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【五十八話】あれ、俺のご飯は?

「わ~おいしそう!」

「ですね!この天ぷらとか……」

「お刺身もおいしそうだよね~」

「ん。天ぷらは間違いない」


未だ正座したままの俺を放って四人は机にずらりと並べられた料理の数々に感嘆し、目をキラキラと輝かせながら我先にと小皿に取り分けていく。


相変わらず雪原は三人に完全に馴染んでいて、雪原の事を雪原以外の三人は気にする様子もなくいたって普通の調子だ。


「……あの、俺は何処に座れば……」


俺は桜から感じる無言の圧力を感じて少し控え目に口を開いた。


「「……」」


「空君はセツナちゃんとのキスでお腹いっぱいだよね?」


俺の言葉を聞いてそれまで舌鼓を打っていた鏡花さんと一葉さんは気まずそうに桜の方を見つめて黙ってしまった。


その視線を受けている本人の桜がキョトンとした様子で言った。


勿論ある意味お腹いっぱいではあるけど、目の前に広がる料理の数々に本当の意味でお腹が減っている俺は桜の答えを聞いてしょんぼりと肩を落とすしかない。


「……空。これ、食べていいよ」


そんな俺に救いの手を差し伸べてくれたのは雪原だった。


雪原は小皿にしいたけの天ぷらとイカの刺身を載せて桜に見えないようにこっそりと渡してくれた。


「雪原……いいのか?」

「ん。私のせいでもあるから。その代わり……雪原じゃなくて、セツナって呼んで」


雪原は少し気恥ずかしそうに頬を赤らめながら言った。


「分かった。セツナ有難う。……ところでなんでシイタケとイカなんだ?」

「苦手だから」

「お、おう」


苦手な物とは言え、料理を分けてくれるのは有難いが……俺は悪戯をした犬か?


俺がそんなことを思いながら料理を食べていると、不意に桜が口を開いた。


「そろそろ、空君も正座しないでもいいよ。十分反省したでしょ?」

「あぁ……今度からは桜に報告することにするよ……」


「ん、そうしてください。先に報告さえしてくれれば私は気にしないから。ね?」

「ごめん。二人目が出てくるなんて桜に言われても信じられなかったから……」

「いいよ~。遅かれ早かれ私は二人目は勿論もっと増えると思ってたから」


桜は軽い調子でこれ以上お嫁さんが増えるなんて言うが、そう簡単に増えるものでもないだろう。とにかく今回みたいに桜に怒られるのもそうだし、桜を悲しませることもしたくない。

もし何かありそうならばとにかく桜に報告することにしようと、俺は胸に誓った。


「それじゃあ、こっちきて?一緒にご飯食べよ?」


桜はもう本当に何も気にして居ない様子で俺を自分の隣へと誘う。


「ちょっと待った。空は私の隣」


桜に待ったをかけたのは大人しく天ぷらをつまんでいたセツナだった。セツナはこれに関しては譲る気はないようでいつもより何割か増しで目つきがはっきりとしている。


「いやいや~。セツナちゃんはさっき空君とキスしてたでしょ?今度は()()の私に譲ってくれてもいいんじゃない?」

「や。桜はどうせもう空とシてる。不公平」


俺が正座を崩して桜の隣に行こうとしたが何やら二人の間に火花が散り始めて立ち上がるタイミングを逃してしまった。


「む、確かに私は空君ともうシてるけど、それは今関係ないんじゃない?とにかく空君は私の隣に来るよね?」

「む。私はさっきだって途中で邪魔されて不完全燃焼。桜が一番なら今こそ譲るべき」


「一葉ちゃん怖いね~」

「ですね~……してるんだ私より年下なのに……」

「ん?何か言った一葉ちゃん?」

「い、いえ!お気になさらず……あはは」


何故か急に桜とセツナがバチバチし始め、鏡花さんと一葉さんは料理をぱくつきながら他人事の様にほのぼのとした様子でなごんでいた。


俺も和みたい。


「じゃあ、空君に聞こっか?」

「ふん。空は私のところに来る」


「「空くん!どっちの隣に座るの!?」」


俺が鏡花さんと一葉さんの会話に耳を傾けていると、何やら桜とセツナの間での話し合いが俺に意見を聞くと言うことでまとまったようでいきなり俺に詰問が飛んできた。


俺的には今回悲しませてしまった桜のもとに行きたいが、そうするとセツナの後が怖い。


「……机の端じゃダメ?」


「「ダメ」」


俺が日和って隣に誰も居ない上座にあたる席を指さして言うと、二人は直ぐに俺の逃げ道を潰してきた。


「空君日和ったね~」

「ですね。」


相変わらず鏡花さんと一葉さんは和んでいる


「鏡花さん一葉さん!他人事みたいに和んでないで助けてくださいよ!」

「……だって他人事だし~」

「空さん、ごめんなさい……」


俺が和んでいる二人に助けを求めるが二人は怖い物には関わりたくないとばかりに、ぶんぶんと首を横に振り二人で談笑を再開してしまった。


俺は完全に逃げ場所をなくしじりじりと詰め寄ってくる桜とセツナから逃れるように、どうにかきょろきょろと辺りを見渡しても俺を助けてくれそうなものは何もなかった。


「というか、空君を真ん中に挟んで食べればいいんじゃないですか?」


俺がどうにか落としどころを探していると、何かに気付いたように一葉さんが言った。

確かに言われてみれば一番当たり障りのない選択だし、なんで気好かなかったのか不思議におもってしまう。


「それだよ!一葉さん、有難う!……ってことでもいい?」


俺が一葉さんに感謝しながら二人に向かって言うと二人も少し不満げにはしているが納得はしてくれたようで、頷いていた。

結果セツナが俺の左側、右側に桜と言った形に落ち着いた。


途中でセツナが俺にちょっかいを掛けてそれに桜がムッとするなんてこともあったが、その後は特に何か起こるわけでもなく、順調に夕飯の時間は過ぎて行った。



「美味しかった~」

「もうお腹いっぱいです」

「僕も美味しくてついいっぱい食べすぎちゃったよ~」

「美味しかった」


食べ終わったお皿も片づけられ、俺達五人は全員が膨れ上がったお腹をさするようにして食後のお茶をすすっている。


五人で取り立てもない話をしながら、和んでいると、不意に鏡花さんが真面目な様子で口を開いた。



「そういえば、セツナちゃんが良いなら、僕も空君のハーレム入ってもいい?」


そうして鏡花さんの口から出た言葉は俺が耳を疑うのに十分なほど急なことだった。


「え?」

「え?」


その鏡花さんの突拍子もない告白に俺だけでなく、一葉さんも驚愕して意味の無い言葉が口から洩れる


「いや、私もそろそろ結婚しないと親がうるさいし、空君ならいいかなって」

「ん~鏡花さんならいいよ~」

「私も構わない」


鏡花さんの告白には桜は分かっていたと言わんばかりに頷いて同意し、セツナは自分以外のことは余り気にしていないのか両名が気軽な調子で鏡花さんを受け入れることに賛成していた。


「お、二人に許可も貰えたし空君、どう?僕とは嫌かい?」

「ちょ、ちょっと待って!俺セツナだけでも混乱してるのに、鏡花さんもそんなに軽い調子で言わないでくださいよ!」


「え~いいじゃん。なんだかんだ僕と空君って長い付き合いじゃん?」

「それはそうですけど!今日が会うの初めてじゃないですか!」


「いいじゃん!空君私は鏡花さん素敵な人だと思うし」

「ミラーは空ほどじゃないけどゲーム上手いし」


「ちょっと二人は黙ってて!」


俺は適当に感じてしまうほど軽い調子で俺をそそのかす二人には黙ってもらい、崩れた姿勢を整え、きちんと鏡花さんと話すことにする。


鏡花さんのあまりにも急な告白に驚いていたせいか手の中の湯飲みからは温度が失われており、唇を少しでも湿らせようと口に含んだお茶はお世辞にも美味しいとは言えないものだった。



まぁそういう事です(笑)

次回は鏡花さんとの話し合いの回になります。


by白熊獣

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[一言] 堕ちろ!堕ちたな(確信)
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