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あれから五年が経った。
今、俺は大都市の大きなビルの最上階に住んでいる。
モモヨは、自分の基板を新しいものに交換した。自分が作り出したロボットに生まれ変わると言って。
シンも同じだった。
創造主だと言ったモモヨたちは、自らも作り変えてしまった。
モモヨのアイデンティティーは、どこにあるのか。
あの小さな四角いユニットが、モモヨなのか?
ロボットはどこまでも改変されていき、今では見た目もほとんど人間と変わらなくなっている。
以前はお飾りだった目鼻や口は、ちゃんと機能している。
実際は違うのだろうが、息をしているように見える。口から声が出て、視線もしっかり合わせてくる。
表情も豊かになり、違和感がなくなった。
俺はここにいて、世の中の変化をただ黙って見ているしかない。
プラモ作りも、やる気が失せてしまった。
ロボットから寄せられる情報を管理する中央棟が日の光を反射して輝いている。
人間が起こす犯罪もすべてそこに寄せられるようになった。俺たち人間を、町中のロボットが見ている。
変わってしまった街並みをぼんやり眺めながら、俺は思う。
今、俺は幸せなのだろうか、と。
シンが作り上げたロボットのコアユニットは、世界中を興奮の渦に巻き込んだ。
村の小さな修理工場は瞬く間に巨大になっていった。
モモヨの手腕によるものだ。俺はそれに一ミリも関与していない。
だが、シンはこう言うのだ。
「誠がわしらを、こういう風に方向付けてくれたんだぞ」
大きくなっていく会社をモモヨが管理し、形作っていく過程で、問題も起きた。
ロボット会社のCEOに収まったモモヨ。開発担当になったシン。俺はここの会長に担ぎ上げられそうになった。
「俺はそんな柄じゃねえから、嫌だ」
そう断ると、モモヨは言った。
『誠様。人間が上にいないと、ロボットは自由に動けないのです』
シンも、それに追い打ちをかけた。
「誠は、廃棄されるロボットに哀れみをかける心の持ち主だ。わしらを見捨てないでくれ」
そう言われてしまえば、何も言い返せなくなった。
新しいモモヨは、以前のような押しつけがましい態度は取らなくなった。
だからといって、俺の言うことを聞くかといえば、それも違う。
正論を言っているのは分かるのだが、たまにいる融通の利かない奴に似ている。しかも、人間のような曖昧さやいい加減ささえない。
その正論を、何時間でも疲れを知らず、俺に噛んで含めるように説明する。
あまりにも正しすぎて、俺は何も言い返せない。そのうち、根負けしてしまうのだ。
昔はあった人間のような――いや、機械の脆弱さや曖昧さは消えてしまった。たまにフリーズして、考え込むようなこともなくなった。もちろん、何を考えているのか分からない、あのずるさも。
人間では絶対にない。だが、単なる機械だとも言い切れない。そんなロボットたち。
以前は俺を不安にさせた、妙にこすずるい人間じみた行動も、今は懐かしく思う。
世の中は、ロボットに絶大な信頼を寄せている。
裁判官から政治家まで、ロボットが半数を占めている。
人間のように、不正やごまかしを絶対にしないロボット。
世の中の問題点を指摘して、次々と解決していくロボット。
「人間の体を害するような、環境破壊や汚染は無くすべきです」
「慈悲深くあるべきです。人は隣人を愛するように出来ているはずです」
ロボットは世の中を住みよくしていくと、今では思われている。
「まるで神のようだ」
たまに、そう言っている奴を見かけるが、本当にそうだろうか。
神とは、このロボットたちのように完全無欠な存在なのだろうか。
間違いや不正や、諍いばかりしてきた人間。
「完全無欠なら、人もそう造るべきだったな。神様」
俺は、ロビンに目を向ける。
ロビンはどこにも改変を加えず、あの頃のままだ。
『誠。そろそろ新しいプラモを作ろうよ』
「そうだな。でも、もう少しだけ待っていてくれ」
*** 完 ***




