第38話 男の子
「理、理寿!」
オレは叫んだ。
いないっ………!
一瞬で、視界から消えた!
アヤカシの気配なんてなかった。
どうなってる………
油断してたのは、否めないが………
だとしても、全く気配を感じなかった。
「チッ」
舌打ちすると、さっき砂の上に落ちた血を見つめた。
赤いはずの血は、禍々しく紫に変わっていた。
今、オレは理寿と話していて、理寿を見つめていた。
でも理寿が、一瞬で目の前から消えたんだ。
古いテレビみたいに、回線が悪くなったテレビみたいに、理寿の顔が画像みたいになって、ダーって線が細かく入って、そして目の前から消えたんだ。
くそっ………
オレがいたのに。
オレ、最強のはずなのに………!
「くそっ。」
僕は思わず可愛くない声を出してしまう。
やっべ。
マネージャーさんがいたら、怒鳴られてたねっ。
「大丈夫………?」
真っ暗なところ。
僕から離れたところに、小さく光が存在している。
そこには、ビーサンが片方脱げた男の子がいた。
「君かぁ。アヤカシにさらわれたのっ?」
「えっと、あの、化け物に………」
「うん、それがアヤカシだね。」
「お兄ちゃんも………?」
「うーん、まぁ、さらわれたはさらわれたんだけど、意図的ではあったね。」
九十九くんに入ってなかったけど、一応計画してたんだよね。
きっとさらわれるだろうから、その時にビーサンの子を助ければいいや、って思ってた。
九十九くん、今頃僕のこと心配してくれてるかなぁ。
「ねね。」
僕は男の子の方に寄った。
隣に座り込んで、同じように膝を抱えると、男の子は上目遣いで僕を見つめた。
「君、何日くらいここにいるの?」
「え、多分、今日さらわれたばっかり、かと思います、けど………」
「そっかぁ。よかったっ!」
衰弱もないし、まだ元気だねっ。
九十九くんのことだからすぐにきてくれるだろうしっ。
「ダイジョーブだよー。お兄さんの連れはすっごく強いから、絶対助けに来てくれるからねーっ。」
「………うん。」
自分のひざ小僧を見て、まだ不安そうな男の子。
「大丈夫、ダイジョーブ。」
頭を撫でると、男の子は目を抑えた。
「おかぁさぁん………」
………あれ?
この子、今日いなくなったんだよねっ?
だったらお母さんが心配して浜辺で探してそうなものだけど………え?
聞きたい。
聞きたいけど、聞いちゃいけない気がするっ。
「ね、ねぇ。」
震える指を後ろに隠して、聞く。
「お母さんて、生きてるっ?」
「生きてます、けど………?」
なんでそんなことを聞くんだ、という顔をする。
いく筋もの涙のあと。
「そっかぁ。よかったっ。それじゃあ、少し寝てな。疲れてるでしょっ?」
僕は何もないところからクッションを出して見せた。
男の子をその上に寝かせ、新たに出したタオルケットをかける。
情報を整理しよう。
・この子の親は生きてる。(らしい)
・でもこの子のことを探していない。
・この子がさらわれてから時間は経っていないらしい。
………なるほどねっ。
このままいくと、この男の子に残念なお知らせをしないといけなくなっちゃうねっ。
さーて九十九くんっ。
君は最強なんだから、自信持ちなさいよっ。
九十九くんにテレパシーを送っているつもりではあったが、届いていないに決まっている。
「ねぇねぇ君。面白いもの、見たくな〜い?」
眠れない様子の男の子に僕が話しかけると、男の子は複雑な顔をした。
興味深げだけど、不安で不安で、心配で心配でたまらない、という顔。
「ダイジョーブだって言ってるでしょ?お兄さんのお友達は、最強なんだよっ。」
「厨二病、ってやつですか?」
「君、幼く見えるのにそんなこと知ってるの?」
「なんか、お姉ちゃんとかが、言ってました。」
ふうん。
ま、やばいやつだよねっ。
みんなも想像してみてっ。
自分の知っている子がね、ごくフツーで、地味っぽく見える子がねっ?
『オレ………最強だから………』
って、前髪をかきあげながら、自身たっぷりのドヤ顔で言ってきたら?
怖いよね、怖いよねっ。そりゃ、厨二病だって思うよねっ。
仕方ないよねー。
………でもね。
「ダイジョーブ。僕のお友達は、ホントーに、最強なんだよっ!」
あぁ。
見せてあげたい、この子の顔を。
ヒーローを見つけた、それに憧れた、かわいい顔。
「じゃあ、すごい技、見せてあげるーっ。」
僕はそう言うと、両手の全部の指を合わせると、にっこり微笑んで見せた。
合わせた手を離すと………?
「わぁ!」
涙の後のついたほおを引き上げる。
僕が見せた幻影術は、海の中の生物。
タコとか、イカとか、カラフルな魚とか、エイとか、そういうの。
僕の想像の何倍も嬉しそうにしてくれたので、聞いてみた。
「君、海が好きなの?」
「はい、大好きです!海に入れないときも、海岸沿いを歩いてるんです。」
「そっかぁ。今日もそうだったんだねっ?」
「はい。」
「海のどんなところが好きなの?」
「どんなところってそれは………」
指折り数えながら海の魅力を伝えてくれる男の子。
可愛いなぁ。
これが兄の気持ちってやつかなっ??
九十九くんも、この子にあったらちょっとは大人っぽくなるかもねっ?
………だからさっさと来いよ?
読んでくださってありがとうございます!!
31日って明日じゃねーか。
テストがあって全然書けんかった………
がんばろ。頑張る。それしかできんもん。
というわけで次の話も、これからも応援よろしくお願いいたします。




