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ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有のマイペースダンジョン配信~  作者: 北乃ゆうひ
第2部 夏

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46/46

046.びっくりボーイなガーロ・トレー(ダイナソーサイズ)


 時間になった。

 待機画面が表示され、画面には『To Listeners. Getting Ready Now. Please wait.』という文章が躍りだすと同時に、BGMが流れ出す。


:待機

:待機

:ジャンジャン

:タイトル的にガーロ食べる感じか

:待機

:討伐関係者が数人混ざる可能性アリだって

:ユニークを食べると聞いて!

:待機待機

:前回の牛タンフルコースの破壊力やばかったもんな

:今度はどうなる

:討伐関係者ってしーちゃんとかかな?

:フウくんも可能性ある

:待機

:大穴 アイアンクロー吊されコンビ

:それは大穴すぎるw

:待機

:まだジャズタイムだ!間に合った!

:前回の料理美味しそうすぎてチャンネル登録して正解だった!

:まだ判断はやくない?

:うん 最近通常配信少なめだし?

:待機待機待機

:え?この配信の通常って何やってるんです・・・?

:フェチネキたちって待機時間は大人しいよな

:だってワ○ルドさんが出てないし

:ASMRとして使える探索配信とASMRとして使えるダン材料理配信?

:そうそう待機画面じゃこのパッションは満たせない

:それもそうか


 コメント欄が盛り上がっている中、音楽が終わり、いつものアニメーションでチャンネル名が貼り付けられて、画面が切り替わる。


:キター

:はじまた

:今日も良いメカクレありがとう


「どうも」


 どこかの山中といった感じの場所で、セイジはいつものように挨拶をする。


「今日はすでにダンジョンのキャンプポイントに来ている」


:やっぱその山ダンジョンか

:今日も良い声ありがとう


「例によってこのダンジョンがどこであるかは、配信の最後に伝えさせてもらう」


:ああいうのは滅多にいないと思うけど自衛大事

:今日はゲストもいるようだし余計にね

:今日も良い喉仏をありがとう


「そして、事前の告知もしていたが、今日食べるユニークを一緒に討伐してくれたり、居合わせたりした面々がゲストにいる」


 セイジが半歩うごくと、ピンクツナギでプリン頭の女性が元気よく前にキラっと挨拶をキメる。


「『お手伝い屋 ヨハンナ』社長! 幡内(ハンナイ) 教子(キョウコ)でっす☆ よろしくー!」 

「……それに振り回されている系錬金術師、刑部(オサカベ) 紫鶴(シヅル)だ」


:やっぱしーちゃんときょーちゃんだ

:二人ともはろー!

:相変わらず美人ですね


「はろはろ~! 美人扱いありがとね~!」


:しーちゃんはえっちな全身ガーターベルトみたいな装備しないの?


「あのベルトで出来た水着のような装備は、強敵を想定した場合の時だけだ。恥ずかしすぎて常時装備なんぞしてられん」


:あ、はい

:まぁそれはそう

:やーい怒られた~!


「あと一応、レザーレースバリアドレスという名称がある。どこ辺りがドレスなのか謎だが」


:あれドレス扱いなの……

:下着や水着扱いの方がまだ理解できる

:まだビキニアーマー扱いの方がマシでは?

:えっちなレザードレスが気になりすぎる アーカイブみるか


 二人とコメント欄のやりとりを見ながら、セイジは内心で――二人の方が馴れてないか? などと思ったが口に出さないことにした。


 横から様子を見ながら、良いタイミングを見計らってセイジは口を挟む。


「二人以外にもまだゲストがいる」

「あ、ども。フウリュウです」


 あまりカメラ馴れしてない様子で、首筋を撫でながら所在なさげに小さく頭をさげて名乗る。


:やっぱりいたかフウちゃん

:すっかりダウナーニキに懐いちゃったか

:フウリュウの可愛さは一部の人に刺さりそう感ある


「え? かわいい? おれが??」


:ネットにも配信にも馴れてない感じ初々しくて好き

:フウくんがいるとワルニキが普段しない声色で喋ってくれるから貴重


「それと、さらに二人。クヌギとタルキだ」

「えっと、クヌギです……お邪魔してます」

「タ、タルキです……お邪魔します……」


:アイアンクローコンビじゃん!

:またアイアンクローされにきたの?

:ガチガチだなぁ

:まさかの大穴キター!?

:そいつらかよ・・・・

:アイアンクロー(された)コンビだ!

:アイアンクローで運搬されてた子らだな

:どういう子たちなの・・・?

:アイアンクローで運搬された。。。。??


 討伐配信を見ていない、あるいは初見だと思われるリスナーたちが困惑しているが、事実であるので敢えてセイジはツッコミを入れない。


「リスナーたちも彼らには色々と思うところはあるだろう。

 ただみんながするだろう懸念やら問題やらの大半は、配信されていないところでだいたい解決している。今回は本当に純粋なゲストだ。

 ネタにならないネガティブな反応は控えて欲しい」


:りょ

:はーい

:わかった

:裏で解決してるならいいや

:おk

:過去の配信でなんかやらかしてた子らなのね

:でも今はもう解決してるならいいじゃん

:思うことはあるけどフェチ萌えで忙しいからどうでもいい

:むしろニキの良いところを引き出してくれるなら許すを越えて許すからガンバレ!


「あれ……? あんまり怒られない?」

「怒られないってより、今後の行い次第って扱いかも……」


:わかってるじゃん

:反省は言葉じゃなくて行動ってことやで!


「そっか、オサカベさんやダウナーさんと同じってコトだな」

「だね。だから、これからはもっと気をつけて探索活動しないとね」


:あ、これはちゃんとできそう

:裏でしーちゃんとニキに何か言われた感じかw

:しーちゃん&ニキの説教はキツそう笑

:ニキシヅからのお説教とかご褒美じゃん


「――とまぁ、そんな感じでゲストが多い。なのでいつも以上に騒がしいと思う。もしこの配信をASMR扱いしている人には申し訳ないと、最初に謝っておく」


:探索込みの時はそんな感じだけど料理メインの時はASMR扱いしてないよ!

:ゲストいる時にASMR扱いは無理なのは知ってるからへーきだよ!


「問題無さそうなら、進めて行こうと思う」


:はーい

:どんな料理がでるか楽しみ


「とりあえず、キャンプ用のテーブルや椅子は並べてある。

 ゲストたちはここで待っていてくれるだけでいい」

「それだけでいいの?」

「不安がる必要はないぞ、フウリュウ少年。主役はあくまでワルド殿だ。

 我々はゲストであり、そもそもがゲストを料理で持て成す配信なワケだからな」


 シヅルがそう告げると、それにセイジもうなずいた。


「彼女の言う通りだ。

 それに、料理へのリアクションもレポーターのように詳細な話や、面白おかしい例えをする必要もない。旨いなら旨い。不味いなら不味い。素直な反応で構わない。

 クヌギもタルキも、フウリュウと一緒に気負わずに座っていろ」

「お、おう」

「うん……」

「はい……」


:最後の気遣いボイス良きです!

:なんだ今のメロい声

:本人無自覚そうだぞ!?

:少年たちの緊張は解けないか~

:でも配信に顔を出すのってそういうもんじゃない?


「さて、料理の前に少しだけSAI(サイ)の話をさせてくれ」


 セイジはカメラに向かってそう言うと、自分の耳にある赤い宝石のピアスに触れた。


「SAIの保管能力は非常に高い。温かい料理などを保管すれば、温かいまま保管しておける。ダンジョン内でしか取り出せないという欠点はあれど、状態をそのまま保存できるというのはかなり破格の性能だ」


:そういやモンスター素材とか入れてても腐らないもんな

:言われてみれば確かにぶっこわれアイテムだわ

:便利使いしてるけど実感ないよなその辺


「なので長時間の仕込みが必要な料理も、ダンジョン内で料理を仕込み、SAIに保存。再びダンジョン内で取り出せば、SAIへとしまった時の状態の料理が出てくるワケだ」


:え?

:ちょ

:それって・・・・


「なので、これを利用すると長時間の調理を必要とする料理を、ゲームのセーブ&ロードの感覚で、間を開けながら作るコトができる」


:あ

:うわー

:サラっとすげぇ話をしたぞこの人!?

:料理人で探索者なのにその発想なかった!!

:どうしてそれを思いつかなかっただろう!?

:そんな使い方アリかよー!


「そして、こんな話をする以上はセーブ&ロードを利用した長時間調理で仕込んであるモノがあるというワケだ」


:何を仕込んできたんだ?

:SAIに関する解説のおかげで饒舌!

:長時間仕込み、網焼きグリルの準備、キャンプ飯、、、まさか!?

:ゲストがいる時は良く喋るよねニキ

:たぶんゲストに説明するのを兼ねてるんだと思う

:しかし何を仕込んだんだ?

:いっぱい喋る=いっぱい声を聞ける=私が幸せ!

:いっぱい喋る=いっぱい喉が動く=私が幸せ!

:いっぱい喋る=カメラを見るメカクレが見れる=私が幸せ!

:フェチネキが相変わらず幸せそうで何よりです

:ゆびー!

:あしー!

:さこつー!

:なんこつー!

:むないたー!

:ふっきーん!

:とりももー!

:なんかフェチネキ増えてね?

:てきとーにコメントしてる愉快犯も混ざってる気がするが・・・


「出すぞ」


:質です!

:今のはダメです!

:ネキたち落ち着け

:なにに反応してんのこの人たち?

:意味分からない純粋な人はずっと純粋なままでいてくれ

:あー……

:触れるな触れるなメシが不味くなる!


 そうして、グリル網の脇にある材料を置いておくテーブルに、なにかいっぱいでてきた。

 様々な部位の肉の塊が多数。他にも鶏肉や豚肉の塊らしきものに加え、太くて長いソーセージまである。


:焦げた肉?

:なんか黒いけど

:マジでバーク形成するほどじっくり火にかけてきたんだ

:焦げじゃないんだよアレ

:さすがダウナーニキ 料理人の俺が戦慄するほどの完璧主義だ

:バークをつけてくるレベルで仕込んできたのか

:あの豚肉の塊も準備万端なんだろうな

:バーク??

:セーブ&ロードできるからこその仕込みだな

:ここで仕上げか

:料理人ニキたちの反応的にあの焦げっぽい黒いのすごいやつなんだな


 そしてそれら肉の塊や、ソーセージをコンロの網の上へとのせていく。


:あああああああああ!!!

:この組み合わせ理解した!気付いた!!!!

:これ最近Warbler(ワーブラー)で見たわ!

:新たなバベルが建って盛り上がってたやつ!!

:海外ニキたちがやってたBBQで見たコトある!!!


「肉だけじゃないぞ」


 セイジはそう言うと、鍋を網の脇においた。

 そこに油をたっぷりと注いでから、()のついたザルをセットする。


「今日は色々と事前準備してきたからな。細切りのジャガイモもこの通りだ」


:うわああああああ

:肉だけでなく!?


 肉を焼き、油を熱している間に、セイジは調味料の準備を始めた。

 ケチャップ、バーベキューソース、ハニーマスタード、マヨネーズ……。


 それらを小皿に人数分用意すると、カトラリーと共にテーブルへと並べていく。


「最終的に真ん中に大皿を置く予定だから、真ん中は開けておいてくれ」


 四人がそれを了解するのを見てから、セイジは肉の元へと戻る。

 それから、油の様子を見ると、無言でジャガイモの細切りをそこへ注いだ。


:ダメだ!コスモバーガー行きたい!

:くそぉどこかでポテト買いに行きたいけど買いに行くとこれが見れない!!


 ジャガイモを揚げている間に、セイジは脇の作業台の上に大きくて四角い木の皿を置く。

 それから、火に掛けている肉を見た。


「これはもう行けるな」


 豚肉と思わしき肉を火から上げると、木の皿の上でほぐしていく。


「あちちち」


 明らかにチカラの入っていない箸とフォークでほぐれてしまうほどの柔らかさのようだ。


:プルドポークだぁぁっぁ

:なんぞそれー!?

:肉が!肉がボロボロに!?!?

:仕込み。。。本気でじっくり火に掛けてきたんだろうなぁ

:やわやわホロホロじゃないですかー!?


 こんもりとプルドポークの山を作り終えたところで、ポテトがもう良い感じになっているのに気づく。


「よし」


 ザルを上げて揚げ油を切り、ジャガイモを網の敷かれたバットにあける。

 余計な油が切れ、粗熱が取れたら、軽く塩を振った。


:作業している時の指!

:ポテトの熱で歪む顔!

:この誘惑マウンテン二つを前に微動だにしないフェチネキすごいな

:何を言っているの?動揺しまくりながらもフェチを堪能してるだけさ!

:うーんさすがフェチネキ


 そして出来上がったフライドポテトは、プルドポークの横でこんもりと山にされる。

 ポテトは多少崩れて皿に広がるがそれも一つの見た目を演出する味になるので、そのままだ。


:プルドポークとポテトの山の時点でやばいんだけど

:なんだこれなんだこれ

:お前らここでノックアウトされてたらこの先持たないぞ?

:あの・・・これから何が始まるんです?

:まだ網の上に塊肉や骨付き肉があるだろ?

:そうだった…


 骨が六本くらい並んだ大きなスペアリブの塊を、セイジは網から取り上げると、木の皿の真ん中に置く。


:ドン!って効果音が見える

:なぁにあれぇ?


 つぎに熱で膨張し、やや厚めの皮すらも引き裂いて肉が顔をだしている極太ソーセージを六本――コメント()わくの誘惑マウンテンの周囲に配置。


:あーあーあー!

:これはこれは語彙力がなくなっていく・・・

:なんだこのわんぱくな一皿は……

:バン!って効果音が見える。。。


 次に、すでに置かれているスペアリブにもたれかかるように、チキングリルが置かれる。

 最後に残った肉の塊は、一度作業台の上に移された。


「さて――上手くいってればいいんだが……」


 小さく独りごちてから、セイジがゆっくりと包丁を入れていく。


:わ、わぁ・・・

:するっと包丁が入ってる

:柔らかすぎるだろ……

:さすがダウナーニキだ良い仕事している

:包丁を握る指!!

:純粋に料理人としてうちにスカウトしたいな

:このレベルのテキサスステーキは滅多に食えないんだよなぁ

:店の数も少ないしね

:前髪から覗く真剣な眼差し!!!

:料理人ニキたちすら感動してる。。。


「よし。ブリスケットステーキ、ちゃんと出来てるな」


:心なし嬉しそうな声頂きました!

(ささや)くような歓喜(かんき)ボイスに歓喜です!!!!!

:見ろよあの断面

:美しさすらある・・・


 スライスしたブリスケットステーキも木皿の上に並べていった。


:に、肉盛りプレート……だとォッ!?

:いつかは食べてみたい浪漫(ロマン)盛りそのものじゃん!


 さらに、家で用意してきたコールスローサラダを小さめの器に盛ったモノを用意して、木皿の(すみ)に置く。


 さらにさらに、家で用意してきたマッシュポテトも木皿に開いている隅へ盛る。

 家で焼いてきたグリル野菜で彩りも添えた。


 最後にプルドポークの上に軽くバーベキューソースをかけて、見た目の華やかさをアップさせる。


「――これでよし」


:お、恐ろしい・・・

:なんて恐ろしいモンを作ってるんだワルニキ!!!!


「結構な重量になったな……ダンジョンの中じゃなかったら困ってたかもしれん」


 そんなボヤきを口にしながら、木皿をテーブルの元へと運んで追いた。


:ゲストみんな度肝抜かれてるやん

:みんな目がまんまるだ


「待たせた。名付けるなら、びっくりボーイなガーロ・トレー、完成だ」


 まさにテキサススタイルの、大きなBBQプレートが、テーブルの真ん中に堂々と(そび)え立つ。


 それは、コメント欄ではないが、まさに有名なマンガの『ドン!』という書き文字を幻視してしまいそうな迫力を持っていた。



 お好きな『ドン!』でご想像ください



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そうか、ダンジョンの中だから最悪途中で満腹になっても味を落とさず保管できるのか。 無理せずワンパク料理堪能できるとか最高か?
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