表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

始まり、それは運命の歯車 Ⅱ

 ・・・――――――ッ!――――・・・ぶ―――じか―――こ・・・れはッッ――――

「はっ!!」

 俺は飛び起きた。それは目覚ましが鳴るより早く、まだ薄暗い、ひんやりとした心地よい雰囲気の中だった。それなのに何故か胸騒むなさわぎがする。

 (いつもと可笑おかしい。なにか怪しい。俺は昨日・・・新作のラノベを買って、それで?)

 俺は周りを見渡した。散らかった少年誌や漫画。服などがハンガーに掛かって、半開きのクローゼットから覗いていた。手元にはかばんが有り、自分の生徒手帳などが置いてある。

(ここは・・・俺の部屋だ。何か可笑しいってわけじゃ―――ッッ!!)

 突然とつぜん頭に、ピシンッと激しい痛みがやってきた。

(黒い影、に襲われて、白?髪?なんだ?何か言っている。小学生?小さい?耳?頭の上に?あぁ、髪じゃなくて尻尾か・・・)

「尻尾ぉぉッッ!!!??」

 突然やってきた痛みと共に、昨日の出来事がうっすらとよみがえった。


        △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△



 視界の端に蠢く影。俺はそれが気になった。俺はそいつの後を追った。そいつはでかかった。だが早かった。俺はチャリを必死にこいで、後をつけた。三度目の曲がり角に差し掛かったところで追いかけっこは終わった。

 巨大な影は急に止まった。急いでチャリをこいでいたが結構距離があり、土手どてを下れば早く追いつく事が出来る。が、俺はその巨大な影が止まった理由が分かった。獲物えさをみつけたのだ。俺の所からでも分かる白い髪。暗く、黒に塗りつぶされたこの闇夜で一滴の白。純白で染まることがない真っ白な粉雪。その白は、色なき世界から俺を掬い上げた。

「―――ッッ!!あんな所で―――何やってんだよっ。」

 影が動き出した。さながら駆ける混沌こんとん。俺は土手からチャリで駆け降りた。多少、転びそうになったが関係ない。あのままじゃ――――ッッ!

 追いついた、影に追いついた。やはりでかかった。カンケーない。チャリから降りた。駆け寄った。・・・そこで俺は凍りついた。

 白く白く白い。処女雪しょじょゆきのように白くきよきよい。世界が白く染まった。この感覚はあの声を聴いた時以来だ。その白さはまるで暴力。この闇夜に染まらぬ白。

 影が伸ばした。影を伸ばした。槍のように真っ直ぐに、曲がることなく。

(あぶねぇッッ!)

 足が出ていた。気づかぬうちに出ていた。恐くないかって?恐いさ。死にたいのかって?生きたいさ。じゃあ何故かって?・・・俺は小さい頃から夢があった。光の巨人みたく、悪い奴をぶっ飛ばしたい。菓子パンのヒーローみたく、愛と勇気で生きてみたい。そして、ラノベの主人公みたく、命がけで助けたい。

 俺は喧嘩けんかが出来るわけでも、強いだけでもない。勉強だってそこそこ。運動が少し出来るだけ。―――でも、守りたい。諦めきれなかったんだ。小さい頃からの絶望、『非日常』がないこと。今目の前にある。日常が変わる。『非日常』に変わる。

「しゃぁぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!」

 振り返る白、白い髪をなびかせ、立ちすさんでいた。

 つらぬ感覚かんかく。影が突き刺さる。腹から先端をのぞかせる。

 影が吹き飛んだ。後方遙はるかに吹き飛んだ、って言うかぶっ飛んだ。

「こぼっっ。」

 変な声が出た。地面に衝突した。ぼんやりとする。駆け寄る白。顔を覗かせる。―――白くきよきよい。ととのった顔立かおだち。まだ幼さを残している。ここまでなら、絶世ぜっせい美少女びしょうじょで通るかもしれないが、頭の上に耳。それも猫の様な。九ツに分かれた尻尾。九尾きゅうびと言う奴か。

「―――じょぶか?―――今治してや―――な無茶を・・・これは・・・今日発売のライトノベルッ!」

 ん?可笑おかしくなって来た。

「こやつ、なかなか趣味が合うの~。名前は・・・みるも―――とうや?漢字が変わってるの~。さてと、治して記憶を消すかの~。」

 痛みが引いてく。

「さて、記憶をの前に、・・・ちょっとだけなら・・・読んでもばちが当たらぬのじゃ。そうにちがいないのじゃ。」

 ~~~~♪携帯の着メロがなった。

(俺のではないからあいつのか。アニソンか・・・こいつとはうまい酒が飲めそうだな。)

「のじゃのじゃ?のじゃ?のじゃ~、あいつか?・・・逃げたのじゃ。そして巻き込まれた一般人にんげんが一人おるの~。のじゃ。分かったのじゃ。家に送ってってやるのじゃ。ナビ、よろしくなのじゃ。」

 そして俺は、家に送られて、記憶をけされるのを忘れさられてた。

「ちょっとだけなら―――って時間がないのじゃ。・・・ちょっと借りてくだけなら問題ない・・・はずなのじゃ。」

(ありだよ。おおありだよッッ!)


         △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△



「そうして俺は、新刊のラノベを取られたと。・・・じゃないだろッッッ!」

(くっそ~、今日のうちに読み終わる予定なのに。あのキツネヤロ~、覚えとけってんだい。)

「兄ちゃん起きてんの~?さっきからさわがしいよ。思春期なの?もしかして思春期なの?青春なの?可愛い可愛い妹に欲情しているの?やらし~。でも・・・お兄ちゃんなら・・・発情しちゃった?ねーねー、妹にヤラシイこと言われて発情しちゃったの?「いや、ないから。「即答そくとうッッ!」

 こいつは俺の妹の、覗茂みるも菜護梨なごり。中学3年生だ。顔だけはパーフェクトな奴だ。ただ、残念。何と言うか、残念。何かと、残念。

 うちは、妹と二人暮らしだ。親は生きてるが、なにかと経験だとか言って妹を、俺の住む一軒家に送ったのだ。

「昨日、帰って来るのおそかったね。」

「え?あ、ああ、ラノベ買って帰ったからな。」

「にしても、遅かったような。もしかして、いやらしいおもty「言わせねーよッッ!」

「俺、少し汗かいたから風呂はいるわ。」

「なるほど。そこで妹に対してのリピドーをはっさn「しねーから。」

 俺は、何か起こる気がした。長く待ち望んだ、『非日常』な何か。


 吉と出るか、凶と出るか。鬼が出るか、蛇が出るか。後が分からない状況でも、淡く、強い高揚感を覚えていた。

 この感覚は、あの声以来だ。―――――――



・・・長くしちゃいました。てへぺろ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ