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水鈴の姫  作者: キャンティ
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水鈴の姫11








水鈴の姫11








「おーい!ゆうーー!!!」



サイと別れてギルさんと水祭の色んな所を回った。

流石、水の都と呼ばれるほどあって出店は水に関するものが多かった。その全てが不思議で目を輝かせながら歩いて数時間、アウトドア派の私に限界がきた時、前の方から器用に人混みを避けてこっちへと向かって来る見慣れた金髪の少年が居た。



「ディランくん!」


「おう!水祭楽しんでいるか?ってギルも一緒かよ」



いつもの元気そうな笑顔がギルさんを見た瞬間綺麗に消え、尻尾と耳がピンと立つ。

一目で怒っていることが分かるくらいに。



「俺があんなにお願いしても断ったくせに、水羽と一緒に祭り回って楽しいか?」


「ああ、楽しいな」



ギルさんの余裕そうな態度にこいつと拳を握りしめ、怒りを抑えているディランくんの後ろから知らない人が近づいて来た。



「隊長、急に何処かに行ってしまったのでびっくりしましたよ」


「ああ、ごめん。俺、こいらとちょっと話していくからさ、先に行って準備してくれるか」


「分かりました。それではまた後で」



青と白が混ざった水鈴の姫親衛隊の制服を着ている人狼ウルフ族の彼はディランくんの部下なのだろう。

彼は私を見てからギルさんに目線を移すと驚き、慌てて敬礼をした。そして、何処かへと行ってしまう。


そう言えば、ギルさんは昔、水鈴の姫の親衛隊総隊長だったよね。いつ辞めたんだろう。何で辞めてコックハを始めたのかな?


私が疑問を抱いて口を開こうと思った時、私より先にギルさんが話を始めた。



「おまえ、本当は忙しくないんだろ」


「忙しいに決まってるだろ!今までずっと見回りやってたし。水祭が忙しいのお前が一番分かってるだろうが!」


「じゃあ、早く行け」


「水羽と話したらすぐ行きます!」



べーと舌を出すディランくんをギルさんはやれやれと溜息を零した。

ずっとギルさんを向けていたディランくんの瞳が私へと移る。



「なあ水羽、後で歌聴きに来るよな?」


「うん。後で友達のサイとギルさんで一緒に行こうと思っているよ」


「げっ、ギルも来るのかよ。まあ、楽しみにしろよ。本当に歌すげーから!」



まるで自分のことのように目を輝かせる。

彼女の歌を誰よりも楽しみにしている人は彼ではないだろうか。

本当に水鈴の姫が好きなんだとわかる。その姿に自然と微笑んでいると私の隣に誰かが止まった。道の邪魔になったのかと思い隣を向くとそこにはディランくんと同じくらい両目を輝かせたリアムさんがいた。

突然の彼の出現に驚いて後退りすると隣にいたギルさんと打つかる。



「お久しぶりですギルさん。水祭にきていらっしゃるとは思ってもませんでした。お会いできて光栄です!」


「ああ、久しぶりだなリアム。誰かさんと違って仕事頑張ってるみたいだな」


「そんな!これは当然のことです。でも、ギルさんにそう言って貰えるなんて……!」



少し頬を赤くにして恥ずかしそうなリアムさんに私は固まる。

どう考えても私とギルさんに対する態度が違いすぎる。ギルさんを尊敬していると解ってはいたが、ここまでとは……。



「おい、ギル。誰かって、それ俺のことではないよな?」


「ギ、ル……?」



ぞくっと背中が冷える。

そのぐらいにリアムさんの声は氷のように冷たく、その同時に彼の手は自分の腰に掛けてある剣を掴み、今でも抜刀しそうだった。

殺気を感じたのかそれに合わせてディランくんも剣を掴む。



「なんのつもりだ、この冷血鬼」


「お前こそなんのつもりだバカ犬。ギルさんのことを呼び捨てなんて、バカ犬には千年早いぞ」


「はあ?ギルをギルって呼んで何が悪いって言うんだよ。あいつはもう親衛隊でもないし」


「!!お前はまた……!」


「お、やるか!?」



激しくなる二人の口喧嘩に、気づいたら皆んな私たちから離れて輪ができていた。

この前の二の舞になると思った私は勇気を出して二人の中に入る。



「ふ、二人とも止めましょ?ほ、ほらリアムさん、ギルさんも見てますよ?」


「……!すいませんギルさん。変なところをお見せしまって」



やっと正気に戻り、ギルさんに深々く頭を下げるリアムさんと違い、まだ足りないのかディランくんは不服そうだった。でも、すぐにその口角が上がっていく。



「じゃあ、あれで勝負しようぜ」



ディランくんが指差した先には何かの出店があった。よく見るとその出店には銃みたいなものが並んであり、そして景品が置いてあった。そこから予測すると現世の射的みたいなものだろう。

出店を見たリアムさんが鼻で笑う。



「ふん。バカ犬があれで俺に勝てると思うのかよ」


「言っとくけど俺あれめっちゃ特技だからボコボコにしてやるよ」


「その言葉そのまま返してやる」



お互いを睨みながら行ってしまう二人を見守っていた私が呆れた溜息を吐いた。



「ギルさん、あの二人本当は暇なのでは……?」


「まだまだ子供だからな。しょうがない。水羽、お前も参加するぞ」


「えっ、ええええ!?!?」



ギルさんの衝撃的な言葉に声を荒げる。そんな私を構いもなく、ギルさんは出店へと連れて行く。

ディランくんとリアムさんはもう準備ができているらしく、その手には銃が握ってあった。



「おやじこいつにも渡してくれ」


「可愛いお嬢ちゃんもここに参加するのか?」



親衛隊の中に参加するのかと不安そうな声に私も変な汗をかきながらギルさんを見つめた。



「無理です無理です!私射的もシューティングゲームもやったことないですよ!」


「しゅ、てぃん……?まあ、いいから俺を信じろ」



ギルさんの手が私の頭を撫でる。

いつものように優しく頭を撫でてくれるギルさんが今日はずるいと思った。

これだともう逃げられるのは無理だろう。

覚悟を決めるしかない。



「水羽も参加するのか?」


「変人女一人増えたたことで結果は変わったりしない」


「そんな言い方ないだろうが、この冷血鬼!」


「今からお前を倒してやるから吠えるなバカ犬」



また始まってしまった喧嘩を止めたのは店のおじさんの手を叩く音だった。



「さあさあ、初めてぽいお嬢ちゃんの為に簡単な説明の後に始めますよ。ルールは簡単!この機械から出てくるシャボン玉をその水鉄砲で時間内に多く割った人が勝利!」



店の奥にある小さい機械を指差し、私に銃だと思っていた水鉄砲を渡してくれる。

成る程。時間内にシャボン玉を割ってその点数で商品を貰えるのか。勝負もできて商品も貰えるわけね。

理解できた私は震える手で水鉄砲を握りしめる。



「さあ、それでもは……スタート!」












「……」


私は静かに水鉄砲を机の上に置いとく。

静かなのは私だけではない。水鈴の姫の親衛隊と普通の女の子の対決が気になったのか、いつのまにかできた観客も合わせて口を開かなかった。

ちらっと隣を見ると二人は水鉄砲を握ったまま私の点数が書いてある甲板を見て動かない。そして、ギルさんはどこか満足げな顔をしていた。

その中、店のおじさんの戸惑った声が聞こえる。



「お、おめでとーー!!」



店のおじさんが鳴らす鈴の音に、魔法が解けたかのように周りが一気に煩くなった。



「お嬢ちゃんスゲーな!まさか親衛隊のしかも隊長に勝つなんてな!」



興奮げに言うおじさんに私は複雑な気持ちになる。

なんせ、凄いのは私ではなく、隣に立っているギルさんなのだから。

ゲームが始まり、ずっとギルさんが隣で撃つ方向を教えてくれていたので、一つ一つ撃っていくとまさかこんな高点数になると思いもみなかった。また、なんでギルさんが私にゲームを進めたか分かる気がした。



「このっ、俺が、こんな小娘に負けるなんて……!」



ずっと固まっていたリアムさんがその場からまるで世界の終わりみたいに崩れ落ちて真剣にそう悩む。

それが合図かのようにディランくんも水鉄砲を落として、その肩は小刻みに震えていた。



「お、おれっ、俺……!!今から自主練してくる!!」


「ディランくん!?」



涙目で急に走って行ってしまうディランくん。


は、速い……!


そして、今度はリアムさんが立ち上がり私をキリッと睨んだ。



「覚えてろよ変人女。ギルさんの前で俺に恥をかかせるなんて!」


「いや、あの、これは……!」



勢いよく後ろに周り、ディランくんと同じ方向へと去ってしまうリアムさんにネタバラシもできない。

ああも、こうもできない私の肩をギルさんが手を乗せた。



「さあ、サイとの約束もあるし俺たちも行くぞ」



軽々しい足取りで去っていくギルさんが、本当はこの中で一番子供ぽいのではないだろうか。そう思う私であった。





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