今度は学園へ
基本、ワード五枚分(改行なし)で登校しておりますので、結構話がぶつ切りになるかも知れません。
こうでもしないと、一話の分量に大きな偏りが出てしまうんですよね。
「それでいかが致しましょうか?」
俺の葛藤を読んでいるか知らないが、クスハさんが未だに動こうとしない俺に問いかけてくる。彼女の言うとおり、そろそろと決断をしなくてはいけない。
「クスハさんの意見としては、どうだい?」
「私と致しましては、お勧めしかねると。シンヤさんが希望している仕事は危険が伴うきらいがあります。立場上と致しましては奥様やお嬢様に黙ってギルド登録をするのはいかがかと」
「……ごもっともで」
一理ある。俺が選ぼうとしている仕事は危険性が少ないだけで、絶対に危険ではないと言える。もしも、俺一人では対処できない事態が発生した時は死の可能性もありえる。
「無理に国外に出る必要はないかと。もしも、職をお探しならば奥様に頼んで執事にしていただくのも一考かと」
執事ね。確かにお世話になるからシルフィード家の為に働くのもありかな。
しかし、その場合は――。
「もっとも、そうなった場合は奥様とお嬢様のお相手をしていただくかと思いますが」
「……だよね」
「お二方のお相手をするのはお嫌で?」
「そう言う訳ではないんだが、俺としては、初めはその……。なんて言うか大事にしたいなあって考えているんだけど、変かな?」
「シンヤさんの世界では普通なのかも知れませんが、こちらの世界ではその考えを持つ人達はいないかと」
なにせ子作り推奨国だもんな。
不純異性行為なんて法律が存在しない国だもんな。
「んと、取りあえず登録だけは済ましておこうかな。登録後、必ず仕事をしなくてはいけないなんて事はないんだろ?」
「その通りですが、やはり考え直しませんか?」
「何事も経験だ。いや、そっちの経験を積みたいって訳じゃないんだよ。この世界で生きる為には、収入手段は画一させておかないと」
「分かっております。それに経験したあとは、シルフィード家のみんなが離さないと思いますよ。もちろん、この私も」
「あ、あははは。まあ、そう言ったお話しはおいおいするとして、これから加入してくるよ」
嬉しいお話しだが、未来の俺がげっそりと痩せこけて「太陽が黄色く見えるぜ」と黄昏ている姿が目に浮かぶ。……本当に黄色く見えるんだろうか。
「分かりました。それでは、受付の方へ行きましょう。登録手続きをしなくてはいけませんので」
「ありがとうございます」
ギルドの加入登録は何の事件も発生する事無く登録し終えたのであった。強いて言うならば、登録容姿の性別蘭に男と書いたら受付のお姉さん――何度も言うけど女性だよね――が驚くほど目を大きく見開いた事ぐらいか。登録を終えた後、いそいそと奥へ行ってしまったために仕事の受注が出来なかったので、今日の所はこのまま退散する事になった。
――***――
「そう言えば……」
シルフィード家の帰路を歩いている途中、俺は今の今まで疑問に感じていなかった問題を質問した。
「俺以外の男性って普段は何をしているんです? まさか、日長一日やっている訳じゃないでしょ?」
もしそうであるならば、どんだけの体力と精力を備えているのだろうか。一日に何人お相手しているのか、素直に気になるところだぞ。
「そうですね。一番若い人で一日十人がやっとの事とか。それでも、やはり後半になると体力が持たないのか寝そべっているだけだと聞きました」
十人だと。
おいおい、何て事のない様に言っているけど、それって充分凄いと思うぞ。
未経験者の俺が言うのもなんだが、あれに関しては体力と精力がげっそり持っていかれると聞く。稀に連続で行える底なしのお方達がいると聞くけど、それでもこの世界の男連中と比べたら豆粒みたいなものだ。
「けど、そう言ったのは基本的に正午からとなっております。午前は騎士団として巡回や鍛錬をしているそうです」
「へぇ……うん?」
……ぇ。いま、騎士団と言ったか?
「あの、クスハさん?」
「なんでしょう」
「それって、もしかしなくても申請すれば俺も入れたんじゃないかい?」
「そうでしょうね」
「じゃあ、なんで最初に言ってくれなかったんだい」
「何でって、騎士団に入ったら必然的に子作りもしなくてはいけなかったのですが」
「結局、どの職業についてもアダルトイベントは必須なのね。ここまで強制的イベントが絡み付いている世界も珍しいぞオイ」
なんで俺はこんな世界に呼ばれたんだろうかって、リリスが誤って召還したんでしたね。
「そのうちなれると思いますよ。それよりお腹空きませんか? どこかでお食事でもしていきましょうか」
言われて、待っていましたと言いたげに俺の腹の虫がなる。
そう言えばほとんど歩き通しだったな。日も随分と高くなっていることだし、そろそろお昼なのだろう。
「近くにお勧めの飲食店があるんですよ。そこでよければお食事に――」
「……ん? どうしたんです、クスハさん」
楽しげな表情で昼食を進めてくるクスハさんは、片耳に手を押し当て始める。
表情も最初にあった時のようにキリッと精悍な顔つきになっていた。
「……分かった。それじゃあ、その件は任せます。くれぐれもお嬢様の顔に泥を塗らないようにお願いしますよ。申し訳ありません、イリスからの連絡です」
「いま、片耳に手を当てたのは通信系等の魔法なんだね」
「はい。下位魔法ですけど、魔法の波長を登録しておければどんな場所であっても一瞬で連絡が取り合える【念話】でございます」
なんだか名前だけ聞いたら、それは魔法と連想できないのは気のせいだろうか。まあ、よくある名前だから仕方がないのか。
「それで、イリスさんは何て言っていたんだい?」
「何でも本日のお昼は弁当にしなくてはいけないのに、言い伝えるのを忘れていたとか……。いま、お嬢様のお弁当を持ってリリスが向うところです」
「リリスのところと言うと、プティーズ専門学校だっけ?」
「プティーズ・アカデミーです」
「それって、ここから近いのか?」
「それほど遠くではありませんが、興味ありますか?」
「まあね。よければイリスさんと待ち合わせして、一緒に行ければと思うけど、どうかな?」
何気に興味はあったんだよな。
リリスの話しを聞く限り、俺の世界に例えるとアイドル養成学校みたいなものだろう。
可愛らしい女性を見たいと思うことぐらいは、許されてしかるべきだよね。
「……シンヤさん。今の心のお言葉は聞かなかった事にした方が宜しいでしょうか?」
「うぐっ」
「また揉んでいただけたら、私の記憶もあやふやになるかと存じますが――」
この人、さらっと脅しかかっているぞ。
「脅しとは人聞きの悪い。本日の全てのお言葉も忘れて差し上げようと思ったのに」
「んなっ!?」
そう言えば、要所要所本音を吐いていた気がする。
まさか、俺の狙いを――。
「ギルドに登録した本当の理由を言ったら、きっとお嬢様達は悲しまれるでしょうね」
「ごめんなさい、分かりました。精一杯揉ませていただきますので、どうかご内密に」
「決まりですね。約束ですよ」
こう言うときだけ見惚れそうな満面な笑みを浮かべるのは卑怯だと思うぞ。
――***――
「あ、シンヤ様。メイド長。お待たせ致しまして申し訳ありません」
「問題ないわ。時間ぴったりよ、イリス」
その後、イリスさんと無事に合流する事が出来た俺は、お二人の案内に従ってイリスが通学しているプティーズ・アカデミーに足を運ぶ。
「……なんて言うか、でかいな」
アカデミーと言うから学校のイメージが強かったけど、この建造物は学校と言うよりも豪邸と例えるべきだろうか。
城門と思えるほど立派な門を護る様に二人の女性が棍棒を抱えて待機している。
どうやら、彼女ら二人がアカデミーの門番であるらしい。
「お勤めご苦労様です」
「ご苦労様です」
クスハさんが先にお二人に声をかけ、彼女に見習ってイリスさんが深々と一礼する。
「貴女は……。リリス様のところの」
「クスハと申します。こちらは新人のイリス・ツヴァイゼルです」
「イリス・ツヴァイゼルです。どうかお見知りおきを」
「話しは聞いております。どうかお入りを――と、言いたいところですが、後ろにいる方はどなたでしょう?」
瞳を光らせて真直ぐ俺に視線を向ける。
「この方は、クドウシンヤ様と言いまして訳あってシルフィード家でお世話になる事になりました」
「は、初めまして工藤伸哉です」
「決して怪しいものではありませんので、どうか通していただけませんでしょうか」
「申し訳ありません。私達が報告を受けた訪問者はイリスさんのみでございます。クスハさんは別と致しまして、申請のない方をアカデミー内に入れる事は出来ません」
ありゃ、ダメなのか。
「随分と厳しくなったように思いますが、何かあったのですか?」
「ここだけのお話し、プティーズに進入して下着を盗む輩が現れまして。許可を受けた者以外は入れないようになって降ります」
し、下着泥棒って。
こんな女性が大半を占めている世界でもそんな変態紳士さんが存在するんだね。
「それは恐いですね。お嬢様や奥様は一言もそのような事は」
「何でも相手の狙いはEランク以上の下着のようですよ。Eランク以上の下着のみ盗まれていますので」
「そうなんですか。イリスも気をつけないといけないわね」
「そ、そこで私に話しを振らないでください。どう切り返せばいいんですか」
不意にクスハさんと門番二人の視線がイリスのある部分に注がれる。圧倒的存在感を見せるイリスのそれを見て、三人は自分の果実を掬い上げ、大きな溜息をする。
「そこまで大きくするのに相当な努力をなされたのでしょう」
「なんかよい方法とかないのですか? コツとかあるなら教えてください」
「え、え!? そんなこと言われましても……。メイド長、助けてください」
「その話し、私も大変興味あるわね。私よりワンランク大きいおっぱいを持つイリスさんにご教授願いたいわ」
女三人寄れば姦しいというけど、姦しいどころの騒ぎではない。
幾らなんでもオープンすギルだろ、あなたたち。特にクスハさん。
あなた、完全にキャラがぶれているぞキャラが。
「シ、シンヤ様」
おい。こっちに助けを求めるんじゃない。
涙目になってもだめなものはダメだからね。
「ファイトだぞ」
「そんなあ」
見捨てられたと悟ったイリスさんはどうすればよいか考えているのだろう。
しばし、沈黙を続けていたと思うと、まるで閃いたと言わんばかりに三人の耳元に口を近づかせたのであった。
「……そんな方法が!?」
「確証はありませんが、試してみる価値はあるかと。何よりその……。気持ちいいですし」
驚嘆する門番に向って答えるイリスさんは頬を赤く染めて答える。
なんだ? 何を言ったんだ、イリスさん。なんか、嫌な汗が流れ始めてきたのは気のせいだろうか。
結論、嫌な予感が外れた試がなかった事に今更ながら気づく事になった。




