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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
6章・I plan on her's plan
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【12-4】

12-4


 これは彼女達の復讐なのだ。例えどんな犠牲を払おうとも、その信念を持って世界をより良いと信じる方へ変えようとするのだ。彼女達に不条理を押し付けた世界へと、そうすることが一番の復讐であったのだ。

 私には分からない。それ程までに突き動かされる衝動を、それを作り出す程の感傷を、私は知らないから。私はそれで良いと思っていた。例えこの世界から、この世界の正解から外れた場所にいようとも、それを嘆く事だということすら知らなかった。


「月夜-つや-ちゃんは世界の秩序を守るの?」


 気づかぬ内に構えていた私の剣を見て衛都楼水希-えとろう みずき-はそう言う。衛都楼水希は何処か寂しそうな声色で、彼女の後ろに居た静玖がその表情を一層険しいものへと変えた。

 私の手の中で、いつもより剣はずっと重たく感じられた。その切っ先を真っ直ぐ向けることが難しくてしょうがなかった。私の向けた剣を前にして、衛都楼水希は動揺すら見せなかった。


「正解から外れた月夜ちゃんが、その構造を維持する事を選ぶの?」


 私はそれを嘆く感情を知らない。故に、彼女のような衝動を分からない。私では衛都楼水希に様にはなれなかった。ただ一つ、私の根底にあるのは犠牲を否定しようとする単純で矮小で他人行儀な感情だけであった。それが私に剣を握らせた。迷う刃を渡してきた。


「いつか、必ずあたし達は世界から迫害される。今よりもずっと。

 言ったよね、月夜ちゃん。あたしは正解の方にいるように見えるって。世界の正解の側だって。これは新しい世界の新しい正解だよ。なのに、今の世界の今の正解を選ぶの? 月夜ちゃんだって、それを不幸だと思うのに」

「でも、今ここで水希さんのやることを見逃したら、世界中が大混乱になる。多くの人が不幸になる」


 けれど、今が幸福であるというわけでもないかもしれない。私はそうであると言い切れない。

 私達は未だそれを知らないのだから。

 それはまるで。知恵の実の味を知らずにいた人の祖の様だ、と私は思った。

 全てのカードが集まった時、この座標は示された。全ての魔術回路のロックを解除する方法が眠った場所を提示した。カードは私達に限定的な魔法の力を貸し与え、その可能性を感じさせた。全ての可能性を得た者だけが、その先の可能性を信じるか否かの判断をすることが許される。これはそういった仕掛けであったのではないだろうか。このカードを作った人間はどの様な人間であるかは分からない。だが、カードは、そして魔法という存在は、まるで私達を試すかのように封じられていた。一部の方法と、一部の人間だけがそれに触れることが出来た。

 かつて魔法は存在していた。けれども今の人間の中の魔術回路はロックがかけられている。そしてカードによって魔法はその存在を世界に取り戻す。

 まるで可能性とその判断を後に託したかの様だった。


「あたしね、月夜ちゃんの事が好きだよ」


 衛都楼水希はそう言った。その胸に優しく手を当てて。

 突如彼女の全身を眩い光が一瞬包むと、直ぐに弾けた。淡い青を基調としたゴシックドレス風の魔防膜を纏った衛都楼水希を見て、私は一気に緊張する。

 衛都楼水希がその頬を紅く染めた。子供のような無邪気な表情を見せる。何かに愛おしく焦がれる様な顔をする。


「やっぱり、あたしはさ。月夜ちゃんの事が好きなんだよ。好きで好きで仕方がない。だから今、こうやって、月夜ちゃんがあたしの前で立ちふさがっていることに高揚を感じてる。

 あたしが世界に対して刃を向ける時、それは誰に知られるわけでもなく終わるのではなく、月夜ちゃんだけでもその全てを知っていてくれることがあたしは嬉しいんだ。だから」

「水希さん。私は」

「だから、あたしを止めるというのなら。あたしは月夜ちゃんを倒して先に行く」


 私は剣を握った。今、この場から世界を変えていく事を私には決められなくて。でもその判断を衛都楼水希に委ねる事すら決められなくて。ただ、それを維持する事を選ぶしか出来なくて。

 そうやって、いつか世界がより良い方へと変わっていくことを信じるしかなくて。私の手では何も変えられず、その手を組むことしか出来なくて。



「月夜ちゃんの正解を見せてよ」




【12枚目・祈りという行為は彼女にとって代替手段になり得るか 完】


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