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どうやら照明の魔法自体は簡単でも、母の反応を見るとああやって手から離して効果を維持することは簡単ではないようだ。
まぁ……魔力量にも魔力の操作技術にもそれなりに自信のあったボクですら、コツを掴むまではどうしたらいいかわからなかったくらいだもんな。
「差支えがなければ、どうやったのか教えてもらえないかしら?」
「……別にそんな難しいことじゃないですよ? お風呂上りに魔道具を使って髪を乾かしてもらったんですけど、本体から延びる紐を壁の柱に挿してたんです。ソレの応用みたいな感じですね」
正確には前世の知識のお陰なんだが……アレだってそこまでかけ離れているわけじゃないし、これくらいの説明の仕方の方が伝わるはずだ。
それよりも……母は怒っているわけじゃないんだろうが、何が気になっているんだろうか?
「消した方がいいなら消しますよ?」
「……いえ、貴女の体に負担がないのならこのままで構わないわ」
「そうですか」
熱を発しているわけでもないし、室内に光でダメになるような物があるわけでもないから、特に反対されるようなことはないのはわかっていた。
この程度でどうにかなるほどボクの魔力は少なくないし、消費量だって大したことないからこのままでいいだろう。
「…………」
「…………」
特に視線を合わせることもなく、何となく部屋の中で二人揃って黙り込んでいる。
「あの……?」
「え? ああ……そうね。その資料は持ち出しは禁止だから、読むのならここに滞在している間にしなさい」
「おぉ……わかりました。……見るだけでわかるかな?」
後半は小声で呟いたんだが、部屋にはボクたち二人しかいないし母の耳にしっかり届いたらしい。
「知らない名前だらけだし土地勘もないのよね。必要なら私が説明しましょうか?」
「む……そうですね。お願いします」
今後関わることがあるかどうかはわからないが、知って損をするようなことでもない。
説明役を任せられるのならお願いしよう。
「椅子は貰うわよ。貴女はそっちに座りなさい」
母はサッサと椅子に座ると、ボクにベッドに座って読むようにと指示を出した。
「読んでわからないことがあれば言いなさい」
さっき廊下を歩いていた時にも同じようなことを言って、気になることを聞いても碌に教えてくれなかったが……それを指摘しても仕方がない。
ボクは「……はーい」と返事をしながら資料片手にベッドに座った。
◇
ラカンパの街の元になった合併した村は全部で七つあって、各村長家は、代官兼医療のグラス家・農業のビーンズ家・商売のゴール家・メタル家・金融のリーン家・工業のマイト家・人材派遣業のマックス家として続いている。
その七家のことをラカンパ七家と世間では呼んでいるらしい。
そのまんまではあるが……称号と言うかインパクトは大事だ。
その七家がラカンパの街とその周辺に必要な機能の大半を担っているそうだし、少なくとも名前負けはしていないな。
ちなみに、ビーンズ家が一番大規模な農場を営んでいるが、七家とも農村の村長が出自だし今も各家農場は所有しているそうだ。
それなら魔物除けの薬品を欲しがるのも納得出来る。
さて……一通り読んでみたが、気になることがいくつかある。
ファイルを閉じて顔を上げると、腕を組んでこちらを見ていた母と目が合った。
「読み終えたのかしら?」
「うん。それでいくつか知りたいことがあるんですけど……」
「何かしら?」
「グラス家の医療ってどういうことをやるんですか? 治癒魔法とか?」
農業はわかるし、商売もわかる。
金融は多分貸金と両替で、工業は……色々作ったりだ。
グラス家の医療とマックス家の人材派遣がいまいちどんなことをするのかわからない。
他にも気になる点はあるが、まずはこの二家の仕事の内容について聞いておこう。




