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50,学校へ行こう!!


 ――新築・ラグナロク学園。


 ある善神の最高にハイな暴走により全焼してしまったラグナロク学園の跡地に建てられた、ラグナロク学園セカンドジェネレーション――要は二代目である。


 初代と外観や規模に差異は無い。

 使用されている木材も同じく、星戒樹ウグドラから切り出したものだ。


 その廊下を、一柱の少女が疾走していた。

 黒いつば広帽子(ソンバーロ)を被り、セーラー服の上から羽織ったメッシュ生地のゆったり外套(ポンチョッツォ)の裾からは細長い黒尻尾が零れている。


「もう居残り補習は嫌なのデス! 放課後は遊ぶための時間だとワタシは聞いているのデス!! アリスチャンたちとエクストリーム缶蹴りをするのデスゥ!! ラフムラハムにも綺麗な泥団子を作れる泥穴場を紹介してもらう約束してるデスよワタシは!!」


 彼女の名はデスメローア・チクシュルウプ。

 もっとも、本体ではなく疑似的な仮身体アヴァターラのようなものだが。


 そんなデスメローアの前方で、空間が歪む。


「それは、きちんと授業を受けた子のセリフだからね」


 空間の歪みから現れたのは、黒ずくめコーデに身を包んだ灰色肌のショタ――ゼロアスター・クランの悪神大将、アンリマン。現在は【ラグナロク学園・道徳科目特別講師】と言う肩書を持っている。


「デス!? ま、周り込まれた……! デスが、甘く見たデスね! このラグナロク学園セカジェネは言うなればワタシの一部、周り込まれた所で逃げ道はいくらでも――」

「誠実に訊こう。何のために当方がいると思っている?」


 どこからか聞こえた声と共に辺りが炎に包まれ、景色が一変。

 そこらで炎が燻る極熱の法廷が出現する。


「げぇ!? 閉じ込められたデス!? ぐにに……アナタ、今日は非番のはずでは!?」

「誠実に答えよう。お前がおとなしくしているビジョンが浮かばなかったのでな。自己判断で出勤してきたまでだ」


 裁判長席に座る紅眼鏡の神――ゼロアスター・クランの善神、アシャワシャ。

 その手に持つ紅鋼の天秤が創り出す超次元法廷は主神クラスでも自由に出入りする事はできない。


 ちなみにアシャワシャもアンリマンと同じく道徳科目の特別講師である。


「まったく……誠実に呆れるぞ。授業中の居眠り、補習の脱走、更には廊下を走る……その尻、よほど要らないと見える」

「要らない訳がないデス! そして御察しの通りワタシのお尻はもう限界なのデス、これ以上のお灸はまじヤバいなのデス! 何かこの人形体に細工されてダメージがもろに本体へフィードバックされるようになってるデスし……趣味が悪い、そう、悪い趣味デスこれは!」

「いや、悪いのはキミだからね? 居眠りも脱走も廊下ダッシュも悪い事だって既に教えてるからもう『それが悪い事だなんて知りませんでシタ、フーレイア直伝のてへぺろ!!』も通用しないからね?」


 裁判官席に座っていたアンリマンが頬杖を突きながらやれやれと溜息。


 ――ゼロアスター・クランは、すべての神々に【善悪の規範を見せつけ、教師・反面教師を務める】と言う理念の元、この星に善悪の概念を定めたクランである。

 善悪の概念を知らなかったが故に大騒ぎを起こしたデスメローアの講師に、これ以上の適任はいない、と言う抜擢だ。普段は他の神々との交流を渋るアンリマンだが「そう言う事なら……」とデスメローアの教育に関わる神々とそれなりに交流するようになり、どっかの紅眼鏡はますます満足しているとか。


 それはさておき。

 まぁ、デスメローアもラグナロク学園に通い善悪など基本的な教育を受ける事は了承したが……やはりまだ精神年齢が子供。こんな感じで補習からの脱走は恒例行事に近かった。


「おのれゼロアスターの神々……ワタシをイジめるのがそんなに楽しいデスか! 変態サディストペドフィリア集団!!」

「……誠実に訊こう。どこでそんな言葉を覚えた?」

「イシュルナンナが教えてくれたデス」

「……あの女神も後で説教が必要だね」

「そう言えばこの話をした後、イシュルナンナはエレシュルカルラに耳を引っ張られてどっか連れて行かれたデスね」

「既に説教済みだったか」


 イシュルナンナとエレシュルカルラは以前は諸事情あって互いに距離を取り合っていたが、デスメローア教育係として共に過ごす時間が増えた事で、ありふれた姉妹関係になりつつあるようだ。

 それは微笑ましい限りだが……アンリマンとアシャワシャは共に頷いて、判決を下す。


「デスメローア。誠実に判決を言い渡す。諸々をひっくるめ、補習期間を一か月延長。それから言うまでもないが、お尻には熱々のお灸をくれてやる」

「デスーーーーーーー!?」



   ◆



「む? 今の悲鳴は……デスメローアじゃな」


 本日の授業を終えて校門へ向かって歩いておると、校舎の方から愉快な悲鳴が。

 あやつめ、まーた補習から逃げ出そうとしてアシャワシャに捕まったか。


 早々には懲りぬ所も子供らしいのじゃ。まぁ、子供は褒められ叱られを繰り返して成長するもんじゃし。今は叱られフェイズに偏っておるだけで、あやつもいずれは………………多分、良い子になるじゃろ。おそらく。信じようメイビー。


 ……最初は確信を以て連れて来たのじゃが。こう、毎日のように脱走兵の断末魔めいた悲鳴を聞かされておるとなぁ。マジで頼むぞデスメローアよ。


「にゃははは。もう何か放課後の風物詩みたいになってるにゃあ」


 ワシを見送ろうとついて来ておったフレアが「いやぁ、本当にあの子はやんちゃ過ぎてとんでもないよ……」と少々遠い目をしながら笑っておる。


「でもまぁ、元々ボクたちがやらなきゃいけない事だったんだ。アリスちゃんがデスっちを説得してくれなかったら……きっと、あの事件はただの悲劇で終わってしまったと思う。本当にありがとう」

「どういたしましてなのじゃ」

「……それから、本当にごめんね。せっかくボクたちを信じて来てくれたのに、事件に巻き込んで、しかも解決までさせちゃって……」

「その件はもう良いと言っておるじゃろう」


 相当ひきずっておるのか、この話題に及ぶ度に謝ってくる。

 気にするな、と言えるような話ではないが……もう済んだ事じゃろうに。


「それだけじゃないよ。本当にオッディはもう!」

「あー……」


 オッディなぁ。

 デスメローアの説得後、保留しておった強い鶏(ヴィゾブニル)によるレーヴァティンに関する証言について問い詰めた所――今回のイベントを利用して「紛失してしまったレーヴァティンを回収する」と言う裏の企てがあった事が発覚。それを知ったフレアたちが修羅の如く怒り、オッディは罰としてしばらく星戒樹ウグドラの枝に縄で宙吊りにされておるらしい。


 神とは言え全能では無い以上、失敗はするものじゃろうから紛失しただけならまだしもな。

 叱られるのが嫌だからコッソリ回収しようとしておった……と言うのが悪手じゃったな。


「世の中、悪い事はできぬようになっておるな」

「そだね。アリスちゃんみたいに正直で素直な良い子が一番だに! 良い子には良いほっぺが宿る!」

「隙あらば頬をむにむにするのやめれ」


 まったく……勇者と言いこやつと言い、ワシの頬を何じゃと。

 ああ、そうじゃ。勇者と言えば……。


「フレアよ。貴様に頼みたい事があってな」

「にゃ? 良いよ! アリスちゃんのお願いなら何でも聞いちゃ――」

「下界に帰りたいのじゃが――ってフレア!?」


 フレアがすんごい勢いで膝から崩れ落ちた!?


「だ、大丈夫か貴様……」

「ぁ、アリスちゃん……やっぱり、怒ってる……? もう天界は嫌……? ボクの事も嫌いですか……?」

「はぁ?」


 何じゃいきなり、何の話……ああ。


「勘違いするな。天界に嫌気が差したとかではないのじゃ」


 と言うか、父上母上と共に暮らせるこの場所に不満なぞある訳が無かろう。


「例の事件の後、勇者たちが下界に帰る際に言われておってな。月に一度くらいは下界にも顔を出せ、と」

「あ、なるほどに。里帰りかぁ……心臓が消えて無くなるかと思ったにゃあ……はぁ……何か涙出てきた……」

「泣くほどか……」


 どんだけショックだったのじゃ……こやつもワシに大嫌いと言われたら吹っ飛んで壁に刺さる勢っぽいな……とりあえず、スカートのポッケからハンカチを出してフレアの涙を拭う。


「ともかく、そう言う訳じゃ。頼めるか?」


 本来はワシを連れて来たオッディに頼むつもりじゃったが……今、あやつは星戒樹ウグドラに吊るされておるからな。


「うん、大丈夫だよ。任せて欲しいにゃあ!!」

「うむ。ではよろしく頼む」


 ちょうど良いし、ラグナロク学園およびラグナロク学園セカンドジェネレーションで学んだ学校の在り方も一度、下界でまとめてみよう。まぁ、ちょいちょいデーウスが教室を壊して授業終了するため、学べた事は多くないが……ワシの強制休暇期間はまだまだ有り余っておるしな。まだまだこれからじゃ。


 しばらくは世話になるぞ、ラグナロク学園セカンドジェネレーション。




ご愛読、ありがとうございました!

第二部【極熱青春神話 神立・ラグナロク学園】これにて完結です。


第三部については第一部~第二部同様、

開始までに少々お時間を頂戴いたします。

またしても間を空けてしまう事、大変申し訳無い……。


そのうちまたぬるっと、かつにゅれっと再開しますので

その時はまたまたよろしくお願い致します!



【★第三部予告★】


――勇者が誘拐された!?


ラグナロク学園セカジェネの休日を利用し下界に戻ったアリスに、とんでもない一報!

勇者ユリーシアが何者かに誘拐されてしまったのだと言う!!


神々の力を借り、その行方を探った結果は――銀河の果てぇ!?


「一体どこの何者に誘拐されたんじゃあやつは!?」


とにかく助けに行くしかない!

アリスは神々に宇宙航行艦【運命のダイスロール号】を用意してもらう事に。


そして、冒険のお供として天界から遣わされたのは――


「よう、【ヴァリ】の名を持つ坊主……いや、嬢ちゃん? ……どっち?」

「ワシも正直、未だにどっちなのかよく分からぬ」

「まぁ、良いや。俺たちゃ兄弟みてぇなモンだ。仲良くしようぜ弟……妹?」

「いやだから分からんて」

「……弟妹おもうと!!」

「もうそれで良いから早く行くぞ」


さぁ、誘拐されてしまった勇者を救出すべく――

銀河ギャラクシーの果て、【惑星アイオーン】を目指して大冒険オデッセイ!!


第三部【混沌銀河歴遊 スーパーアリスブラザース・ギャラクシー★オデッセイ】!


いつになるかわからないけど乞うご期待!!


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