王城の宝物庫 5
――たくさんの魔導具が眠っている。
この国の中心である王都、王城、王座の後ろの宝物庫。
この場所には、千年の魔導具の歴史が閉じ込められていると言っても過言ではない。
「……」
ハルトが無言になった。
もしかして、周囲にあふれる魔導具に駆け寄ってしまうのではないか。
そう思ったが――。
「あの、剣――見たことない――ううん、似てる」
ハルトが魅入られたように、ふらふらと近づいていく。
レイはすでに、剣に手を伸ばそうとしている。
私は、レイのそばに走り寄る。
旦那様とルティアが、私のことを追い抜いていった。
「レイ!」
「ずっと――ないてたの」
レイが剣に触れる。
淡い紫色の光が、周囲を埋め尽くした。
「「わわ……!?」」
「泣き声!?」
ルティアとハルト、そして旦那様が驚いたような声を上げた。
レイが、剣を手にしたとたん、急に音が聞こえてきたような反応だ。
その剣は、魔剣と聖剣によく似ているが細身で短い。
「あかちゃん!」
「赤ちゃん……?」
「かわいそうなの」
「……レイ」
レイがよろよろと剣を持ち上げようとする。
持ち上げきれず、ルティアが手を添える。
「……千年もここにいたの? 三百年前に誰か来たっきり、たった一人で? かわいそう……」
ルティアが剣を見つめ、口を開いた。
「……ママ? 聖剣さんの子どもなの?」
ルティアが、首をかしげて旦那様の腰に下がる聖剣を見つめる。
「フィアレイアは、親じゃないと言ってるぞ」
「あっ、また泣いちゃった! お父さまも聖剣さんも赤ちゃん相手にひどいよ!」
「す……すまない」
ルティアの言うとおり、チカチカと光る謎の剣は大泣きしているようだった。
剣が赤ちゃんなんて、ありえるのだろうか。
「一緒にいたいって? 私と?」
「ねーねがすきだって!」
ルティアは剣を持った。
まだ、小さな体のルティアは、聖剣や双剣になった魔剣を手にするといつも重心がぐらついてしまう。
もしかすると、小さめで細身の剣は軽いのかもしれない。
剣に関しては素人の私が見ても、重心は安定しているように思えた。
「……神代」
「ハルト?」
「零型――だ」
ハルトの声は、ひどく震えている。
体も震えている。いつもだったら、珍しい魔導具を見たら興奮するはずだが、明らかに様子がおかしい。
「零型は確かに存在した。でも、誰も実物を見つけられずにいた――――まさか、こんな近くにあったなんて」
「ねえ、ハル。一体どういうことなの」
「これは千年より遙か前の武器型魔導具だよ」
「え?」
「一目見ただけで気がつくとは――さすが、フィアーゼ侯爵令息」
ハルトは、陛下に視線を向ける。
「人格を持つ剣の原型」
「ああ、この場所は、三百年もの間、閉ざされていた」
「つまり――ほかの魔導具も三百年以上前の物ってこと?」
「ああ、状況的にそうなるな。好きなものを持って行くが良い。扉がまた閉ざされれば、取り出すことはできぬ。それはつまり、存在しないことと同じであろう」
「……あの剣はルティーが手にしてる。ということは」
「あれは、フィアーゼ侯爵令嬢に与えるとしよう」
「ほかの魔導具は」
「おぬしの好きにするが良い」
「……っ!!」
ハルトが目を輝かせた。
「あの、神代技術搭載ブローチ型魔導具第1世代も?」
「ふむ、そんな名前か」
「神代技術搭載ガントレットボウガン第5世代改良型も?」
「――どうして初見の魔導具の名前がわかる」
「――だって、魔導具の命名には法則があるんだ!!」
ハルトは魔導具の山に走り去ってしまった。
私には、古びて壊れた残骸にしか見えないのだが……。
「持てるだけ、持って行っていい?」
「ああ、私も手伝ってやろう」
「――陛下自ら!?」
「おや、フィアーゼ夫人。ここにある魔導具はこれからの戦いの力になる。国のためになることが確定しているのに、国王の名など意味をなすか?」
「……私も手伝いますわ。旦那様、ルティアとレイをお願いします」
「ああ、わかった……。魔導具はまだ動くかもしれないから、気をつけてくれ」
『ピピピピピー!!』
「あっ、ぴーちゃん、ズルいよ!」
一足先にぴーちゃんが魔導具の山に突っ込み、ハルトがそのあとを追いかけていった。





書籍1巻発売中&2巻8月1日発売