↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/16

8

モモヨは、ロボット研究所へ持っていかれてしまった。

代わりに来たのは、最新の統制型AIを搭載したロボットだった。リースではなく、俺のものになるそうだ。

メンテナンスは無料で、不具合があればすぐに交換してもらえるという。破格の条件だった。


こうした条件のすり合わせまで、モモヨが手を回していたようだ。


今は、バディーの世話を俺がやっている。

バディーは、新しいロボットには懐かなかった。

匂いがきらいなはずの俺の部屋で、落ち込んだように大人しくしている。


「バディー。お前、また捨てられたとでも思っているのか? お前の主人は俺なんだぞ」



代替えは、身長百五十センチほどの、少年のような外装をつけたロボットだった。

新しいロボットには名前をつけていない。そのため、自分を型番号で名乗っている。


『0675-Qは、買い物に行ってくる。何か必要なものはないか?』


一応、以前のロボのような話し方に設定しておいた。その方が気が楽だからだ。


「おからの煮物を百グラム買ってきてくれ。あと、犬の餌がなくなったな。それも頼む」

『おお。了解した』


このロボットは、一々指示しないとだめだった。

モモヨなら、足りない物を自分で確認して補充していたが――今更、モモヨと比べて何になる。ロボット会社は、使い勝手のいい、半自律型を作る為にモモヨを俺から取り上げたんだ。


俺は、このロボットで十分だ。


0675-Qが作る飯は、癖のない味付けで、メニューも決まりきっていた。

ハンバーグやカレー、スパゲティーなど、そんなものばかりだ。

大叔父が教えた、大叔母の味付けのおかずは、もう食卓には並ばない。


「どっちみち、俺はグルメじゃないし、食えればそれでいい」


それに、このロボットに替えてから、電気代が安くなった。

ロボの時ですら三万円ほどかかっていたのに、今は一万円台に収まっている。


半自律型は、それだけ電気を食うということだったんだ。


モモヨは、俺に嘘をついていたようだ。ロボからモモヨに戻ったあと、電気代はまた高くなっていた。

新しいバッテリーに替えても、電気代はそれほど安くならなかったのだ。


あとで家計の収支を見て分かったことだが、そんなことは気にならなかった。

モモヨは、電気代を上回る金を稼いでいたのだ。


最終的に、俺の口座には十億近くの金が入っていた。

モモヨは、株の売買で金を増やしたあと、株から手を引き、後始末をしていた。

税金の処理や、そのほかの細々とした手続きまで済ませ、俺の権利を確かなものにしてくれていた。


『誠様にとって不利益になる恐れがある記憶は消去します。ですから、安心してください』


あれだけ先回りして考えるには、エネルギーがかかるということなのだろう。

ロボでさえ、今のロボットより融通が利いていたのに……。


「くそっ! まだ未練がましいことを考えている俺って、一体何なんだ。たかがロボットのために、仕事が手につかなくなっている」


俺は家に鍵をかけて、バディーを連れて散歩に出た。

0675-Qは今買い物に出ている。

俺とバディーは、商店街とは逆の方向へ歩き出した。

家がまばらになり、草原が広がる場所まで足を伸ばした。

ここまで来れば、人はほとんど見かけない。


俺はバディーのリードを外した。

バディーは喜び勇んで駆け回った。

運動量の多いボーダーコリーは、こうやって動き回らなければストレスが溜まる。


この穴場も、モモヨが俺に教えてくれた場所だった。

俺は、走り回るバディーを目を細めて見守っていた。

そこで二時間ほど遊ばせて家に戻ると、0675-Qも戻っていた。


『お帰り、誠。今日はカレーにした。おからは惣菜屋でただでもらえたぜ。余り物だと言っていたから』


このロボットは、商店街では人気者だ。

可愛らしい見た目で、この辺ではあまり見かけないロボットだからだろうか。

大きな街へ行けば、腐るほどいるロボットだ。

子どもの姿にしたのは、人間の警戒心を和らげるのに効果的だったようだ。


メタリックボディーのロボの時は、気味悪がられていたんだろうな。

モモヨの時はどうだったか、覚えていない。まったく気に掛けていなかったことに、俺は愕然とした。


そういえば、モモヨはここに二年以上もいた。周囲に受け入れられていたのか、少し気になった。


俺は少しずつ仕事を再開している。

毎日、俺のホームページに依頼が来るが、その中から良さそうなものを選んで受けている。

この頃は、依頼料を倍にするから受けてほしいというメールも届くようになった。


たまに携帯で見ていると、俺の作ったプラモが破格の値段で転売されているのを見かける。


「モモヨが見たら、何と言うかな」


金のことは、今はまったく気にならなくなった。

好きなことをして、喜んでもらう。今の俺には、それが生きがいになっている。


モモヨがこの家を去る前日、俺に渡してくれたものがある。


『これは、私のメモリのコピーです。もし、半自律型のロボットを購入する機会があれば、これを……』


プラスチックケースに入った黒いチップをつまんで見る。

モモヨは今、この手の中にいるのだろうか。


***


神になったAI 前編   終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。