領都につきました。
ただ今、領都の防塞壁の検問所にいます。
初めての、領都。
ここらへんで、一番栄えてるので、どんな所なのか楽しみです!
エルマールさんとは、臨時職員(見習い)のための給与形態の話し合いも既に済んでますので、お小遣い?もあります。
世間知らずと、富豪研究員との賃金と福利厚生交渉は、やっぱり不安なものだったようで、『何その支給?見習いの従騎士でそんなに貰ってる子なんていないから!はい?普段の休暇、ゆうきゅう休暇?なにソレ。ある訳ないよね〜そんな7日に2日休んでるのに、まだ休む気?それから、自由になれる時間なんてほぼないし。見習いだよ?
見・習・い・なんて、騎士に張り付いて、雑用全部する事だよね〜』と商売人の息子さんが出張ってきました。
結構なシビア具合でした。
ディクルトも、従騎士、従士経験者だったんで口出ししてきたけど、彼は騎士団戦闘部隊じゃないですか?騎士様の身のまわりのお世話係は一緒でも、騎士と一緒に走り込みとか都内巡回警備や犯罪人捕縛とかって私に出来る訳ないでしょう?まずついていけない上に、明らかに足手まとい。参考にしかなりません。参考にもなるのそれ?
ディクルトは色々と横から口挟むばっかりなんで、あっち行っててください。
騎士任命前は従騎士(騎士見習い)や従士って言うらしいんだけど、私の日本換算年齢で12歳ぐらいから、任に着くようです。10歳ぐらいから見習いとして働いている子もいるらしい。
労働基準法とか、なさそうな…
でも、年齢が私のいた時と違う重ね方をしているから、アリなの?まぁ、100歳超えだったらアリ?
そうすると、見習期間が延々と続くんだけど。扱いは子供でも精神的には大人なのか?
長すぎる下っ端期間なんて、その方が辛いような気がしますが、それが普通だから、いいの?
きっと、あっちのとは違う労働環境なんだろうし、異世界言語能力でも、対応できない単語や意味合いもあるんだろうから、体験して分かる部分がこれから多いんじゃないだろうか。
つまり、今私は全くわからないってことですけどね。
私には従騎士や従士ももちろん経験ないので、基本的には見習いのお小遣い(お給料)をエルさまから貰って、周囲には納得感ある雇用にして貰う。その上で見えない部分、例えば身のまわり品や仕事着の用意や食費を全て賄うとかで差別化?して上乗せしてくれるそうです!福利厚生の充実ですね。
エルさまが富豪でよかった!チー鱈ありがとう。
辺境の都は深い森を通じた辺鄙な先にあると思ってたら、中央からは道も整備された肥沃な土地を有する大領地でした。
東の国境付近にまで領土を広げ、大河に沿った穀倉地帯を領土内に持つ農業振興地であり、交易の要所である河口東側商業地域の貿易業で賑わいを見せる国を跨ぐ有名な士気が高く驚異的な経済力を誇る国内第二の大領地。
深い森は国境線上に広がり、森の中心地は大型魔獣も多く、東から来る不審者や密入国者を防ぎ、かつ討伐魔獣の魔石や希少な薬草、原木の採取場所でも有名で、経験豊富な冒険者の活躍の場として国内で最大規模の冒険者ギルドを擁している。
そんなことから、王都と比べても遜色ない、今では王都を凌ぐと言われる経済中心地ということでした。
そんな大都市があるのに、私は森と町(街ではない)しかない、道も途中怪しいとこに、イキナリ落とされ迷子ですか。
進んでも進んでも森の中!
人にも会わない獣だけ…。
やっぱり、理不尽。
せめて、中央からの道らしい道の街道なら獣に襲われる不安もあんまりなかったような?
んん?アレ?
落ちてすぐに見つけられたから、関係ないか?獣にも悪人とも単独遭遇してなくない?
「あー、カリンは国境線の森から来たからな!観れるような観光地も町もなかったな。中央街道とは逆の東側国境から領都に向かってたから道悪いし。
けど、大分森の中心からは遠いんで小型ばっかだったろ?まだマシマシ。大型魔獣に遭ってたら今頃ここにはいてないぜ?
カリンはへんなとこで落ちてたから、仕方なく旅先で拾ったけど、運良かったぜ?俺たちに感謝しろよな!」
ディクルトが、私がポツポツ愚痴ったことで返事するが、騒がしい。一言言うたびに動作が伴うからか?
「私が迷子になったのが、森の中なんで私が悪いんでしょうね、仕方ないですよね。そうですけどね。拾い上げて貰ったことは大変感謝していますが、できれば森じゃないとこに落ちたかったな、というか。まー、いいんですけどね」
そうだよね。本気でディクルトたちに拾われて、よかったよ。
文句言ってたら、罰当たるほどの幸運だと思っておこう。異世界落とされたことは人生最大のツイてなさと比べればチャラになるとは考えるまい。
ええ、強制人生やり直しなんだから、少しは幸運値の上方補正欲しいです。
このメンバーに会えたことで都にも無事に入れるだろうし働き口紹介してくれるし。
その雇い主が研究肌のエル様なんで少し心配だけど、多分皮膚剥がされたり、血抜かれたりとかはないでしょう、ないと思いたい。
起きたら異世界っていうのが問題なんだ。多少、山ウサギの獣が襲ってきて半泣きだったとか、乗馬でお尻が大変痛いとか、ご飯がひたすらに野営料理で飽きたしとか不満を浮かべてはならないよね。
はぁ、甘いもの食べたい。
平らな柔らかいとこで、ゆっくり寝たい。
布で身体を拭き上げるだけなので、やっぱりスッキリしないし。
服もエルさまから借りた(貰った?)り、前に立ち寄った町で買ったけど、肌寒いのでベストも欲しい。
必要なものって、実際に動き出して分かる事多いのよね、消耗品とか心許なくなってきた。大体はエル様の隠しバッグから、やけに豪華な日用品とチー鱈交換で手に入ったりもするけど。
基本、エル様のバッグから出るものって、消耗品なのに豪華でなんか使い辛いの。
ランタンのランプも浅い浮彫りの蔦模様とブドウっぽいのが取手にまで施されてかなり豪華。埃とか土とか付いてしまう外での使用だと掃除が面倒そうだった。
だから、ヨルンくんの機能性追求型ランプと交換して欲しいって話したら、手元にランプそんなに持ってないから無理と断られました。1対1じゃだめだそうで、等価交換では機能性ランプの10個分以上の価値があるらしいです。今は美しさより機能性あるのがいいのに!
私が金目の物目当てで強盗に狙われてもいいの?もう少し一般的な品揃えにして欲しいですエル様。
「知ってっか?今回みたいに東の裏に向かうなら、腕がいんだよ。王都側からの道は保安に問題ないから俺らじゃなくて、他の奴でもいいからな!人数絞ったから、期待の星が選ばれたんだぜー。俺らで良かったなーカリン」
チョイチョイ自慢入るよね、あなた。
「ディクルトが強いのは、もう十分わかってるんで武勇伝はもういいです」
俺のスゴイ獲物たち話しは散々聞かされたんで、お腹いっぱい、もういりません。
「7つ年前の魔獣は、今までの生態からは大きく違ったクマ型でな?おい聞けよなー?」
「ハイハイハイ、それ確か前聞いたことあるし。あ、団長帰って来ましたよ!ほら、用意しないと!」
話しをぶった切り、中断してもらいました。本人は楽しいけど、相槌するのも、面倒な時あるから。
「おう、カリンのも無事通った。そこの城門塔の跳ね橋あるだろ、正門の。あれは新市街に行くために全員使うんで並んでるのが長くて時間かかるんだ。側防城塔の裏から入れるようにするから跳ね橋手前で待っといてくれ。横の別んとこから入るから。おう、もう行けるかー?」
団長、ナイスタイミングですね。
「はい!すぐに向かえます!ほらディックたちも行くよー」
団長大好きヨルンくんの返事も軽快です。
「ほらほら、その俺スゲーだろ?の続きは自分の見習いに話してくださいね。私今から、エルさまの従騎士なんですから」
「自慢じゃなくて事実だ。ん?おお、カリンが見習い!そっか!できんのか?」
「できなきゃ、失業してご飯食べていけなくなるでしょ!身売りは最後の手段です。私は全力で頑張ります」
応援するからなとあんまり期待できない支援もいただきました。私も微力ながら応援しますから、とかエルさまが近くから言ってますが、あなたさまは保護者でありご主人さまになるので微力ながらとか控えめじゃなくていいんです…。目一杯の支援をして下さい。
「カリーンちゃんと記章付けてる?うん、大丈夫。これ仮証だから団から正式なものを出来るだけ早く出すよう手続きしなよ〜?」
「それとカリンは後で適当なとこで途中買った服着て、エルから貰ったもん脱いどけよ?」
「どうしてですか?団長から見たら私には似合ってませんでしたか?エルさま所有だったから質が良くて着心地がとってもいいんですよ」
「似合ってないとかそう言うんじゃなくてな。エルが持ってんのは、高すぎるのが多くてな、お前が持つにはチョイ不自然っていうかな…」
これから見習いする私が持つには高すぎる素材と仕立てらしいです。
確かに、言われてよく見れば、綿っぽい素材で軽く、飾りボタンに彫りがあって、凝ってますね。
フェルト地よりも薄い布だから、見た目から高そうだ。確かに従士見習いにしては仕立てが立派すぎる。
「わかりました。ありがとうございます、前の町で買ったものに着替えておきます。城塔門には着替えのできそうな場所とかありますか?」
「監視兵の詰所あるんで、そこ少し借りとくか。すぐ済むなら問題ないだろう」
団長が監視兵に伝えて少し場所をお借りして着替えました。ちなみに詰所は交代要員が待機する際に利用することが多いらしく、窓がなく狭い上に石造りの圧迫感あり、早々に着替えて出ました。
私は後ろ盾をエルさまとするけど、本物の貴族や豪商の親がいません。なのに、まだ見習いの給金では持てる筈がない質の高いものを普段使いしているのは不自然ですね。これから影も形もない親類を見せられない以上、最初からちゃんと取り繕って天涯孤独な設定を作っておかないと。
「言葉も、上下の階級と後ろ盾とかをシッカリ把握できるまでは丁寧にね?誰が文句言ってくるか、わからないから。
服装と小物は寮に来るまでに、あらかじめ揃えておいて欲しいんだけどね〜。うん、僕の実家に連絡して、揃えておいてもらうから、それまで、気に入ったからって適当なものを適当な値段で市街で買ってこないようにね?」
商人の息子のヨルンくんの『あんたたち二人とも金銭感覚壊れてるから』そんな心の声が聞こえましたよ?
「エルマールさんもディクルトも女の人から、すっごい人気者なんだよね、お金あるし能力高いって評判だから。僕も意外と周りの評価いいし、団長は言わなくてもわかるよね?これから嫌味とか嫌がらせがあるかもだけど、カリーンより職位が上だったり貴族の末端だったりばっかりになると思うから、ここら辺の力関係を把握できるまで、絶対大人しくしときなよ?」
ディクルトとヨルンくんまで優良物件だったとは。何気に凄い豪華メンバーだったのね。
「はい、基本ですから。きちんとしていくつもりです」
つい頭を下げそうになるのを、傾ける程度に抑える。日本人なら丁寧に話すことと頭下げるのって同時にする事多いから、気をつけよう。
これからは、勉強ではない実践です。気をひきしめていきましょう。
「私も気を配れるようにはするつもりですが…」
少し首を傾けて顎あたりを繊細な指先を軽く着けてる所は、それだけで思慮分別のある大人な魅力を放ってます。
「いっそ私のお嫁さんとして来られます?
旅先で盗賊に襲われて身内を惨殺された可哀想な娘。不運なことに家族で遠い異国の地へ親戚を頼り移動中。財産と言えるものを全て取り上げられ、あわや人買いに売られてしまう所を、私が救ったという美談ですよ!
なんとか、いけそうじゃないですか?」
思慮分別があるように見えるだけでした。
………チー鱈には、自分の将来を売り渡してもいいほどの魅力があったのでしょうか?
エル様の人生ってそんな簡単にチー鱈と交換したらダメだろう。
「右手に見えんだろう?あっちに見える城塞の団舎に行くんだがな、車借りてやるから、エルマールは市場やら新と旧の市場通って、内壁までの領都の案内しながら回ってカリンを連れて来てくれ。ついでに、ヨルンとこの実家でさっきヨルンが言ってたのを受け取りしてから戻ってこい」
団長は、嫁さん発言を華麗に聞こえなかったふりで、完全スルーですね。
「いいんですか?ありがとうございます!とっても大きい都なんで、見ておきたかったんです」
もちろん私もです。優良物件、結婚したいベスト10に入ってそうなののお嫁さんって。自ら危険な場所に殴り込みだよ。
市場ですよ、素直に嬉しい。買えなかったお菓子や食べ物の値段帯も知りたかったから、助かります。
「では、僕はエルマールさんの魔法騎士団に帰領したことお伝えしておきます」
「お願いしますヨルン。不要な素材は、ギルドに売りに行くつもりなので、急ぎの報告あれば先にギルドの私宛の連絡箱に入れておくように伝えてください」
連絡箱?郵便局の私書箱にみたいなものかな?
「わかりました。では僕はここで失礼しますね。カリーンもまたね」
「ありがとうございました!」
バイバイと手を振られたので、私も離れていく彼らに手を振り返す。
団長たちは、城の方へと続く右手、中央大通りから筋違いの道に向かい、これから騎士団に戻るため、一旦お別れ。
新市街を出て直接旧市街をショートカットして直接主城塔に入るため前衛塔に行くようです。
検問所を無事通り過ぎたら、それぞれ別れての行動。
側防城塔には別の門番がいたんだけど、団長とは親しい人らしい。門番さんは私のバッチを、自分の持ってる杖の先に付いた石に近づけて情報を読み取るだけで終了。
後の人は顔パスです。すごいです、売れっ子芸能人みたい。
「どこか先に行きたい所はありますか?」
馬車止めの方へ一緒にエルさまと歩いて、行き先を決めてます。
検問所を過ぎて砦壁内に入ると、たくさんの建物と人がいました。
はじめて訪れる領都です。
何だか、とっても楽しみです。




