第十九話 気がつけば白天井
「はっ…!!」
目が覚めてまず目に入ったのは白い天井。こ、これは…朝チュンってヤツ「のー!」
「うお、何処ここ?わ、ヘビくんいたの?おはこんばんちわ」
「おー!」
白黒シマシマのヘビくんが俺の頭を囲う様にしてくるくると這い回っている。かわいい(かわいい)。
…というか。あれ、おかしいな?確か訓練所でドンパチやってそれで…。朧げな記憶を思い出しながら、ベッドから身体を起こす。
「あででででででっっっ!?!?」
「でー!」
無理でした。全身痛すぎ。というか自分の体を見てみたら、なんか水色のペラペラの服に着替えさせられているではないか。それに包帯に次ぐ包帯。顔を除くほとんどの部位が包帯に覆われていて、その姿はまさにミイラ男。
…ってうわ、点滴刺さってる〜!痛い痛い怖い怖い!見れない見れない!
「ひ〜ん…寝よ」
「よー!」
ふて寝ふて寝。シーツを深く被り直したら、ヘビくんが忙しなく俺の頭をニョロニョロと這い回り始めた。嘘だよ。寝ないよー。
点滴に包帯、医療ドラマでよく見る患者さんが着てるペラペラの服、そしてどことなく消毒液臭いこの部屋。そうか。ここは病院か。うわー、初入院。てことはあの後で意識を失ったのか。なんてこった。
というかさっきチラッと見えたが、誰かお見舞いに来てくれてるな?どうやらうたた寝してるみたいだが。
さぁて、一体誰なのかにゃ?いや待て。誰が来てるか当ててやろうじゃないか。
俺の家族はまず無いな。ウチはとんでもなく賑やか一家なので来てたらすぐに分かるだろう。だからまず候補からは外して良し。
落ち葉ちゃん説が1番濃厚だな。次点でファフナちゃんだったり?まさかの大穴でヴロちゃんさんだったりもありえるか!?
「…待てよ?」
おい。おいおいおいおい。おい待て。もしやこれから、入院した時にやってもらいたいランキング1位のイベント、リンゴさんムキムキが見れるやもしれないのか!?ま、まさかまさかのウサギカットしてくれちゃったリンゴさんをあ〜んしてくれたりしたりしちゃうのかっ!?
オラ、ワクワクしてきたぞっ!!答え合わせだ、とウキウキで横を向く。そこにはなんと…!!
「ぐが〜…人生…爆発…むにゃ」
「ってお前かーい!」
夢見て隣を見てみたら、爆世・マーダー改めバズがパイプ椅子に座りながら爆睡していた。
「んが…おう、ようやく起きやがったかよ。テメェと言う名の人生は」
関節の外れた左腕とファフナちゃんに蹴り上げられて逆バニーになってた右腕は、今は両方ともガッチリと固定されている。実に勝手が悪そうだ。
「なぁなぁ。頼むからチェンジ頼めるか」
「テメェ失礼なヤロウだな。なんだ、リンゴでも剥いて欲しかったか?女共によ」
「そうだよ」「よー!」
「…欲望に素直というか恥知らずというか。まぁ、オレと言う名の人生の敗北は、オマエと言う名の人生を見誤ったことにあるのか」
なんかバズのヤツ染み染みと感情に浸っている。このまま浸らせておくか。
お、お見舞いの品々だ。俺は俺でお見舞いのフルーツ盛り合わせや、誰かが持って来てくれたであろう暇つぶし用のボードゲームを物色していると、ふとデジタル時計が目に入った。日付、曜日まで表示されるタイプのヤツだ。…あれ?なんだか日付がおかしいよ?
「おろろ?」「ろー!」
「あぁ、3日も寝てたんだぜテメェ。まぁ、オレと言う名の人生と殺し合ったんだ。生きてるだけ儲けもんだよなぁ?」
「まじ!?3日も寝てたの俺!
中学生最後の貴重な春休みが………!!!」
「なんかあの時よりダメージくらってやがるな。テメェと言う名の人生は…」
ショ、ショックだ。落ち葉ちゃんといろいろ約束してたのに…!ショッピング行ったり、映画見たり、動物園行ったりしたかったんだけどなぁ…。辛い。辛みが深い…。
どうやら俺は心に深いキズを負ってしまったようだ。心の集中治療室に連れて行ってくれ。ナースコール押すか…。
「もうまぢムリ…。ナスコ押そ…」
「待て待て待て待て。テメェ、急に闇堕ちヅラしてナースコール押そうとすんじゃねぇ」
閑話休題。
「…テメェとの会話なかなか疲れるな」
「そう褒めるなって」
「褒めてねぇ」
「あ、そうだ。一つ聞きたかったんだ。
バズはさ。俺とファフナちゃんがおトイレ隠れんぼしてるのを見てたのか?」
正直気になる。トイレ利用客の1人がバズだったのだろうか。でも、あの時コイツの声は聞いてない気がするんだよなぁ。
「違うな。オレと言う名の人生は見せられたんだ」
「…誰に?何を?」
「幼馴染だ。ソイツのスキルで見たんだよ。便所で逢瀬かますテメェらをよ。まじにビビったぜ。うっかり殺すところだった」
「いやまじに死にかけたんだけどね?」←ここ笑いどころ
ドッ
「ぜんぜん笑いどころじゃなーーーーい!!!」
「おっ…!良かった!起きたんだジャミラ!」
「よくもファフナ様に心配を掛けさせてくれたなミナダイスキー・ドッグ!」
バーン!と勢いよく病室のドアが開かれた。あ、落ち葉ちゃん、ファフナちゃん、ヴロちゃんさんだ。賑やかに現れた3人を目にして、「うるせぇのが帰って来やがったな」、そう言ってバズはパイプ椅子から立ち上がった。
「お、帰んの?」
「あー。コイツらと言う名の人生も、オレと言う名の人生も、一緒にいると互いに気まずくて仕方ねーからよ」
「ふんっ!」
あー、なるほど。俺こそすんなりとバズのことを受け入れているが、3人はまだまだ彼のことを信用出来ていないらしい。落ち葉ちゃんはバズを見てグルグル唸ってるし、ファフナちゃんやヴロちゃんさんも警戒態勢を取っている。
まぁクレイジーボマーだからね。しょうがないね。
バズが病室のドアを出るのを見送ろうとすると、不意に彼はこちらに振り返った。
「あぁ、そうだった。オレと言う名の人生なんだが、ワームヴェルトに入学することになったから」
「ウソっ!?」
「…げぇ、マジか」
「おー、まじで」「でー!」
落ち葉ちゃんが仰天し、ファフナちゃんが辟易している。
俺もちょっぴりびっくりだ。そうか。そう言うこともあるのか。ヘビくんも驚いています。
「なんだ。対して驚かねぇのか」
「いや、まあまあ驚いてるけど。
そっか!なかなか楽しくなりそうだな!」
原作に無い要素が増えちった。まぁ、男子生徒1人増えたくらい影響無いでしょ!
友だちなんて多くて困るもんじゃないし!楽しいが増えるだけ増えるだけー!
俺が素直な気持ちを答えると、バズのヤツは睨みを利かせながら俺に凄んできた。
「………忘れんじゃねえぞ。
テメェと言う名の人生が言い出したんだ。精々、退屈させるなよ」
「おー任せとけ!楽しみに待ってやがれ」
「…へっ」
俺の返事になんだか満足したらしい。彼は小さく笑うと、上機嫌に病室を後にした。
アイツ、訓練所の賠償とかどうすんだろ。実家が太いから問題無いんかな。これだから実家ごん太勢は…!いやだわもう!
パパンに激おこされてバイト三昧とかになっちゃえ!
…なんか周りの目が冷ややかだな。
「ん?どしたのみんな?」
「…いや、なんと言うか」
「どっくんらしいっちゃ、らしいんだけど…」
「図太くてアホなんだな貴様は」
「わー!」
どうしてか急にみんなから呆れられたぞ。解せぬ。




