【六十七話】皆してそうやって言う
「そういや、皆ってダンジョンって行ったことある?」
俺は朝見たダンジョン特集が結局頭から離れず、いつものように雑に寄せた机を囲んで各々昼ご飯を楽しんでいる昼休みに俺の斜め後ろで夏と黒木の二人を視界に収めながらこそこそと弁当を食べている加賀見君も含めてそう聞いてみた。
「え、なに硯もダンジョンとか興味あるんだ?」
俺の言葉にいち早く返答してくれたのは黒木だった。
黒木は朝鏡花さんにも言われたように俺がダンジョンには興味がないと思っていたようで少し驚いたように目を見開いていた。
「なんだよ、俺がダンジョンに興味あったら変かよ」
「ん、いやそう言うわけじゃないけど、何となく硯はああいうの興味無いかと勝手に思ってただけ」
「空君ってインドアっぽいしね」
黒木の言った言葉に続くように夏も同じように、俺がダンジョンに興味があるのは予想外と言わんばかりだ。
「インドアなのは否定しないけどさ……んで、行ったことある?」
「まぁ加奈ちゃんと中学の時に一回行って見る?って話になった事はあるけど、結局行かなかったよね?」
「そうだね」
「へぇ、なんで行かなかったのさ」
「ん~ダンジョンは楽しそうだけど、なんかガチっぽすぎて日和った」
「夏は説明が雑すぎる。実際は二人でダンジョン用品店には顔出したんだけど、思ったより用品が高かったのと、他の体動かす趣味と比べるとダンジョンは本気を求められる気がしてさ」
俺よりは詳しそうな二人に詳しく聞いてみると、どうやらダンジョンに入るためにはある程度の装備を用意する必要があるらしくその用品が高額なのもあるが、死なないとはいえ痛いものは痛いし、一般的なアウトドアな趣味に比べてある種格闘技的な心構えが必要なようで、二人はそこまでしてダンジョンに入りたいと思うほどの覚悟は無かったので、夏の言うガチっぽすぎて日和ったという感想になったそうだ。
「なるほどねぇ、加賀見君は?入った事ある?」
「え、えっと、僕はほら、人用の技術だから、ダンジョンとかは違うかなって」
「あぁなるほど」
「ち、力に慣れなくてごめん」
「いやいや入ったことないならしょうがないって」
二人からは普通の女の子目線の話を聞けたので何やら怪しい技術を修めている加賀見君であれば、一度ぐらいダンジョンに入ったことが有るんじゃないかと思って聞いてみたが、ある意味少し考えればわかることで加賀見君のアレは良くも悪くも人間用とのことで欲しかった返事を貰うことは出来なかった。
「それじゃあ皆入ったことないんだ」
「なに?硯ダンジョン入るつもりなの?」
「そうそう、今日の朝テレビで特集してるの見ちゃってさ」
「あれって死なない代わりに、めっちゃ痛いらしいよ~」
「まぁ、硯なら上手い事やるでしょ」
「てか、夏が言う死なない代わりにめっちゃ痛いってのも良く分かってないんだけど」
黒木のよく分からない俺に対する信頼は置いといて、夏の言った死なない代わりにめっちゃ痛いの一言が気になってしまった。
「お店の人が言ってたけど、目には見えないけど耐久値みたいなのがあってそれがなくなると激痛が走ってダンジョンの外にはじき出されるらしいよ」
「うわ、それって怖くね?」
「そうそうだから私たちも日和ったんだって、まぁ人によって痛みは個人差あるらしいけどね」
夏の言うように個人差があるとはいえ、ダンジョン用品店の人が言うと言うことはどんなに痛くない人でもそれなりに痛いと言う事だろう。
俺だって前世含めてこの世界でも別に痛みに慣れているわけでもないし、夏の言葉で少しダンジョンに挑戦するのが少し怖くなってきた。
「そんで、そんな痛い思いしても別にお金が稼げるわけでもないんでしょ?」
「みたいだね、聞いた話によると結構深くまで潜ったら、スポンサーとかはつくみたいだけどね」
「へぇ、それは他のスポーツと一緒か」
そこまで詳しくは聞けなかったが、それなりに一般的な話は夏から聞けたので今日の帰りにでも近くのダンジョン用品店に行って見ようかと、携帯で近くの店を検索していると、昼休みが終わるチャイムが鳴り一旦ダンジョンの話は切り上げ、俺らは次の授業の準備を始めた。
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「それじゃあまた明日」
「うん!また明日~」
「じゃね~」
「加賀見君も、また明日」
「う、うんまた明日」
その後の授業を受け終わって放課後に鳴ったので、俺は等々力さんにちょっと行って見たい所があると連絡を入れて、三人と挨拶を交わして教室を後にした。
丁度校門に出ると等々力さんがすでに車を寄せてくれており、俺はいつものように車に乗り込んだ。
「今日は珍しく寄りたい所があるらしいスけど、どこ行くんスか?」
「ダンジョン用品店に行って見たくて、ここ分かる?」
俺は等々力さんに検索しておいた店の場所の地図を見せると、等々力さんは今日俺がダンジョン関係の話を皆にした時と同じように少し驚いたようで、物珍しい物を見るような目で俺の事を見ていた。
「へ~硯さんってああいうの興味あったんスね」
「……みんなして、俺の事なんだと思ってるんだ」
「あはは、まぁ硯さんは何となくインドア派っぽいスから」
「皆そうやって言うけど、俺ってそんなインドアっぽい?」
「ま、だいぶそうっスね。取り合えずそこに行けばいいんスよね?」
「うん、お願い」
「了解っス」
もはや恒例ともいえる反応を受けながら肩を落としながら言うと、等々力さんは少し笑ってから一度俺の携帯に映る地図を覗き込んでからゆっくりと車を走らせてくれた。




