終わりと始まり
「ううん…。ここは、洞窟か。」
階段はまだ続く。8時間ほど寝た。
「体に異常はないな。よし降りるか。」
階段を一段一段降りていく。長い階段だ。しかし異変に気づくにはそんなに時間がかからなかった。
「体が重い?体重が増えたみたいに感じる」
階段を下りるたびに増えていく。
そして階段を下り切った。目の前の空間は、岩に囲まれた何もない空間。
ただ、今レンヤの体重は、10倍以上に感じる。
「なるほど、重力が10倍以上になってんのか」
広場に足を踏み入れる。
すると、あたりに転がる岩石が、形を変え空中に浮かぶ宝石のような塊に集まり始めた。
五階建てのマンションの高さにもなった岩の巨人。
ー何十年ぶりの探究者かー
「!?」
突如頭に響く声。
ーよく来たな探究者よ。我は最後の試練を与える番人であるー
「最後なのか!?」
ーうむ。しかし、不思議な探究者だ。なぜそんな悲しそうな顔を浮かべているのだ?今までの探究者はみな喜びと気合を顔に表すー
「え?」
(俺は今どんな顔をしている?かなしいかおだと?)
ー自覚はしていないのだな探究者よ。今までこの洞窟に入り、強い敵、過酷な環境。
つらい、苦しい。体も精神も限界。ここで心が折れる。普通の探究者ならそうなるだろうー
この話を聞きレンヤは笑っていた。
レンヤは心のどこかでこのような環境、命の駆け引きを待っていたのかもしれない。事実この洞窟に入ってから、つらい、苦しい、やめたいといった思考にはなっていない。
この世界に来るまでのレンヤは、感情を出さずいつもと同じ環境で生き、命の危機がない環境だった。その世界で生きるレンヤは、何も感じていなかった。唯一の肉親の妹のこと以外で、感情をむき出しにしたことがあっただろうか?
ピシッ
いつからこんなに感情を殺し始めたのだろうか?
ピシシッ
冷たい人間だともいわれた。
親が死んだころから?
いや違う。
何かが体の中で覆っている、モヤモヤしている。そしてそれが崩れかけている気がする。
ー…探究者予最後の試練だ。ここを通れることを祈ろうー
突如巨人の目の色が金色から赤色に代わる。
ブワッ
巨大なこぶしが迫る。
このこぶしをギリギリで躱す。体が重く自由に動けない。
敵の体は固く、罠も、バレットも意味をなさないでいる。
「くそっ!ジリ貧じゃないか」
ギリギリの躱しをし、ここに来るまでに覚えた魔術を駆使して応戦する。
しかし効かない。
1時間以上も躱し、相手を熱し冷やしもろくなったところを破壊するが、無限に回復する相手。
打つ手がない、そんな絶望の中でレンヤは絶望を感じるでもなく、ミサや家族、友達を思うでもなく、この無謀にも思える戦いを楽しんでいた。ふいにレンヤの口が笑みになる。
(笑ってる)
顔を触りながら確認する。
(笑うなんていつぶりだろうか。小さい頃は感情が顔に出てた。いつからなくなってしまったんだっけか。)
戦いの最中に、昔のことを思い出す。
(高熱で倒れたことがあったなぁ。それで…
『今はまだこの力が器に収まらない。お前の命を脅かす力だ。だがいつか、この力は、ミサさお前自身を守るための力になってくれるだろう。それまでは…』
ああ、そうだあの時助かってからだ。そうか、思い出した。なら、ミサを、俺自身を守るタイミングって現在、そして今だよな!)
レンヤの体から濃縮された濃い黒といろいろな色の魔力があふれ出す。
レンヤが左手を前に出すと、巨人は真っ赤な色の炎に囲まれる。
レンヤが右手を前に出すと、巨人は真っ青な色のこおりに閉ざされる。
レンヤが両手を前に出し、構える。
(固く鋭く力強い、巨人を倒す弾丸。ブラックロック。さらに、雷を合わせて。)
「ブラックロック・レールガン」
巨人の心臓部に大穴をあけ崩れる巨人。
巨人の後ろの洞窟の壁にも弾丸はうまっり大きなひびを入れた。
ティラノサウルスの時の、水蒸気爆発でも、傷かつかない洞窟の壁に、穴と大きなひびを入れたのだ、威力も相当だろう。
こんな大技を使ったのにも関わらず、レンヤに疲労の色は顔に見られない。
「うわ、マジか。すげー残骸。」
あたリに散らばる巨人の残骸。
そして穴の開いた壁の下に階段が現れる。穴とひびはふさがり始めてる。
(これで、終わりか)
階段を下りる。




