【七十三話】コンテンツクリエイターは語感がかっこいい
「そういえば、空君さぁダンジョンに潜る為の練習はどうなのさ?」
いつものように桜の作ってくれた晩御飯を皆で食べている時に、思い出したように鏡花さんが言った。
そろそろ渡邉さんに教えてもらい始めてから二週間が経とうとしていて、初心者なりに刀の振るい方もだんだんと分かってきて最近は渡邉さんと簡単な組手も様になってきたと思う。
「ん?多分結構いい感じだと思うよ?」
「へぇ~、たまには見に行ってみようかな……」
「鏡花、空は結構いい感じって津奈ちゃんが言ってた」
「……津奈ちゃんねぇ。桜的にはどうなの?」
恐らく俺以上に渡邉さんと仲のいいセツナは俺のいないところで渡邉さんと話しているのか、どこか自慢げに言っているが、鏡花さんには俺の出来が良いとか悪いとかよりも、セツナの言った津奈ちゃんという基本的には女の子にしかつかない「ちゃん」という呼び名の方が気になったらしい。
「え~いい子だと思うよ?すっごい礼儀正しいし」
「まぁ桜がそう言うならいいけどさぁ」
何やら勝手に渡邉さんも新たにハーレムに入る前提で話を進める鏡花さんに口をはさみたい物の、俺も心のどこかで渡邉さんのことは可愛いと思っていたので、素直に鏡花さんに口をはさむことは出来なかった。
「……そう言えば、鏡花さん結構動画の編集忙しいの?手伝おうか?やり方とか全然わかんなけど」
「忙しいっちゃあ忙しいけど……?急にどうしたのさ」
話を逸らそうと、鏡花さんに空鏡について話題を振ってみるも、急すぎたのか逆に不審がられてしまう。
「いや、ほら、最近登録者も増えてきたし、鏡花さんも忙しそうにしてるし……」
「まぁ、かの雪原セツナがそれなりの頻度で動画に出るからねぇ」
なんだかんだ一緒に住み始めて仲の良くなっている鏡花さんとセツナではあるが、鏡花さん自身はゲームが絡むとライバル意識は満載のようで少し面白くないように眉をしかめていた。
「流石私?」
「……実際セツナが出始めてから登録者も増え始めたし、お金もまぁまぁ入り始めてるから否定できないのが嫌だね」
「あ、やっぱり結構稼げてるんだ?」
鏡花さんとしては俺と二人で始めた空鏡がセツナのブーストによって軌道に乗り始めたのはまだ少し納得いかないのか何とも言えない表情をしているが、俺は鏡花さんの言ったお金が入り始めたという言葉が気になってしまった。
「まぁね~多少上下もあるけど、サラリーマン二人分ぐらいは」
「え~それって結構凄いんじゃない?」
「ね、そんな入ってるんだ」
鏡花さんの言った事に俺より先に桜の方が食いついていた。
実際俺もそこまでお金が入っているとは思わず、少し驚いていた。
「ぼちぼち、スポンサーしたいって企業さんからも連絡入ってるし、稼ごうと思ったらもう少しいけるよ~。一応空君がARに所属する関係もあるから今のところは保留させてもらってるけど」
「まじか。そう言えばその辺は瀧本さんにまだ聞いてなかったや」
「まじまじ、今度聞いといてね、企業さんをあんまり待たせるのもあれだし」
「そういえば、社長が今度の撮影私も来てほしいって言ってた」
鏡花さんと話しているとセツナが思い出したようにそう言った。
俺はセツナに言われてそう言えば、仕事用のメールで皆元さんからARに加入告知用の動画の撮影をするために空いている日を聞かれていたことを思い出した。
「確か、撮影って来週とかだっけ?なんでセツナも呼ばれてるんだ?」
「さぁ?」
「空君とセツナが二人並んだら凄いからね」
「確かにね~」
俺とセツナが二人で顔を見合わせて首を傾げていると、鏡花さんと桜は何処か納得したように言う。
「凄いって何さ」
「「顔」」
未だに訳が分からない俺が二人に聞き直すと、二人は一ミリも悩んだ様子もなく一言で言い切った。
「まぁ?顔ってのもそうだけど、後で二人の関係を告知しやすいようにって気遣ってくれてるんじゃない?」
「……なるほど?」
「あとは別に空君はプロになるわけではないけど、セツナ同様メディアに出るときに使いやすいしね、顔が良くて若くて……そんな感じで空君の加入動画にもセツナを出すんじゃあない?」
いまいち完全に理解したわけではないが、鏡花さんが付け加えてくれたことで、さすがの俺も理解し始めた。
セツナ同様、俺も所謂アイドル的立ち位置で売りに出そうとしているわけだ。
確かに瀧本さんや皆元さんと話した時もまず顔を出せるか、と聞かれたことを思い出して得心がいった。
「ま、セツナも居るならそんなに緊張しなくていいか」
「慣れてるから、任せて」
「とりあえず、スポンサーの件はARの人に聞いておいてね?」
「うん。分かった」
鏡花さんはそう締めくくって、目の前の自分の綺麗に食べきったお皿に手を合わせてシンクに食器を片しに行った。
「AR?に所属したら空君もお仕事大変になるね?」
「え~まあ、大丈夫じゃない?セツナ見たくプロじゃなくてコンテンツクリエイターだし」
「多分他ゲーのカジュアル大会とかにも呼ばれるよ?」
何回か説明をしたはずだが、未だにARのことをよくわかっていない様子の桜に言われて、完全に甘く見ていた俺だが、セツナの言葉で少しその勢いも衰えてしまった。
「……そう言えば、セツナもたまに他のゲームのカジュアル大会に出てたな」
「ん、まぁオフシーズンの時はね」
「まじかぁ、俺VPEX以外まともにやったことないぞ」
「大丈夫じゃない?」
「だと良いけどなあ」
流石にARに所属させてもらっている以上ある程度のそう言ったイベントへの協力はすべきだと思うが、前世含めてVPEX以外のゲームはほとんどやってこなかったので、不安ではあるが、今はセツナのどこか気の抜けた言葉を信じるしかなかった。
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