第39話 会えた〜!
「………っ!」
海で固まっていると、気配を感じた。
アヤカシの気配じゃない。
誰かが術を使ったっていう気配。
そして、理寿独特の、術の痕跡をたぐろうとした人間に、言葉に尽くしがたい不快感を与える気配。
あえて言うなら、そうだな………
心臓を下のほうからえぐられるような、それを繰り返されるような………
もしくは、心臓を素手で触られているような、そんな感じの。
「うっぷ………」
口に手を抑えて、しゃがみこむ。
ヤベェ、強烈。
吐きそうだけど吐けない。
手を宙に漂わせて、指を曲げ伸ばしする。
このままいたら、アヤカシと対峙する前に、オチる………!
理寿が目印で送ってくれたのかもしれない、けど、そんなこと気にしてられねぇ。
早くたどらないと………
辿るのは決して難しいことではないが、いまのこの体調で、か。
理寿、もっと別の合図の方法ないんかい!
まぁ親友の危機にそんなこと言えねぇけど、さぁ。
足元がおぼつかないまま、砂の上に手をついて、バランスを取りながら立ち上がる。
理寿の術の気配を可視化する。
片手を眼前で振ると、気配が一本の紐のようになって、遠い彼方まで続いている。
自分に一番近い気配をギュッとつかむと、空いている方の手を彼方に向けてスライドさせた。
瞬間、グンと体がひっぱられて、首がグリンと変な方向に折れた。
水上を走ることもありつつ、しばらくすると、洞窟にたどり着いた。
背の低い洞窟。
「頭打っちゃうじゃねーか!」
と叫ぶも、残念なことにオレの身長は大丈夫だったようだ。
「あー、九十九くんだぁ!」
明るくて落ち着く声がして、ホッとする。
「来ると思ったよぉ、来てくれると思ってたよぉっ!」
理寿は叫びながらオレに抱きついた。
「ちょ、苦しい………」
ただでさえ気配で気分が悪くなってるのに、首までしめられたら………
「あぁ、ごめんねっ。」
理寿は笑って手を離した。
「気配、あんなに気分悪くなるもんなんだな。」
少し怒りを含めて言うと、理寿は全く気にせずに言った。
「九十九くんのもやばいんだろうねえっ。僕、受け取りたくないわぁ。」
オレも二度とお前のを受け取りたくねーよ。
「あれ、その子は?」
理寿の後ろでオドオドしている男の子を指差すと、理寿はポンと手を打った。
「この子がビーサンの子だよっ。」
「名前は?」
「きいてないっ!」
イサギのいい理寿。
「ねぇ僕、お名前は?」
オレが聞くと、男の子は答えた。
「………周太、です。」
「そっか。周太くん、元気?」
「はい、お兄ちゃんが、面白いもの見せてくれたんです。」
オレは理寿を見た。
どうやらオレへの合図でもなんでもなく、ただのこの子のためだったらしい。
「敬語使えて偉いな。」
頭を撫でると、周太くんはくすぐったそうに顔をそむけた。
オレなんて基本使わねーからなぁ。
秋穂さんは別だけど。
すると理寿が耳に囁いた。
「この子のお母さん、もしかしたらアヤカシに食われてるかもしれない。周太くんは今日さらわれたらしいけど、浜辺にはこの子を探してる人、いなかったでしょ?」
オレは驚いて理寿の顔を見た。
いつもの余裕のある顔ではなく、真剣に、洞窟の壁を睨みつけていた。
「………どうかしましたか?」
心配そうに理寿の服を掴む周太くん。
「ぜーんぜんっ。お兄さんたちは大人だからぁ、いろんなお話があるんだぁ。」
一瞬で笑顔を作ると、目の前で顔の横で手を振って見せた。
すぐに周太くんが安心したことがわかって、理寿はすごいなぁ、と思う。
理寿はこんなだからいろんな人に好かれるのかもな。
「さて、アヤカシは何処だ?」
オレが言うと、理寿は首を傾げて両手を肩の位置まで持ってきた。
「しらねぇのか?」
「もちろんだよ。知ってるわけないでしょ。ずうっと、この子と一緒にいたんだからっ。」
「そっか。」
じゃあ探さねぇと。
「とりあえずこの子の安全を保障してからだよな。」
「まぁね。」
「なぁ周太くん、ちょっとこっちきてくれるか?」
「………?」
首を傾げながら歩いてきてくれる。
左手首に指を沿わせると、くすぐったそうに身をよじらせた。
「ごめんな。でも大丈夫。これで周太くんは安全だからな。」
オレがそう言うと、周太くんはホッと息をついて、うなずいた。
「じゃあ一緒においでっ。」
理寿は周太くんの手を掴んで洞窟の外に出た。
オレも後を追う。
外は眩しかった。
しばらく歩くと、理寿は立ち止まった。
そこは、出た洞窟から少し離れた、オレの身長2つ分くらいの高さのある洞窟。
禍々しい紫色の気配が洞窟からにじみ出ている。
『オレ様はここにいるからさっさと倒しにきやがれぇ!』
と言わんばかりの自己主張である。
「いるね、いるねぇっ。」
楽しそうに手を叩くと、オレに向かって周太くんを押した。
「わっ。」
と転びかける周太くんをオレが慌てて助ける。
「あぶねぇだろ、おいっ!」
オレが叫んで理寿の顔を見ると、口をつぐんだ。
理寿の顔の圧がやばい。
『僕がボッコボコにするから、九十九くんはできるだけ手を出さないでねぇ?』
と言う吹き出しが頭の上に見える。
オレは周太くんと手を繋いで後ろに隠した。
なんどもうなずく。
理寿は微笑んだまま頷き返して、洞窟に目を向けた。
体の後ろで両手をぎゅっと握る。
肩をぐるぐる回す。
理寿の、大事な任務前の、大事なルーティーン。
「周太くん、下がっててね。」
周太くんは素直にオレの後ろから理寿を見る。
「でも、見ててあげてね。理寿の術はかっこいいから。」
周太くんは、また、素直にうなずいた。
読んでくださってありがとうございます!!
あとちょっとで40話!
と言うか聞いてください。
40話で、ちょうど十万文字を超えそうなんです!
やったぁ!
明日の夜中まで。
がんばりますっ!
それでは、次の話をお待ちください!
………疲れた。




