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検証実験と言う名のーー

 この際、俺に特殊能力があるなしはどうでもいい。

 多少は憧れていた事は本当であるが、それは漫画のような戦闘スキルのことであって、胸を大きくさせる魔法の手では決してない。第一、需要があるのかよそんな能力。この世界では需要はあるかもしれないが、それでも一ミリしか大きく出来ない力など何の魅力も感じないぞ。


「だからさ。俺にそんな能力があるなしの検証は必要ないと思うんだ」

「ごめん、それ却下」


 ですよね。

 イリスさんのバストサイズ確認を終えた俺達は、今後の事を話すために食堂に移動した。最もイリスさんはメイド服を取りに、リリスは着替えているため、食堂に移動したのは俺とクスハさんだけだったか。

 数分後、部屋服に着替えたリリスとメイド服を着なおしたイリスさんが魔法を行使して現れたのを見越して、クスハさんが食事の準備を始めた。慌てて、イリスさんもクスハさんの後について行ったので、今は俺とリリスのみが食堂にいる形となっている。


「やっぱりダメか?」

「当然よ。シンヤにそんな力が宿っているならば、他の女には渡せないし、私の夢の為に手伝ってもらうわよ」


 イリスさんのバストサイズ検証が不発に終わったのを見たリリスとクスハさんは、大きくさせる為には色々と条件をクリアしないといけないと言っていた。多分、二人の言っている事は正しいのかもしれない。イリスさんの胸を揉んでいる途中で、リリスのように腕が勝手に動いたり、発光現象は起こらなかった。もし、俺に女性の胸を大きくさせる力が秘められているというのならば、あの現象はそれに当たるのであろう。


「だからと言って、俺を使って色々試すことはしないんで欲しいのだが」

「ごめん。それも却下」


 さっきから俺の意見を一切聞いてくれない。

 どうしても、リリスは俺にそんなふざけた能力が秘められているのかを知りたいらしい。彼女からしてみれば、絶望的な状況を打破してくれる唯一の希望のようなもの。俺が何度言ったところで聞いてはくれないと思ってはいたが、ここまで強情だとは思わなかった。


「……分った。そこは諦めるとして、どうやって確かめるつもりなんだ? まさか、条件を変えて女性の胸を揉み続けろ何て言わないよな」

「そのまさかよ。てか、それしか方法がないじゃない」


 ですよねぇ。俺もそう思っていたけど、本当にそんな考えに至るとは思わなかったんだよ。


「……はあ、分った。これから世話になるんだから多少は手伝うけど、あまり過激なのはよしてくれよ」

「大丈夫大丈夫。もし、間違いが起こったら責任を取ればいいんだから。なんなら、私を含めて全員に責任を取ってくれてもいいのよ」

「んなことするか!」


 お前の言う「責任」って軽すぎだろうが。だいたいお前の抱えているメイドって三十人は軽くいただろが。どんな誑し野郎なんだよ、俺は。最低下種野郎にだけは成り下がりたくないぞ。


「そんなこと言って、既にイリスの乳房を揉みまくったくせに」

「あ、あれは仕方がなく……」


 イリスの件は新しい増胸術を一緒にして欲しいとお願いされてやっただけだ。決して、彼女の胸に目が眩んで邪な気持ちで揉んだわけじゃない。下心も合金の理性で完全にシャットアウトしたしな。


「仕方がなく? じゃあ、これから仕方がなくみんなの胸を揉むんだね。もう、シンヤのムッツリスケベなんだから」


 語尾に音符が付きそうなほど楽しげに言うな。


「シ、シンヤ様ってムッツリスケベなんですか?」


 そうこういっている間に料理が出来たらしい。配膳ワゴンを押しながら食事を持ってきたイリスさんは俺達の会話が聞えていたのか、意外そうな眼で俺を見てくる。


「ち、ちが――」

「そうよ。イリスも気をつけなさいね。油断している所をガブッて食べられちゃうぞ」


 なんだよ、そのガブッて。狼の物まねのつもりか。

 可愛いからもう一回やって欲しい。ってちがうちがう。


「俺はムッツリスケベじゃない。ムッツリだったら、リリスやイリスさんの胸を揉まない」

「じゃあ、フルオープンスケベだ。シンヤは」

「よし、リリス。お前とはじっくり話し合う必要があるな。少し顔を貸せ」

「顔は貸せないけど、胸なら貸せるわ」

「上手い事を言ったつもりか、お前は!」


 テヘ、と舌を出すリリスを非常に殴りたい。


「えと、あの、その。お二人とも、落ち着いてください。私はその……。いつでもどこでも覚悟完了ですから」


 思い掛けない伏兵の口撃に俺とリリスは固まる。この子、なに言っちゃってるの?

 きみ、自分が何を言っているのか分っているよね。


「なあ、リリス」

「なに、シンヤ」

「俺が思うにクスハさんを除いたら、イリスさんが一番エロイと思うんだが」

「そうね。妙に派手な下着を着けていたし」


 まさか矛先が自分に向けられると思わなかったのだろう。一番エロイといわれて赤面しだしたイリスは配膳ワゴンを止めて抗議を始める。


「あの下着はお母様が「女はいついかなる時も勝負の姿勢を忘れてはいけません」って言っていたから、決して疚しい気持ちがあったわけではございません」


 どんな母親なんだよ、あんたの母親は。なに十四の娘に教えているんだ。大人の階段を上るのはもう少し先の話のはずだ。俺だってまだなのに。


「……勝負の時って?」


 そして、こっちはイリスさんが言っている意味をまったく理解していないだと。

 ちょっとリリスさんや。あなた、先ほどから責任とか未成年には教えられないようなギリギリな所を突いていたにも関わらず、彼女の言葉が理解出来ないというのか。お前の情操教育は一体どうなっているんだよ。


「それはその……。勝負の時は勝負の時です。失礼ながら、お嬢様ももう少しセクシーなものを着用なされたら如何ですか?」


 まあ、イリスさんの言うとおりリリスは少し子供っぽい下着だったけど、あれはあれで可愛いからいいんじゃないかな。フリル付き下着なんて初めて見たけど。


「そうね。イリスの勝負の時ってのが理解出来ないけど、少し興味はあるかな。ちなみに、イリスはどこで買っているの?」

「今度ご案内します。その時はシンヤ様もご一緒なされる事をお勧めします」

「ちょっと待ってくれ。どうしてそんな話しになるんだよ。俺はいやだぞ。女性の下着を買いに行くのに同行するなんて」


 冗談ではない。どうせこの世界のことだから、試着するのも試着部屋なんか存在しておらず、その場で脱いだりするんだろ。そんな天国もとい、地獄の試練を乗り越える自信は俺にはないぞ。


「しかし、シンヤ様。男性用の下着は女性用下着売り場の隣なんですが」

「なっ!?」


 なんですと。


「そうだったわね。男の人が買いに来る所を見たことなかったけど、男性用も女性服売り場の横においてあるわよ」


 つまり、だ。二人が言うには服にしろ下着にしろ、売られている場所は同じ空間であり、分けられているわけではないらしい。そうなってしまうと、先ほど頭に過ぎった光景と遭遇する可能性は高くなるって訳か。


「……ふ。ふははは」

「ちょ、シンヤ。どうしたの?」

「ちょっと、この世界は俺のミスリルの理性に挑戦的過ぎるなと思っただけだよ。いいだろう、スイカップよ。俺は欲望には負けないぞ。必ず最後まで理性を保ち、野獣と化さない事をここに誓ってやる」


 ここまで性にオープンな世界に負けてなるものか。ファンタジーで女と問うたら抱く存在だと勘違いしている野郎共と同じ運命を辿ってやるものか。俺は俺の信念に基づき、必ず性欲に負けず理性を保ち続けてやる。


「それはそれは。随分と大層な誓約をなさいまして。……けど、シンヤ様。食事後に行われる検証実験をなされても同じ事が言えますか?」


 グラスとボトルを持ち込んできたクスハさんが挑戦染みた顔で言ってくる。

 えと、クスハさん? あなた様が言うその検証実験っていったい……。


「お嬢様、言ってなかったのですか? シンヤ様にはお食事後、ご自身の能力の検証実験を行う、と」


 え、なにそれ。聞いていないんだけど。


「うん。変にヒートアップしていたし、今言うよりかは食事後に言った方が面白いと思ったからね」


 面白いで済ませるね。ねえ、ちょっと俺って何をさせられるわけ?


「ご安心をシンヤ様。決して苦痛や痛みを与える事は致しません。ただちょっと、女性の胸を揉むだけですから。現象が発現するまで」

「それって、現象が発現しなかったらずっと揉むことになるんだよね」

「はい。ちなみに最初はこの私、クスハ・ミントスがお相手しますので、優しくしてくださいね」

「あ、あははははぁ……。はい」


 もはや逃げ道はない。出来ることならば、リリスに起った現象が早く起こる事を祈るのみだった。




 ――***――




 俺の友人は胸に関して強い拘りを持っていた。

 曰く「やはり揉む時は着衣ありだろ」らしい。そのとき、俺は彼の心情を全く持って理解出来なかったために「普通に触った方がいいのでは」と問うた事がある。

 そのとき友人は「お前はOP度が足りないな」と鼻で笑われてしまった。あれから一年、今なら彼の言っている意味が理解出来ると思ったけど、言わせてくれ友人Aよ。


「どうやら、未だに俺はOP度が足りないようだ」

「確かに足りませんよ、シンヤ様。もう少し力を入れてください」


 クスハさんに言われて、手に込める力を強める。


「……あ」


 どうやら彼女にとってこれぐらいの力がお好みなのだろうか。手に収まる感じのクスハさんの乳房を強く握ると今までに聞いたことのない艶のある声が漏れ出す。


「そ、それいいです。もっと強く」


 やばい。さっきまで言いように弄ばれていたクスハさんを自由に出来るかと思うと超興奮しちゃうんだが。いやいや、これは俺に隠されている能力を発現させる為の検証実験のはず。幾ら、美人のクスハさんが俺の膝の上に座って後から抱きつくような形になっているからと言って興奮したらおしまいで。何せ起き上がったら絶対にクスハさんに知られてしまうだろう。俺の息子さんは彼女のお尻の下にあるんだから。


「な、何かしら。なんか二人を見ているとこう、間に割って入りたい衝動が駆られるんだけど」


 俺とクスハさんを交互に見やってリリスが面白くなさそうに呟く。隣で上司であるメイド長の見た事がない姿に赤面しているイリスさんは自らの手で顔を覆い隠しているのだが、興味本心の方が勝っているのか確りと指の隙間からこちらを見ている。


「ね、ねえ。クスハさん。何もリリスとイリスさんの前でやらなくても」

「お気に召しませんか。私はこの状況ですっかり興奮しているのですが」


 確かに呼吸は乱れているし、仄かに体全体に熱が篭っている気がする。服の上から脱出し様と起き上がった小さな二つの山は口には出せないけどあれだよね。

 どうやら、興奮しているのは確かなようだ。もしかして、見られて興奮しているのかクスハさん。普段はサドでこう言う時だけマゾなわけ。


「言いましたよね。私は尽くすタイプですって。今なら何でも致しますよ、ご主人さま」


 ご、ごごご主人様って。あなたのご主人様は俺じゃなくってリリスのはず。

 けど、なんだろう。クスハさんからご主人様って言われて、物凄く動揺している俺がいる。どうしたんだろ、俺。まさか今の一言でノックダウンしたのか。このまま拘束具を外すことを余儀なくさせられてしまうのか。

 いや、これは検証実験のはずだ。決して邪な感情を抱いては。けど、クスハさんって凄いいいにおいするよな。俺と同じぐらいの背丈はあると言うのに、膝に座らせても重たいって思わないし。メイド服で分らなかったけど、クスハさんの腰って凄く細いんだな。




 ちがうちがうちがう。




 目を覚ませ、工藤伸哉。据え膳食わねば男の恥というが、目の前には十四歳と同年代の未成年がいるんだぞ。情操教育的にもここで俺が獣になるのは非常に宜しくないはず。クールになれ、工藤伸哉。お前は理性の化身のはず。ここで屈することは許されないはずだ。気持ちを強く持て。ここで流されるわけには行かないと肝に銘じろ。


「ご主人様、もっとぉ」


 どうやら俺も色々と一杯一杯のようだ。ここは素数を数えて……よくよく考えたら三十一までしか知らないぞ。じゃあ、円周率は? ダメだ最近ではギリシア文字πしか使っていない。少数三ケタまでしか覚えていないぞ。だったら重力加速度はどうだ! 九点八○六六五……。終わった!? ダメじゃん。


「なにを考えているんですか。そんなつまらない事なんて考えていないで、もっと楽しい事をしましょうよ」


 ちょっ。ここで手を取って、服の下に滑り込ませないで。何か、乳房の頂点が硬いんだけど。あ、これ。コリコリしていて触っていて楽しい。

「あ、ん。ちょっ。いきなり大胆ですよ、ご主人様」

「ご、ごめんなさい。そんなつもりは」




 ブチ。




 その時、何かが破断したような鈍い音が聞こえて気がした。


「シンヤさん。随分とお楽しみですね」

「リ、リリスさん?」


 先ほどまで静観し続けていたリリスがゆらりと立ち上がり、満面な笑みを浮かべたまま俺達の傍まで歩み寄る。その時、俺は見た。彼女の背中に威嚇している猫の姿が見えたのを。なんで猫の姿だったのかは分からないけど。


「言ったはずだよね。私を蔑ろにしてメイドに手を出したら許さないって」

「え? ちょ、ちょっと。この事態に陥ったのは主にあなた方のせいでは……」

「知りません。クスハさんも検証実験は終了です。てか、いつまでシンヤの膝に座っているんですか! いい加減に離れてください」


 俺からクスハさんを離そうとクスハさんを引っ張るのだが、離れまいと彼女の腕が俺の首に回される。


「ちょっ。クスハさん」

「せっかく、ここまで盛り上がったのに中止なんて酷じゃない。こんな機会、次はいつになるか分からないんだし、最後までしましょうよ。ね」


 いや、大変うれしいお誘いなのですが、あなた様のご主人様が凄い事になっていますよ。

 なんか目が赤く光っているんだけど。髪も黒から赤く変色しているのはなんで!? 怒ると髪質が変色するの?


「……クスハさん。いくら腹違いの姉でも許せる事と許せない事があるんですよ」

「あら。姉妹喧嘩であなたが私に勝てた事があったかしら」

 あわわ。何か険悪な空気になって来たぞ。

 なに? なに、これ。何が原因でこうなった訳。って、俺か。俺のせいか。


「お二人さん。その、ここは俺が悪かったって事で、一つお気を沈めては――」

「「本当にそうだよね」」


 えー。まさか、ここで飛び火するの?

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