水鈴の姫8
水鈴の姫8
「へぇーあの冷血鬼が助けてくれたんだ」
リアムさんが去って行った後、二人だけ残った私ともう見えないリアムさんの背中に向かって思いっきり舌を出していたディランくんは一緒にギルさんの店、コックハに向かっていた。
その間、私がリアムさんに助けられた話にディランくんは意外な、気に入らない顔をした。
「何もなくてよかったよ。それにしても、やっぱこんなに騒ぐと変な奴も出てくるもんだな。もっと見回り増やさないと」
「そう言えば、人足りないんだよね?」
「そうなんだよ。ギルの奴相変わらず断り続けてるし。もうすぐ水祭だというのにさ。だから水羽も説得手伝ってくれねェ?これやっから!」
私と話しながら随分人達が並んでる出店に止まってお店の人から何かを貰ってはそれを私に渡した。
それは水玉のように透明で、天気が良い今日は宝石の様に輝いて、言葉にできないほど、とても綺麗だった。そして、水玉の上に茶色の粉がふりかけてある。
「すごく綺麗!!」
「だろ?これこそファヴール名産の水玉飴!味も色々あるけど、俺はこのキャラメル味が一番好きなんだ。食べてみろよ」
一つ手で取って口の中に入れる。食感はまるで飴の様に滑らかな一方、アイスのように冷たくて気持ちいい。キャラメルの味も絶妙に合っている。
「ん〜!美味しい!こんなに美味しい物初めて食べます!」
あんまりの美味しいさに自然と口から絶賛の言葉が溢れてしまった。生まれて初めてこんなに美味しい物を食べたと思うくらいに。
私の反応に満足したのか、彼は嬉しそうだった。
「ファヴールの水はどの国よりも澄んでいるから、その水で作った水玉飴は絶品なんだ。キャラメル以外にもイチゴやオレンジ、色んな味が有るぞ」
「へーどれも美味しそう!」
見本として店の前に並んである水玉飴はどれも色鮮やかで魅力できだった。
「まあ、最近水の量が減って出店も少なくなってるけど」
ディランくんの言葉に少し前、ギルさんが話してくれた水鈴の姫を思い出した。
「ギルさんに聞いた話だけど、初代の水鈴の姫は水を操れたんだよね?今の水鈴の姫にその力は無いの?」
私の質問に困った表情をする彼は直ぐには答えてくれなく、言葉を慎重に選んでいるようだった。
「……初代の水鈴の姫は昔話みたいなものなんだ。前々回の水鈴の姫はほんの米粒くらいなら操れたって噂だけど、初代以外はほとんどにその力は無いんだ」
「……そう、なんだ」
夢の中で水が生き物みたいに動き、私を飲み込んだ時を思い出す。
初代の水鈴の姫だけが水を操れたなら、夢の中の女の子はもしかして……。
「さあ、水羽もう行くぞ。俺もまだ仕事残ってるんだ」
「あっ、うん!」
夢の少女の事を考える私の肩をトントンと叩き、また人混みへと進んで行くディランくんの背中を急いで追いかけて行った。
「只今戻りました……」
店の前でディランくんと別れ、ヘトヘトになって店へ帰ってける私をお客さんに料理を運んでいるギルさんを発見した。
「随分遅くなったな。その様子じゃ海斗も見つかってなさそうだな。……?」
私を観察していたギルさんの眉毛が下がる。
「コーヒー豆はどうした?」
「!!!」
はっと自分の両手を見ると何も無い。それもそうだと思う。何せサイの店には足一歩も踏み入れてないのだから。
私は半分地面に座り込む形で涙目になる、
「すいません……忘れました」
あのフードで顔を隠した男と言い、そしてリアムさんと言い、予測外のことが起きてすっかり忘れてしまった自分を恨んでしまう。
本当、今日は最悪な日だった。
そう今日の日記に書き込んだ私だった。




