乃蒼の章 「第三走者」
私は守られてばかりだ。
最初はお父さんとイレーヌに守られていた。
そしてなっちゃんに守られた。
中学に入って秋に、そして彩綾とタケルに守られた。
そして今、私の願い事は友達や先輩のおかげて叶う事ができた。
ねえ乃蒼。あんたちょっと幸せすぎじゃない?
泥に埋まっていたのを差し引いてもお釣りがくるんじゃない?
今の私がそう囁いて耳から離れない。
そうやって…思えるようになったんだなぁ。
泥に埋まっていたあの時の私に教えてやりたい。
「あなたはもう少しで幸せだと思えるようになるんだよ?」
絶対信じないな笑。それほどまでに私は周囲に心を閉ざし、想像する未来なんて絶望しかなかった。
タケルが言ってたっけ?
「悲劇のヒロインになるのはもうやめろよ。カッコ悪いぞ」
ホントだねタケル。私は今まで悲劇のヒロインぶってました。
だから今はきちんと現実を見よう。
私は、目眩がするほど足が遅い。
なのに今私は阿子さんからバトンを受け、リレーを走っている。
見てる?なっちゃん…て見てるわけないか笑
けど見せてあげたいな。
いつかまた会えた時、今日のこの日の事を教えてあげたい。
悔しがるかな?
「めっちゃ応援するっていったのにぃ…」
と残念そうにしてくれるかな?
けど、絶対信じないだろうな笑。なっちゃんがコンサート開くようなものだもんね。
さながらここはテロ現場みたいなもんだよね笑。
あ〜あ。もうちょっと足が速かったらな。
ってこれも悲劇のヒロインになっちゃうかな?
けど思わずにはいられないんだよ。
もう少し速ければ、阿子さんの稼いでくれた分を消費しなくても良かったのに。
もう少し速ければ、桜子さんの分も走れたのに。
もう少し速ければ、みんなもっと余裕を持って走れたのに。
ああ、そうか。みんなそういう思いで走ってくれているのか。
みんなごめんなさい。私は足が遅いです。だからリレーでみんなの力にはなれません。
だからいつか私ができる事でみんなに何を返したい。
だから今日だけは
「羽生さんっ、お願いっ、しますっ!」
力を貸してください!




