新しい家族 3
「ねえ……もしかして、ここにいたかったの?」
ハルトとルティアは、アンナと一緒に外で遊んでいる。
私はお昼寝してしまったレイを抱き上げたまま、ソファーに置いた魔剣と聖剣を睨めつける。
あのあとも、ハルトとルティアは魔剣と聖剣に触れることができなかった。
けれど不思議なことに私だけは触ることができたから連れてきたのだ。
以前、魔剣が子どもたちと一緒にいるために、旦那様を拒否したことがある。
今回もそうなのかと思ったのだが……。
しかし、魔剣と聖剣の光は二回ずつ。
肯定なら一回、否定なら二回光るのだからそういう理由ではないようだ。
「じゃあ……どうして」
ふと、思い浮かんだのは、ロレンシア辺境伯家当主に伝わるという物語だ。
ロレンシア辺境伯家、フィアーゼ侯爵家に伝わる魔剣と聖剣、そして騎士レイブランドとロレンシアの姫フィアレイアにまつわる話は、断片的で整合性がない部分がある。
一千年の月日が物語を変えてしまったのか、権力者の都合のいいように変わってしまったのかそれはわからないが……。父様はこう言っていた。
『魔剣と聖剣……二振りの剣は、剣の乙女によって作られた。しかし、人々が魔剣と聖剣を手にしようと奪い合うと、完成した二振りの剣は剣の乙女にすら触れることを許さず、すべてを拒否してしまった。だが、魔力はないが心優しい剣の乙女の姉が人々の平和を祈ると、魔剣と聖剣は彼女に従った』
どうして剣の乙女が剣を作ったのに、剣の乙女の姉の祈りで魔剣と聖剣が彼女に従ったのか。
ロレンシア辺境伯領には、剣の乙女の逸話は多数残されているが、その姉に関する情報はほとんど残されていない。
私が聖剣を眠りから覚ましたことは、フィアレイアの力が関係しているのではないか。
ベルティナともそんな話をした覚えがある。
フィアレイアは、魔力を持たず、代わりに神代の魔導具の声を聞き、姿を見ることができたという。
レイブランドとフィアレイアの子孫であるフィアーゼ侯爵家には神代の魔導具の声を聞く力が受け継がれ、フィアレイアの生家であるロレンシア辺境伯家には神代の魔導具の姿を見る力が受け継がれたのだとすれば。
――すやすやと眠る我が子には、魔力がない。
けれど、魔剣と聖剣の声を聞き、宝石の光を見ることができる。
「フィアレイアと同じ力が、レイに受け継がれている?」
そうでなければいいと思いながらも、考えは確信に近いものだった。
部屋の中が耳が痛くなるほどの静寂に包まれる。
聖剣と魔剣が宝石を光らせた。
それぞれ、一回ずつ。
――つまり、答えは『昰』だ。
「おかあしゃま?」
「……レイ」
このことに気がついているのは、私一人だろう。
いや、もしかしたら旦那様はもう気が付きつつあるかもしれない。
「にーにとねーねのところに行こうね!」
それにしても寝起きの良い子だ。
レイは、体をよじった。
降ろすとレイはちょこちょこと歩み寄り魔剣と聖剣に触れた。
「……っ!」
まるでここまでの仮説を証明するかのように、レイはいとも容易く魔剣と聖剣に触れ、ずるずると引きずってルティアとハルトの元へ運ぼうとするのだった。
いつもご覧いただきありがとうございます。
本日、TOブックスより書籍一巻が発売になります。
読んでいただき、応援してくださったお蔭様です。ありがとうございます。
そして、死神騎士様との間に双子を授かりましたは、書籍2巻、コミカライズも決定しております。
引き続き双子と魔剣と家族の物語を楽しんでいただければこれほど嬉しいことはありません!




