【三十一話】やあ諸君!いい朝だね!
俺は窓から差し込んでくる光で少しずつ、目を覚ました。
目を覚まして隣を見るともうすでに誰もおらず、まさか俺の見ていた夢かと困惑したが、掛け布団を見るとしっかりと昨日の行為の後である何かしらの液体で滲んでしまった血痕が確かに残っていた。
「あ、空君起きた?」
俺が布団の上で呆然としていると、寝室の扉の向こうから、可愛らしいエプロンを付けた大天使こと、桜が顔をひょこっと出して俺に話しかけた来た。
「あ、うん」
「朝ごはん作ってあるから、一緒に食べよ?」
そう言ってベッドの近くに近づいてきた桜に俺は手を引かれてリビングまで連れてこられてしまった。
「おーすごい」
俺はリビングのテーブルに置かれている料理の品目の多さに感嘆の声を上げた。
「えへへ……結構自信作!」
「マジで美味しそう」
俺は直ぐに椅子に座り桜さんの作ってくれた朝ごはんを食べ始めた。
「美味し~桜料理上手いよね!」
「ふふん。まあね~」
最初にサラダに手を付けたが、そのサラダも出来合いのドレッシングではなくて、桜自家製のドレッシングの様だ。
「あ、そういえば勝手にお風呂入っちゃったけど大丈夫だった?」
俺がパクパクと朝ごはんを口に詰め込んでいると、桜がそう言った。
「ん?全然大丈夫!てか桜、家に住むんでしょ?そんな事気にしないでよ」
「なら気にしないけど~空君も学校行く前にお風呂入った方がいいよ?……体中パキパキしてるから」
桜は最後だけ恥ずかしそうにそう言った。俺は桜に言われた通り自分の体を確認すると、確かに件の液体が乾いた時特有のパキパキ感を下半身を中心に全身から感じた。
「あー確かに。このまま学校に行くわけには行かないか」
俺も桜の意見に賛成だった。
「そうした方がいいと思う。食べ終わったらお風呂入ってきなよ」
「そうする」
俺はそう言って朝ごはんに集中することにした。
――――――――
その後俺は朝ごはんを食べ終え、風呂に入っているときに気が付いたが、首元から鎖骨にかけて小さい内出血の後がちらほらとあることに気が付いた。
「あ、やば。これ制服から出ないよな?」
何となく自身の制服を着ている光景を想像したが、いくつか怪しい位置についてしまっているものもあった。
分かった事ではあるが、桜は思いのほかキス魔と言うことだ。唇にとどまらず体中いろんなところをキスされた気がする。
それにこの首元と鎖骨に掛けていくつも付いているまあ、所謂キスマークと言う奴は完璧に桜の趣味だ。
まあ俺も桜につられて桜にもいくつかつけたような気がするが……
「ま、いっか」
俺はキスマークのことは置いておいて、体を特に重点的に洗って風呂から上がった。
「学校何時からだっけ?」
俺が風呂から上がって髪の毛を乾かしていると桜がそう聞いてきた。
「えっと八時に家を出たら間に合うぐらいかな」
俺は時計を確認すると今は7時だったのでまだゆっくりできるだろう。
「じゃあさ、私朝ごはん作りながら考えた事言っていい?」
「いいけど?」
「とりあえず、私は硯家のメイドさん兼お嫁さんってことで!……どう?」
桜は何処からその自信が湧いてくるのか不思議なほど自信満々にそう言い切った。
「……ちょっと待って?なんでメイド?」
「私がメイドさんが好きだから!」
「え?」
「てのもあるけど、ほら、私空君の家に住まわしてもらうのに、何もしないってもの申し訳ないし、家事全般は私がするから硯家のメイドみたいな物じゃん?」
確かにそう言われると何となく納得してしまいそうになっている自分が居た。
「まあそれは別にいいんだけど、どうして俺にコスプレじゃないクラシカルなメイド服専門店のホームページを見せてくる?」
俺の目の前に桜さんの携帯で調べたのであろう、ガチのメイド服の専門店のホームぺージがずいと差し出された。
「……着てみたいなぁ~」
着せてみたいな~
「……後で買っておきます。」
俺は下心込みで観念したように両手を上げた。
「やった!私ね、これが良いなって思ってるんだ~」
桜はウキウキしながら一つのメイド服を見せてくるが正直メイド服には詳しくないので違いがいまいちわからなかった。
ただ桜が着ると格別に可愛いんだろうなとは思ったが。
「それじゃあ何着かずつ買っておくよ。」
「お~太っ腹ぁ!」
桜はそう言ってスキップをしようとして少し痛がってスキップはせずに、とことことキッチンに戻った。
俺はキッチンに戻った桜を見て一つ思い出したことがあったので桜に話しかけた。
「あ、そういえば、好きな空いている部屋使って良いよ。家具とかも今度一緒に買いに行こうか!」
「わぁ~ありがと~!!でもとりあえず家具は良いかな?」
「なんで?必要じゃない?ベッドとか」
「ベッドは当分使わないと思うな~私は」
にやにやと笑いながら話す桜を見て俺は確かにと思ってしまった。昨日も、若さとこの神様スペックの体が遺憾なく発揮されずいぶんと桜と楽しんでしまったのだ。
「まあそういう事なら……また家具が必要になったら言ってね?」
「了解っ!」
桜はびしっと敬礼をして答えてくれた。
どうやら俺はこの世界に来て15歳という若さで結婚をし、さらにメイドさんを手に入れたみたいだ。
一旦この話でメイドさんを手に入れろ!編は一区切りつきました。ここから次の章への導入の前に桜さんとの日常や、学校生活等の話を何話か挟んで、次の章に入ります。因みに次の章は〈プロゲーマーと配信編〉にするつもりです。
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