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ダウナー・ジャジー・シーカーズ~テンション低めの気怠げお兄さんによる飯テロ有のマイペースダンジョン配信~  作者: 北乃ゆうひ
第2部 夏

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39/41

039.タン元タンタン トロタンタン

明日は更新できそうにないので、本日更新

え?予約投稿?なんか予約投稿って味気なくない?

……ってなワケで予約じゃなくて普通に投稿です。


 ドローンのカメラにタンシチューのタンを見せつけていたツカサが、そのタンを口に運ぶ。


「うっっま!? 柔らかすぎるだろこれ……!!」


:絶対うまいやつの反応だ!

:面白リアクション系もいいけどこういうのもシンプルでいいよな


「タンもそうだけどルーのしっかりした風味もいいな。赤ワイン欲しくなるー!」

「タンと香味野菜を赤ワインで煮込んでから、デミグラスソースを加えてさらに煮込んだんだが――もぐ……ああ。良い感じになってて良かった」

「くあー……! こういうの食わされるとお前と友達で良かった-! ってなるわー!」

大袈裟(おおげさ)だな」


:この反応の差よw

:絶対ツカサくんは本気だろうけどなー

:そのデミグラス自家製なんじゃなかろうか

:どうすんだこれ


「このぷるぷるの部分も食べやすい……! 手が止まらん……! っていうかさ……!」

「――ああ。気づいたか、ツカサ」

「気づかない方がありえねぇだろ……」


:バクバク食べてる手が止まったけどどうした?

:なんだ?何に気づいた?

:やはり気づくか二人なら

:料理や美味しいモノ好きなら絶対にね

:コメに経験者がいるのか!?

:最初っからいる気がする

:何の経験者の話だよ!


「このタン……異様に旨くね? 味の濃いタン下だからってレベルじゃねーぞ」

「ああ。料理として旨く出来たとは思ったが、そんな次元じゃないな……」

「お前の料理の腕前を加味しても、異様だぞこれ。こんなの食ったらもう他のタンいけなくなるぞ……」


:え?そんなに?

:ネームドやはぐれの肉は旨いんだよ

:通常種とは段違いなんだよね味

:経験者の補足が怖ぇぇぇ


「煮込まれてホロホロになっているのに、旨味と脂はしっかりしているっつーか……」

「ホロホロに崩れた繊維の一本一本から旨味を感じるとでも言えば良いのか……」

「ぷるぷるのゼラチン質のところなんて旨味爆弾だぞこれ。脂っこかったり噛み切り辛かったりする部位だろうにずっと噛んでたくなるくらいだ」

「ルーの方にも旨味が溶け込んでるのに、タンの旨味がいっさい薄まってない感じ、すごいよな……」


:想像できねー!

:さっきまでのハイテンションとは裏腹に二人がガチシリアスな顔してる・・・・

:一度料理したことあるけど素材良すぎて料理するの怖くなるんだよな

:そんなレベルなのか。。。


「おっと、そろそろ焼きの方をひっくり返さないと」

「しくじるなよー、節制」

「分かってる。このタンシチューを食べて分かった。これは焼きをミスれない」

「いつもの悪くないは出ないのか?」

「……これに関しては悪くないどころじゃない、ふつうに旨いだろ……」

「うあ。めずらしー……基本何であっても悪くないが最上位評価なお前が、旨いとハッキリ口にするなんて……」


:やばい

:え?そんな?

:確かに配信だと悪くないが最上位っぽい感じだったな

:それ以外の評価はあんまり口にしてなかったのは確かだ


「そう言われると、そうかもな……」


 自分でも驚いている様子で、セイジはウーロン茶を口にした。

 それを見て、ツカサもウーロン茶を口に運ぶ。


 とりあえず冷たいお茶を口にして口の中だけでなく、テンションもクールダウンさせようと二人とも考えたようだ。


 それから、焼けるのを待つ間に、麦とろも口に入れる。

 肉と肉の間に食べると、とろろに包まれた米がするりと喉の奥に流れていく感覚が、なんだか飲み物のように感じる。


:いや飲み物感覚で麦とろ行ってて草

:カレーじゃないんだからさ

:いやカレーも飲み物じゃないだろ笑


「串はもういけそうだな」


 ホットプレートからタン串を取りあげて、セイジはツカサの皿と自分の皿に一本ずつ置いた。


「ついにか」


:ついにか

:きたな

:どんなリアクションを見れるのか

:とりあえず牛タン串買ってきた

:行動力の化身がいるなw


「ちなみに――だが、この串は上から、タン先、タン中、タン元のスライスとなっている」

「一本で全ての部位を楽しめるホスピタリティ……!」


:一本で舌一本を楽しめるのいいな

:なんて贅沢な!


「軽く塩は振ってあるが、それ以外の味付けはない。

 調味料も色々揃えてあるから、好きな食べ方で食べてくれ」

「おう」


 そうして、二人は示し合わせたように、最初の一口は何も付けずにいくことにした。

 一番上のタン先を半分ほどかぶりついて、噛み千切る。


「うお!? しっかり歯ごたえはあるのに柔らかくて歯切れがいい!?」

「タン下に次いで臭みが出やすい部位だと思うが、まったく感じないな」


:今更だけどタンにも部位があるんだな

:根元に近いほど柔らかくなるんだよ

:タン先は硬めで上質なタン以外だとあんま焼きで食べないイメージあるな

:でも焼きでいけるタン先は焼き上がり香ばしくてうまいよな

:シチューにしてたタン下はニキも言ってたけどタン先より硬めだし血管や筋が多いから旨味は強いけど焼きとかに向かないんだ

:もちろん良いタンはタン下も焼きでいけるぞ

:いわゆる牛タンとしてスーパーで売られてるのはタン中メインだっけ

:そうそう焼肉屋で出てくる薄切りタンはだいたいタン中だね

:コメント欄の有識者たちの解説がすごすぎる

:っていうか今更だけど普段より同接数が倍ぐらいある?

:ツカサ効果だけじゃなくて料理効果とかもあるのかな?


「旨すぎて、勢いでタン先食べちまったな……。何もつけなかった」

「薄塩でも旨味が強いから気にせずいけたな。すごいなネームド肉……」


:美味しく食べてたかと思えば戦慄(せんりつ)しだした

:忙しいな二人ともw

:いや分かるネームド食材はマジやばい


「次はタン中か……」

「先であれだったから。覚悟がいそうだ」


:戦闘中のような緊張感ある顔すんなw

:わかるー!ネームド料理食べると覚悟が必要な気がしてくるんだよー

:覚悟が必要な食べ物ってなに?


「いざ!」


 二人は声を唱和させると、意を決してタン中に噛みつく。


 当然タン先よりも柔らかく、けれど歯ごたえがないワケではない絶妙なコリコリ感。

 あっさりとした旨味のあとで、余韻のようにタンの風味と脂の旨味が溶け出てくる。


「うめー! ビールか日本酒あおりてぇ!」

「わかる」


 ツカサの叫びに同意しながら、セイジは串から半分囓ったタン中を外し、白髪ネギのナムルを乗せ、軽くレモン汁を振りかけた。


「あ、それオレもやる!」


 それを見ていたツカサも真似して白髪ネギを乗せ、レモン汁をかけた。

 そして、それを口に運び――


「くあー! ダメだろこれ! 何だよこれ! うわー!」

「ああ……これは反則のような味わいだ。本気で酒が欲しくなってきた」

「ワ○ルド――配信中は飲まねぇというおれらのマイルール……破るか?」

「やめろ。そんな誘惑をするな……破りたくなる……!」


:冷静な○ニキが本気で戸惑ってる

:誘惑レベルが高すぎる

:というか二人ともそんなルール作ってたんだ笑


「とりあえず落ち着けツカサ。まだタン元がある」

「まだもなにもタン元こそが本命中の本命だろうが!」


:それはそう

:一番柔らかくて脂乗ってるところだからな


「ちなみになんだが、ツカサ」

「なんだ?」

「このタン元――一般的な牛であれば、一頭から一枚しかしかとれないと言われる部位だ」

「待て待て待て! それってつまり……」

「ああ。タン元の中の英雄タン。つまり完全な根元部分。『焼肉居酒屋くねくね』では上トロタンという名称で数量限定メニューになっている部位だ!」

「お前……ッ!?」


:とりあえずすごい部位だってのは分かった

:ニキが恐ろしいコトを言い始めた

:でも焼きの表面からわかる脂の溶け具合とか霜降り感みたいのやばい

:そもそもタン元自体がトロタンと言われたりもするのに上トロだなんて・・・・


「どうやら腹を括って食べなきゃな……」

「その通りだ」


:シリアス顔で何言ってるのこの人たち

:シリアス顔カッコいいんだけど話の内容は肉の話である

:わかる シリアス顔するくらいの覚悟が必要

:さっきから語られる経験者たちの言う覚悟ってなんなの・・・・


 そうして二人は、最後のタンにかぶりつき――


「おお……」

「すごいな……」


 ――感極まったかのように声を漏らした。


:いい吐息ボイス頂きました!

:食べてる音だけASMR切り抜きできる人いませんかー!


 柔らかながらも確かな弾力のある肉が弾けて、タンの旨味が(あふ)れでてくる。

 臭みは一切なく、噛む度に芳醇(ほうじゅん)なタンの旨味が押し寄せてくるようだ。


「タン中があっさりさっぱりしたタンの旨味溢れる部位だったけど、これはどっしりしっかりとしたタンの旨味を感じるな……」

「ああ。初めてくねくねで上トロタン食べた時以上の衝撃的な味だ」


 さっきのようなハイテンションとは違う。

 この極上のタンの味を逃すものかと、自分たちの(タン)に意識を裂くかのような、静かな言葉。


:言葉数が少なくなるのかえってやばいな

:急にツカサも静かになるやん

:黙り込むほどの旨さってワケか気になるー!


 無言のまま二人はタン元を完食すると、意図せず揃ってウーロン茶を手に取って、一気に呷った。


「くあー! これがウーロンハイだったらなー!」

「気持ちは分かる。だが、ウーロン茶なのに最高の気分にはなった。旨味が洗い流される感じの余韻がすごい」

「それはそう! サイコー!」


:リアクションがずるいんだよ二人とも!

:完全に酒飲みのリアクションだこれー!ww

:二人の反応の真の理解はネームド料理したコトある人にしかできないかも


「串を食べてる間にステーキも焼けた。適当に切り分けていいか」

「もちろん」


 マンゴーカットしたステーキを一口サイズ程度に切り分けて、半分をツカサの皿に乗せる。


「この切り方、なんか贅沢な感じがして好きなんだよなぁ!」


 嬉しそうな顔をしながら、ツカサはマンゴーカット特有の谷間部分に白髪ネギのナムルを挟んで、それを口に運んだ。


「やっぱうめぇ! 歯ごたえしっかりなのに歯触り良くて顎が疲れる感じがないのがいい! 噛めば噛むほど旨いのもいいよな!」

「本当に、タンらしい歯ごたえがありながら食べやすい歯触りのバランスがすごいな。

 さて厚切り串、ステーキと来たから次は薄切りを焼こうか」

「おう。頼む!」


:もしかせんでもニキたち配信忘れ始めてない?

:確かにその気配はするw


 実際コメント欄の言う通り、タン中を食べた辺りから配信の意識は薄くなっている。それでも酒を飲まない理性だけは残っていたのだが。


 結局、テーブルに用意されたタンを食べ切るまで、ほぼ配信であることを忘れたまま二人の宴は進み――


「……あー、みんなゴメン。途中から配信だったの忘れかけてたわ……」

「こちらもすまない。あまりに衝撃的な味だったから、オレも忘れかけていた」


:だと思ったw

:しかし美味しそうだった笑

:あまりにも腹減る配信だった

:二人が楽しそうだったので何よりです

:楽しそうに食べてるだけで楽しかったからヨシ

:ニキツカ派もツカニキ派も満足だったのは間違いなし

:オシャレ配信では見られないツカサくん見れて楽しかったよ

:食べる指先

:漏れる感嘆(かんたん)咀嚼音(そしゃくおん)

:隠れる瞳に揺れる前髪

嚥下(えんげ)に動く喉仏

:フェチネキ勢としては大変満足でした

:何今の息の合ったコメント

:だんだんフェチネキたちが怖くなってきたな

:フェチネキ仲間が増えたしね

:増えちゃったかぁ……


「まぁなんだリスナーが満足だったなら、良いんじゃね? な?」

「そうだな。特に問題がなかったなら、それでいいか」


 そうして二人が一緒に小さく笑ったところで、コメント欄が湧いた。


「あー……まぁ女性リスナー多いらしいしな、こいつの配信」

「それが今のコメントに何か意味が?」

「気にすんな。別に悪いコトではないだろうよ」

「そうか」


:よく分かってないニキかわいい

:まぁ分からなくても問題はないし

:節制さんにはそのままでいて欲しい


「ともあれ、今日の配信はここまでだ。途中から無視してしまって申し訳なかったが、楽しんで貰えたのであれば幸いだ」

「おれとワ○ルド。どっちのチャンネルも気になったようであれば、それぞれのチャンネルを登録してもらえると嬉しい」

「それでは」

「またなー!」


:乙

:おつかれー

:美味しそうだったー

:乙乙

:また食事コラボしてほしい!

:お疲れ様でした

:たのしかったー



===この配信は終了しました===



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絶対この二人この後お酒飲んでそう
お腹が減ってないのに減って、鳴りました…
次の出張では牛タン不可避だわ。 でもこのコースレベルで食おうとしたらいくらになるんだw
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