スピンオフ 第三話 最強トリオの極上・蟹ネギま
ボアくんとルナちゃんが、仕留めた大きな泥蟹と大量の野生のネギを抱えて開拓村に戻ると、広場ではアルトが「クワ」を完成させたところであった。
「おーい、ボア、ルナ!戻ったか、心配したぞ……って、うわあっ、何だそのデカい蟹はっ!」
アルトが目を丸くする。
「アルトさん、沼の上流で、野生のネギを見つけたらこの泥蟹に襲われたんだよっ!でも、ダグラス様が護衛に付けてくれたこのルナちゃんが、一瞬で仕留めてくれたんだ」
ボアくんは嬉しそうに、又得意げに丸い鼻を高くすると、ルナちゃんは少し照れ臭そうにそっぽを向いた。
「わっ、私はダグラス様に言われた仕事をこなしただけよッ!……それよりボアくん、この蟹と、その辛そうな草で本当に美味しいものが出来るの?」
ボアくんが差し出した青々とした細長い葉とルナちゃんと引きずってきた泥蟹の巨体を見て、大鍋の前で火の番をしていた湊(inダグラス)の目がパっと輝いた。
「ボアくん、これ……野生のネギじゃないか!それにこの立派な蟹の身……アルトくん、手伝ってくれ!」
湊(inダグラス)に呼ばれ、近くで新型のクワの調整をしていたアルトが身を乗り出す。
「はい、ダグラス様!俺は何をすれば……」
「この蟹の身をほぐして、ボアくんがとってきたネギと交互に刺せるような『細長い木の串』を沢山作って欲しいんだ。
「木の串、ですか?お安い御用です」
アルトによって滑らかな木の串が沢山削り出される。
湊(inダグラス)は自ら蟹の白い身を切り分け、ネギと交互に串に刺していく。その様子をボアくんとルナちゃんは不思議そうに覗き込む。
「ダグラス様、それはなんという料理ですか?」
「……これはね、僕の故郷の言葉でね、『ネギま』って言うんだ。本当は鳥の肉で作るんだけれど、この蟹の身ならきっとおいしいご馳走になるよ……さあ、ショウユを塗って焼こう」
ジュウウゥゥゥゥ―――ッ!
炭火の上で、蟹の濃厚な旨味エキスがネギの表面を包み込み、そこに湊(inダグラス)の手でショウユが塗られた。その瞬間、これまで以上の香ばしさが広場一杯に広がった。焦げたショウユの匂いと、火が通って、甘みを増したネギの匂いが混ざり合い、ボアくんとルナちゃんの喉が同時に鳴る。
「はい、ルナちゃん。護衛のお礼だ、焼き立てを食べてみて」
湊(inダグラス)から手渡された道の料理『ネギま』を、ルナは恐る恐る口に含み、蟹とネギを一緒に噛みしめた。
「っ……なに、これ……」
ルナの目が、驚愕で見開かれた。炭火で焼かれた蟹の身は驚くほど甘く、そこに焦げたショウユの香ばしさが完璧に絡み合っている。そして、ただ辛いだけだと思っていた野生のネギが、蟹の旨味を吸ってトロトロに甘くなり、口の中一杯に広がった。
「美味しい……!私、こんなに温かくて美味しいもの、生まれて初めて食べた……」
ルナちゃんの目から涙がこぼれ落ちる。
「でしょ?僕の鼻に狂いは無いんだよ」
「……ボアくんのお陰もあるけど、ダグラス様のこの『ネギま』っていう料理が凄いのよ」
ルナちゃんが小さく微笑むと、ボアくんもとっても嬉しそうに丸い鼻を鳴らした。アルトも満足そうに笑っている。
こうして、湊(inダグラス)の知恵によって生まれた「蟹ねぎま」は村に新しい食材と新しい仲間を温かく迎え入れる懸け橋となった。
ボアくん、ルナちゃん、アルトさん……この若き人間たちのチームワークが、ダグラスの遺した奇跡の土壌で行われる「二毛作」を支えていくことになる。
一旦ここで終了です。有難うございました。




