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クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


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11章・勇者の任務−2

 王都を目指す馬車は整備された街道を走っているにもかかわらず、大きく跳ねた。

「イテッ。またかよ。こんなに揺れたっけ?」

 毒吐いた村上の言葉に同意して同じパーティーで神官のポジションを務める長谷川乃亜がため息をついた。

「だよね。井上君の作った馬車が壊れちゃったらしいよ。サスペンション?とかいうのをつけたやつ。」

「さっさと直せよ。アイツのオタク知識も役に立つと思ってたんだけどな。」

「今でも役に立ってるでしょ。井上君のアドバイスで強くなったコだって多いし。」

「最初は凄いと思ったけど、今はなぁ〜。」

 君はそれ以上役に立ったわけでもないだろ、という言葉を盾使いの山田柊哉は飲み込んだ。

 それを指摘したところで不機嫌に村上は不機嫌になり、攻撃的な言葉を投げかけてくるようになるだけだと知っていたからだ。

 以前から陰キャ呼ばわりされながらも楽しく学校生活を送れていたのは話題の井上と仲良くしていたからであり、彼のために反論できないのは心苦しかったが先のことを考えれば黙って流すのが最適解に思えた。

 馬車に同乗している残るパーティーメンバー、剣士の伊藤大和と魔法使いの池田結奈も山田同様に黙り込んでいる。

 特に野球部の伊藤は山田と違いクラスの中心メンバーであったし、パーティー内でも三人でよく話している事だけを考えれば口を開かないのは不自然だ。

 だが、今に限っては普段通りに話している二人の方が異常ではないかと山田は感じている。

 魔王率いる帝国の皇太子を護衛していたような人間と戦い、倒す。つまりは殺せと言われた状況でいつも通りでいるなど考えられないからだ。

 とはいえ、異常性を感じたのは今日が初めてではない。

 転生した当初、誰もが不安で何をすればいいのか分からなかった頃には、みんなが迷っているにも関わらず一体感があったようにすら思う。

 いや、今となっては、全員が迷っていたからこそだったのかもしれない。

 それぞれが力を付け、自信を持ち始めた頃から学校にいた頃と同じようなカーストが出来始めたのだ。

 それは急速に、だが非常に強固に形作られていった。

 学校のように「全員が平等」などという建前はなく、模擬戦で力の強い者が騎士団員達に褒め称えられ、実戦でも実績を残した者が特別な扱いを受ける。

 国王から騎士団員の一人一人に至るまで、優れた部分を見つけた時には惜しみなく賞賛してくれたが、逆に、訓練にも参加せず役に立っていない者にあえて関わろうともしなかった。

 実戦訓練に出ればそれはさらに加速した。

 前線で功績を上げれば誇れたし、後衛でも騎士団員達からは褒められた。

 今はまだ担任の大畠に気を遣って公に口にする者はいなかったが、その気遣いが薄れつつあることも、全員が上下関係を理解していることも山田には感じられるのだ。

 転生当初こそ帰りたいと涙を流す者も見られたが、力をつけた今、そんな声はほとんど聞かなくなっている。

 スポーツができるのも、勉強ができるのも、喧嘩が強いのも、前の世界では『子供の中では』という前提がついていたが、今では国の精鋭レベルである。

 ずっと敵わなかった社会的立場のある大人と肩を並べ、彼らを上回るという優越感はスマホをはじめとした文明レベルの劣化を押し流した。

 戦力として認められ、食事が豪華になり、世話係が美女、美男子に変わっていくことで実感する成果は元の世界では絶対に味わえないものだと皆が理解し、増長と言っても過言ではない態度の変化も見え始めればクラスの担任などという立場はいつ無視されてもおかしくないと山田は思っていた。

(思ってたのと、全然違うな……。)

 井上達と教室の隅で話ていた異世界転生アニメと同じ、元の世界を離れて特別な扱いを受けているにも関わらず、理想としていた世界とは程遠い。

 また村上に絡まれないよう、小さくついたため息は小石を踏んで跳ねた馬車の音にかき消された。

 そうでなくとも話しこんでいる村上と長谷川には聞こえたなかっただろう。

「アンタまた新人のコに手出したんでしょ?来て三日目のコ。サイテー。」

「何だよ?吉田と松本だってそうだろ?それに、みんな勇者の子供産めるって喜んでるんだしいいんだよ。」

「中村君はそんな事してないじゃん。」

「アイツは勇者で聖人だからだろ。それに、エリシアちゃんだっけ?あの王女様と結婚するのも多分アイツだろうし。」

「前から人気だったのにね。イケメンだし、野球部のエースだし。世界が変わっても魔法も強くて何でもできて、マジですごすぎ。」

「次期国王だろ?勇者の一夫多妻制だけは維持してもらわねーと。」

「アンタマジでサイテー。」

 緊張感もなくゲラゲラと笑う二人の声が響く馬車は巨大な建築物の前で止まった。

 彼等が歴史の資料でしか見たことのない、コロッセオに似た建物だった。

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