神崎直人
魔法士協会:日本支部
10階の端のオフィスで、細身の眼鏡をかけている男は、大量の書類を早いペースで見ながら何かを書き込んでいた。大量の書類整理が終わってすぐまた。
「今年の魔科工高校の入試結果は?」
「はい、これです。少し休憩されてはいかがですか?」
「いやー、今年は優秀な魔法士が多いからねー。見ててわくわくするよ。もしかしたら、僕の選んだ子が100番内に入るかもしれないしね」
「でも、さすがに若いうちには、キツイと思うんですけどね」
「ははは、いずれだよ。いずれ。こればっかりは気長に見守らなきゃ」
「そうですね。でもあんまり、仕事しすぎて体調崩さないでくださいね」
「ああ、ありがとう」
そう言いながら、再び作業に入る男。
「はぁ、耳に入ってないか。神崎さん、ここにコーヒーも置いときますね」
「……」
帰った後ももくもくと、作業も進める神崎。
それから数時間。
あと、数枚を見通せば終わるというところで、手が止まる。
そこに書かれている名前は、
夕神 廉夜
夕神 美紗
特に目を引かれたのはこの、夕神という姓。
そして夕神美紗の、魔力量のおおさだ。
「これは、偶然か?」
そういって一人考えに、意識を鎮める。
病院明けで魔法の扱いにたけていない、さらに魔力が多いものが必ず将来有望な魔法士になる可能性は、実のところ高くないので、経過を見てから判断すべきだ。
しかし、この夕神という名字が気になる。この二人はひょっとして…
「…z…き…………神崎さん!]
「あ、ああ。どうした?」
「どうしたじゃないですよ、いつまで考え込んでいるんですか?」
「うん?ああ、もうこんな時間か。先に帰りなさい。私は、少し上にあってくる」
「あれ?有望そうな子がいたんですか?」
「まぁ、大きくなってくれるはずな子だよ」