16話
無事(?)旅に出ることが出来ました。てっきり勇者の旅立つ時って国を上げて、勇者の凱旋パレードとかやるものだと思ってたけど全然そんなことはなく、国の重鎮や有力貴族達にひっそり見送られました。流石に有力貴族達は洗脳してないので、気配を消して静かにしてました。勿論、誰にも気づかれませんでした。分かっていても少し寂しいです。
「勇者御一行よ、暴虐な魔王を倒して無事に帰って来るのじゃぞ。そのときは...儂の娘ともう一人との結婚を正式に認めてやろう」
「もう一人...?それって、コレットとも...」
「あぁ、帰って来たら、な。じゃから、無事に帰ってくるとよい。儂らは皆で祝いの用意をしてやろうぞ」
「あぁ、あぁぁ。ありがとうございます!絶対に魔王を倒して、この世界に平和をもたらして見せましょう!」
「やったね!テスタ!」
嬉しそうだな、ブラコンよ。俺もこれくらい可愛い妹欲しかったなぁ...そしたらぼっちにならずにすんだのに。あっ、駄目だ。多分エリックの方にいくわ。結局俺はぼっちなのか...
「...ん。父様の期待に応える。そして、テスタと結婚する」
何気に初めてシェミーの声聞いた。結構可愛い声してるじゃん。コミュニケーションの方法は嘲笑ではなかったのか...
「...うん!絶対に勝とう!」
.........なんだこの圧倒的アウェー感。違う家族の団欒を見せつけられてるみたいだ。そしてテスタの婚約者がまた一人増えたそうだ。テスタ君はシスコンなのかな?妹萌えなのかな?まぁ、人の性癖にどうこう言うつもりはない。たださ、俺の前ではやらないでほしいかな。トラウマが...蘇る。
二人の思い人にばっさり振られた記憶が。感情が。そしてトラウマが。
「......では、いってらっしゃい。貴方達に戦神:ナーヴァ様の祝福があらんことを!」
俺が真っ黒な感情に身を委ねている間に王妃っぽい人が場を締めてくれた。戦神ナーヴァか。八つ当たりで今度討伐しにいこうかな。何処にいるのだろう?...なに?神話だから本物はいない?チッ。
アオトが拗ねているなか、テスタ達は馬車に乗り、旅立とうとしている。慌てて乗るアオト。
「えっ?貴方、いましたの?」
「......(気配消してたけど)ずっといたし。これくらい気付けないでこの先大丈夫か?」
イライラしていたので、つい冷たくあたってしまう。はぁ、こんなのだからいつまでも独りなんだろうな。あぁ、駄目だ駄目だ。恐らく“孤独者”のせいで自信がどんどんなくなっていく。少し卑屈過ぎるな。よし、寧ろ開き直ろう。一人のほうがいいじゃないか。生活費だって浮くし、誰にも縛られず自由に生きられる。
あれ?なんでだろう。とっても悲しくなってきた。誰か慰めて!あっ、俺ぼっちだった。ちくせう。
「ふんっ!貴方などに心配させるほど私達は弱くないわ!」
そうだねぇ。ごめんねぇ。とか、適当に相づちを打ちつつ馬車にパッカパッカ揺られ、魔王城に向けて進み始めた。最も、魔王城までは行かずに、その2~3個前の村で下ろして貰う予定だ。
馬車に揺られ、早くも3日が過ぎた。何も無かったね。魔物に襲われることも、盗賊に襲われることも。暇でした。その間何してたかって?俺は極.闇魔法を練習していた。テスタ?ずっとイチャイチャしてましたとも。俺?独りだよ!こんちくしょう!御者さんも苦笑いしてた。
村に着きました。宿を取りましょう。ここんとこ、ずっと馬車で寝てたからなぁ...ふかふかのヘッドで寝たいです。出来れば個室がいいなぁ。馬車でのアレをひたすら見てるだけは本当に地獄でした。え?何を見たかって?ナニだよ。
3人で毎晩毎晩お盛んなんですよ。俺は寝たフリしてたけど、音うるせーんだよ。多分御者さんも起きてたよ?まったく、少しは自重してほしいです。そんな物を見ていた俺は何よりも虚しくなった。嫉妬などするのもおこがましい。結局すべては顔なのか...軽く自己嫌悪に浸ってました。
まったく、魔王討伐に向かうのにそんな色恋にかまけてていいのかね?...すいませんおこがましいとか言ったけど嫉妬してました。
そんな訳で宿にて、個室です。俺だけ。最初、男子部屋と女子部屋に分けようとしたが、ビッチーズに押し負けて結局ぼっちです。従業員には同情の目で見られました。いや、いいんだよ?独り部屋希望だったし。
夜、テスタ&ビッチーズの部屋の前を通ったらギシアンギシアン聞こえてきたんで、部屋の前でわざとらしく咳払いをした途端に音が止んだから思わず笑いそうになった。
朝、起きた。
「知らない天井だ」
言ってみたかっただけだ。気にするな。さて、今日からは歩きで魔王城へ向かう。コレットが馬車はもう嫌だ、と我儘を言ったからだ。どうやら彼女は乗り物に弱いらしい。これをネタに弄って、彼女との距離を一気に縮めようかとも思ったが、100%そんなことはないと思うのでやめといた。
「じゃぁ、出発するよ?」
「おー」
どうやら皆眠そうだ。そりゃそうだろう。あんな遅くまでギシアンしてたんだから。
今日は森を通ります。あの森です。俺が何度もヒャァッハーした森です。あの森を通るのは近道らしい。
「皆、気を引き締めていこう!【暗黒魔境】は危険だけど、僕達が力を合わせれば絶対に大丈夫だ!」
「そうね。私達に出来ないことはないわ!」
「...ほどほどに頑張る」
へぇ~あの森って【暗黒魔境】って言うんだ。...無駄に格好いいな。俺、これから“暗黒魔境のボス”とでも名乗ろうかな。現地の魔物にボスって思われてたらしいから大丈夫だよね?
なんとなく気分がいい。帰郷したからだろうか。この森の案内はボスである俺がやってやろう。
「案内は俺に任せていいぞ。ここは俺のほうが詳しいだろう」
「ハッ、雑魚が口開いてんじゃないわよ。貴方は荷物持ちでもやってなさい」
「...ん。邪魔」
「そもそも君のレベルじゃ、ここの魔物は倒せないだろう。おとなしく僕達に付いてきて」
...忘れてた。レベル偽装してたんだ。それにしても俺への対応が酷すぎる件。そして、孤独者の能力で元から少なかった俺の自信がマイナスメーターを振り切ったもよう。ふっ、どうせ俺なんて...ぶつぶつ
おっと、野生のゴブリンが草むらから飛び出してきた。
「ここのゴブリンは強いぞ!気を付けろ!魔術で叩くぞ!」
「「了解!」」
「“ファイヤーランス”!」
「“ライトバレット”!」
「...“ウォーターブレス”!」
「ヒギャーー!!」
あっ、ゴブさんまだ生きてるじゃん。頑張れ!リア充どもに一泡吹かせてやれ!
そんな応援も虚しく、2波目が来てあっさり倒れるゴブさん。南無さん。
「はぁーー。ここの魔物はゴブリンでも強いわね。」
「あぁ、僕のファイヤーランスに耐えるなんて...」
「...魔力持つかな?」
「「「はぁーー」」」
...コイツら仲いいな。だが、コイツらはこの森のゴブリンの強みが何なのか、全く分かってないな。多分そろそろ来るはずだけど...
「あっ、来た」
「「「えっ?」」」
ズドズドスドズド
「ゴっ、ゴブリンの...群れ、だと!?」
「あの量...勝てないわね」
「...逃げよう」
はぁ、仕方ないな。
「俺が囮になるから、さっさと逃げろ。...死ぬぞ?」
「何バカなことを言ってるんだっ!!アオトも一緒に逃げるぞ!」
「馬鹿なこと言ってんのはお前だ。俺一人が死んだくらいじゃ世界はどうにもならない。だが、お前を失うのは世界の損失と同じだ。魔王に対抗できるのはお前だけなんだ。...という訳で行かせて貰う。お前達、テスタを連れてけ」
魔王程度なら、俺でも何とかなりそうな気はするけどな。まぁ、死ぬ気なんぞさらさらないが。
「...えぇ」
「...まさかお前に助けられるとは...一生の不覚」
暴れるテスタをふたりがかりで止め、引っ張り、森の奥に消えてく3人。さて、場は整った。だが、アオトには自信がない。
あーあ、やっちゃった。僕にはこの大群を殺しきれる訳ないのに。こんなの無理に決まってるよ。ちょっと乗りと勢いで言っちゃった感は否めないけどさ...ていうか、僕に勇者パーティーなんて相応しくないよね。よし、パーティーから抜けよう。そして、死のう。どうせ僕なんて生きてる価値すらないのだから...
自己嫌悪する。それはもう自己嫌悪する。今現在のアオトの自信メーターはマイナスに振り切っているため、自信のなさが半端ではない。
「えぇっと、どうやって抜けるんだ......っ?!」
「グギャァアアァ!!」
ザシュッ!
咄嗟に避けたが、左腕がゴブリンの爪に当り激しく損傷する。
「いってぇぇぇ!」
まぁ、当然と言っちゃ当然だろう。ゴブリンがそんなに待ってくれるわけがない。だが、これはアオトの意地か何かなのだろう。パパッとパーティーから抜ける。
瞬間、アオトの中に形容しがたいものが入ってくる。否、帰ってきた。残酷さが、冷酷さが、そして............
狂気が。
「よぉ、1週間ぶりだなぁ。元気にしてたか?」
刹那、アオトを切り裂かんとしたゴブリンの上半身と下半身が突然別れた。
「今の俺は機嫌が悪いんだ。だから............愉しませてくれっ!!!1週間ぶりの~ヒャァッハー!!」
アオトの八つ当たりが始まった。
このあとめちゃくちゃ殲滅した。
世界の時差を少し変えました。
30年過ごすと向こうは10ヵ月経つ
⬇
9年過ごすと向こうは3年経つ
...30年も過ごすにはネタが足りません...




