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海神の国 アシハラ  作者: KDM
王国編
1/14

海神の声

アシハラ王国の北に浮かぶワタツミ諸島は、神々が最初に降り立った聖なる島々と伝えられていた。

 十五歳の王子ナギは、小舟を操りながら島へ向かっていた。

「本当に神託なんてあるのかな」

 波は穏やかだったが、空はどこか重たい。

 島へ上陸すると、古い鳥居の向こうにある祭壇へ進む。王家の者は十五歳になるとここで神託を受ける決まりだった。

 祭壇の前に立った瞬間だった。

 海風が止んだ。

 鳥の声も消えた。

 静寂の中で、ナギは確かに聞いた。

 ――東より赤き旗が来る。

 ――鉄と炎が国を覆う。

 ――王となる者よ、未来を選べ。

 その声と同時に、目の前へ不思議な光景が広がった。

 燃え上がる港町ミナトツ。

 崩れ落ちるオオカム殿。

 赤い旗を掲げた兵士たち。

 そして、炎の中で立ち尽くす自分自身。

「やめろ!」

 ナギが叫ぶと幻は消えた。

 気がつくと膝をついていた。

 冷たい汗が背中を流れる。

 その時、遠く東の海に黒い影が見えた。

 一隻の船だった。

 見慣れない形の軍船。

 赤い旗が風にはためいている。

 ナギの胸が大きく脈打った。

 神託は幻ではなかったのだ。

 王国アシハラの運命を変える嵐が、今まさに海の向こうから近づいていた。

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