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8話

 時は、『邪神:クカバルナ』討伐より二年と半年ほど前に遡る。その日、アオト達が教会で『適正職業おろし』が行られ、エリック達への勇者コールでアオトの心を滅多打ちにし、誰にも気づかれず寂しく一人でアイルギアを出た後だった...


 はぁーー


 内心でそれはそれは大きなため息をついたアオト。


 「内心、こんな感じになるだろうなぁとか思ってたけど、まさか本当にこうなるとは...そんでもって何だよ、『孤独者』って。俺はそこまで哀しい人生は歩んでなかった...ばず。神様のいけず...」


 断言出来ないところがアオトの悲しい性である。

 ...神に対して悪態をついているアオトであるが、今向かっているところは本気と書いて、マジと読むほどヤバいところなのである。その名も...


 【次元の裂け目】、である。ここは、最強だと言われている、初代勇者と初代魔王の最後の場所である。勇者と魔王の全身全霊を込めた、“究極魔法”同士がぶつかり、なんと、次元に穴を空けてしまったのだ。なんでも、魔法の威力に空間が耐えきれず歪み、ひしゃげ、そして、穴が空いたらしい。このことから、如何に初代勇者と初代魔王のチカラの異常さが分かるであろう。例え、どんなに強力な魔法同士がぶつかったとしても、普通は、空間に穴など開かない。絶対。だから、あの二人がおかしかったのだ。


 .........何故、そんなところに向かっているのかって?簡単に言うと強くなるため、だ。

えー?これじゃ分からない?

 ...すいませんしっかり説明するのでその拳をおろして下さい。


 【次元の裂け目】というのは、勇者と魔王の攻撃がぶつかったことにより空いた穴である。ここまではいいね?じゃあ、その中はどうなってると思う?

 ...答えはね、()()()()()()()()()()()()()()()。それこそ、()()()()()()、ね。


 歩き続けること、3日。着いた。結構近かった。ご近所さんだ。


 「へぇ、これが【次元の裂け目】ね...」


 そこには穴があった。不自然に、空間に浮いているように、ポツン、と。きっとこの子も長い間ぼっちだったのであろう。


 あっ、急に親近感が沸いてきた。


 辺り一帯が焼け野原だった事から、初代同士の魔法の威力の凄まじさが伺える。悠久の時を越えて尚、焼け野原なのである。正直、生き物が起こしたとは信じられない。

 【次元の裂け目】を覗いてみる。其処には...

 緑、緑、緑。自然がいっぱいである。ばあちゃんの本によると、【次元の裂け目】の中は違う世界らしい。異世界である。


 ばあちゃん、興味津々で中に入ったそうな。そして、その世界で会った初魔物は...ゴブリン。なのに、とてつもなく強い。そして、レベルが高い。普通のゴブリンなら、レベルは4~6が精々であろう。だが、ここのゴブリンのレベルは40を越えていた。そこでばあちゃんは考えた。 


 「ここ、レベル上げに丁度よくね?」


 ばあちゃん、この森中の魔物を声高らかに笑いながら蹂躙し、ゴブリン達の絶滅の危機にまで追い込んだらしい。まぁ、最終的に飽きたらしく、なんとか絶滅は避けられたようだ。蹂躙された魔物達に、合掌。


 かくして森を抜け、町に出たばあちゃん。第一町人に、この町の名前を聞いてみた。すると、全く知らない名前だった。違う国に出たのかな?と思いつつ、今度は国の名前を聞く。今度も、全く知らない名前だ。興が乗り始めたばあちゃん。最後に、この世界の名前を聞いてみる。......全く知らない名前だった。町人に礼を言い、周りに誰も居ないことを確認し、ばあちゃんは叫んだ。


 「異世界転移キターーーッ!」


 こんなときでも、ばあちゃんは、ばあちゃんだった。ばあちゃん、本でも『この時の興奮は、今でも忘れない』とか書いてる。非常に楽しそうだ。


 なんやかんやあり、結局その町に住み着いたばあちゃん。ばあちゃんは、“レベル上げの鬼”とも言われていたため、この世界でとった行動は唯一つ。


 ---------レベル上げである。


 ヒァッハァァァアアァァァとか言いながら魔物を蹂躙していく年老いた女性。端から見ると、ただの恐怖である。そして付いた2つ名はもはや必然であった。“世紀末魔王”、と...

 この2つ名は、きっと後世まで語り継がれて行くだろう...


 蹂躙に蹂躙を重ね、早3年。ばあちゃん、勇者でも何でもないのに遂にその世界の魔王を倒す。

 勇者の存在価値は無くなったそうだ。可哀想に。


 そして、ばあちゃんもやっと飽きたのか、元の世界に帰った。するとどうだろう。3年もたったとはずなのに、元の世界では、1年しかたっていないという。この事を、ばあちゃんは口外にすることを控えた。仮にも、三年間も過ごした場所である。少し位は愛着も湧く。こんなことが世界に知れ渡れば、きっと向こうの世界はこの世界に政治利用されてしまうかも知れない。だから控えた。そして、自分の血族以外には見つからないように認識阻害魔法も掛けたそうだ。






 「...でもさぁ、本に書いたら同じだと思うよ?」


 この本を読み終えた俺が、最初に発した言葉がこれである。だが、その懸念も分からなくはないので、なんとも言えない。だが、修行の場所には丁度良さそうなので使わせて貰おう。


 ......そして、今に至る。なんか、向こうの魔物は強いらしい。相応の覚悟を決めるとしよう。

 あっ、目標も決めました。俺も魔王倒すまで帰らないことにします。唯、約束の時間があるのことも忘れない。

 えぇーと、ばあちゃんは3年向こうに住んでたけどこっちの世界では1年しか経ってなかった訳だから...

 よし!目標は向こうの世界で9年以内にしよう!これなら、こっちの時間は3年しか経たないはずだ。


 「さぁて、入りますか...」


 【次元の裂け目】に入る。次元を跨いだ瞬間、クラっとしたが耐えられない程ではない。

 一瞬、視界がホワイトアウトし、目を開けると...


 見たこともない、大自然の景色がそこにはあった。

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