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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
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阿子の章 「野島貴明の彼女」

彩綾が1人抜いて4位。上出来な数字。さすが彩綾。やればできる子。

ただなんであんなに悲しそうな顔をしてたんだろう?

きっとあの子にも抱えているものがあるのだろう。

私達はみんな何かを抱えてる。彩綾だって例外じゃない。

ハッキリしているものもあれば、ただ漠然とした不安に毎日が押しつぶされてしまうようなものもある。

私は、どっちなんだろう?


私達4人がずっと一緒にいられないというのは結構前から覚悟していた。

1つは桜の夢。

美容関係の仕事に就きたいと1年の時から普通科のある美容専門学校への進学を決めていた。けどそれは出会った時からすでに決めていた桜の夢だし、あの子は今を死ぬ気で生きている。やらないで後悔したまま生きていくくらいなら、して後悔する方がいいと言い切れる桜のその性格は病気があったためのものだろう。けど桜のそのモットーは私達のモットーになった。やらない後悔よりやる後悔、今を死ぬ気で生きる。それはとてもわがままな生き方かもしれない。けど全ての批判を自分で背負う覚悟もちゃんとあるつもりだ。ちょっと話が逸れちゃったけど、私達が一緒に入れない理由の1つは、今を生きる大切な友達の夢があるから。

2つ目はタカの学力。

普通に考えてタカは千石高校へ進学するべきだ。あの成績なら超難関と言われる千石にだって下手したらトップで入学できるかもしれない。

「お前と一緒に八九寺高にするかな?」

と言われた時、私はタカの将来を狭めてしまう事を恐れた。

私だって出来ればタカと一緒の高校に行きたい。

けどタカと一緒は特進が精一杯。

千石はどんなに頑張っても模試での合格率は50%を越えることができなかった。

八九寺も有名校ではある。けど千石と比べやはり1ランク下なのは否定できない。

タカが八九寺に行く理由は私以外にない。

タカが千石を選ばない理由は本来どこにもない。

いつか私はタカと離れ離れになる覚悟をずっと前から決めていた。

それはいつになるかはわからない。

私にも甘えがある。そばにいたい、彼女でいたい。

けどもうそろそろ、決めなきゃならない。

タカがもっと大きな道へ進んでもらうために。

なのに…


「大好きだぞ」


ねぇ、アンタは本当にバカなの?ずるいよ。そんなこと言われたらまた甘えたくなっちゃうじゃん!

まぁいいや。進学の話は今度ゆっくり2人でしよう。

今はそれどころじゃなかったね。

アンタはリレーで勝ちたいんでしょ?

桜のためにも、秋達2年のためにも。

だからあんなにコースケと2人で頭悩ませてたんだもんね。知ってるよ。昨日も2人で会議してたんでしょ?今日このリレーを勝つために。

なら私はあんたの彼女として尽力しなきゃね。

「阿子ぉ!頼む!1人でいいから抜いてくれぇ!」

頼む?抜いてくれ?

何言ってんの?アンタはただ私に「抜け、阿子」って言えば良いだけだよ。その言葉1つで私はアンタの望みを叶えてあげる。

アンタの信頼に私は絶対に応える。

それが野島貴明の彼女、平井阿子だ!

目の前に3位の背中が見える。手が届く。右に並ぶ。そして、抜き去る。

「阿子ぉ!!!!良くやったぁぁぁ!!!!」

もぉ、そんなに喜ばないでよ笑。当たり前でしょ?

だからもっと褒めてよね。

「コースケ!女子は仕事したかんね!」

私達はタカに託すためのバトンをキッチリ渡したからね?あんた達もちゃんとタカに繋いでよ?


さぁタカ。今度はアンタが見せなさいよ?

私達の大好きな秋に、アンタのうなだれる姿なんて見せたら100年の恋も冷めるからね!

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