頭はいいから経験さえ積めばなんとか」

私も阿子さんの耳元で囁く。いい匂い。

「とにかく!可愛い後輩にアレを食べさせるわけにはいかないの!彩綾も協力して!」

「一体どんな料理なんですか?」

「料理?料理ですって?アレは料理なんかじゃないっ!殺戮兵器よ!」

花さん、なんで武器商人やめちゃったの?

乃蒼の友人のなっちゃんと桜さんがいれば、もしかしたら日本は世界をひっくり返せたかもしれないのに。

あ、一応言っておきますけど冗談ですからね。私、平和主義者です。


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