ルティアとハルト
ルティアとハルトは、動だにせず空を見上げていた。
涙はとっくに涸れ果てている。
多分、彼らの耳にはうるさいほどに魔剣と呪剣の声が聞こえていることだろう。
「――ルティア嬢、ハルト?」
「「……っ」」
顔を上げると、そこにはジェイルがいた。
ここまで周囲を守りながら来たのかもしれない。
彼の服は汚れ、頬には血が滲んでいた。
彼は、二人の様子を見て状況を察したのだろう。
「――戦えなかった」
「――守れなかった」
ハルトとルティアの瞳から、再び大粒の涙がこぼれ落ちた。
二人はまだ七歳なのだ。
「この場所で?」
「「うん…………連れて行かれちゃったの」」
ジェイルは、唇を震わせたが、それ以上何も言わずしゃがみ込んだ。
「血痕がない。巣に連れて行かれた?」
「「……」」
ルティアとハルトが目を見開いた。
魔獣は明らかに手加減しているようだった。
「呪剣さん、敵意はないって本当なの?」
「魔剣さん、まだチャンスはある?」
二人は剣に話しかけた。
抜けなかったことを許せるわけではない。
「黒い森に向かえば、兄上もいるはずだ」
「「……そこまで行けば、お父さまと聖剣さんもいる。もしかしたら、お母さまとレイも」」
「騎士団訓練生は、まとまって移動している。君たちは魔力がある。行軍にもついてこられるはずだ――ルティア嬢、ハルト、一緒に行こう」
「「――うん」」
ルティアとハルトは、騎士団訓練生の一行に合流した。
彼らは、十三歳から十五歳くらいまでの少年たちだ。
「ジェイル――もしかして二人は、フィアーゼ卿の?」
「ああ……黒い森まで同行させてくれ」
「もちろんだ。だが、ついてこられるのか?」
「二人は、ベルセンヌ卿の訓練を乗り越えている」
「げ――鬼……いや、ベルセンヌ卿の訓練を」
一回り大きな体格の赤い髪の少年は、十五歳くらいだろうか。
彼はベルセンヌ卿の名を聞いた途端、眉根を寄せた。
ルティアとハルトは、三年もの間ベルセンヌ卿の訓練を受けているため当然だと思っているが、騎士団訓練生の中で彼は鬼教官だと有名なのだ。
「それなら、問題ないな。みんなも構わないか?」
異を唱えるものはいなかった。
ルティアとハルトが、ロレンシア辺境伯領のトーナメントで、わずか四歳で優勝と三位という成績を得たことを知っている者も多い。
ルティアとハルトは、沈黙したまま抜刀した。
先ほど、どうあっても抜けなかった魔剣と呪剣は、あっけなく鞘から抜けた。
「「悪いけど、お父さまかお母さま、そしてレイを見つけるまで、鞘には戻さない」」
ルティアとハルトの声は、決意に満ちていた。
あるいは騎士に憧れ――
あるいは家のために――
あるいはそれ以外に道がなく――
騎士団訓練生となった子どもたちは、前に進む。
たぶんこの話を私は子どもたちから聞くことになるだろう――だが、それは再会を果たす日になるはずだ。





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