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「……うん?」
両手の間に浮いている光球を天井に向かって放り投げたんだが、天井に当たるとパッとはじけ散ってしまった。
衝撃や音が出たわけではないんだが……天井に当たったことで魔力の結合や構造でも崩れてしまったんだろうか?
「何も考えないで放り投げたのが悪かったのかな? もう少し天井に張り付くイメージで……!」
今度はハッキリと、ライトのような光景を思い浮かべながら魔法を発動して、天井に向かって放り投げたが……。
「あぁ……これでもダメか」
やはり天井に当たるとはじけ散ってしまう。
これはこれで綺麗だが、これじゃ照明じゃなくて手品とか一発芸だ。
「天井がダメなのかな? それじゃー……代わりに良さそうな物は……と」
天井に張り付けるのを諦めたボクは、代わりに魔法を引っ掛けられそうな物を求めて室内を見回すが……丁度いい物が見つからない。
再度天井にチャレンジするか、それとも片手でキープし続けるか……どうするかで悩んでいると、控えめにドアをノックする音が聞こえて来た。
「はーい? どうぞ?」
ボクが声をかけると、「失礼します」という声と共に静かにドアが開いたが……廊下は既に照明が点いているようで室内に明かりが差し込んだ。
魔法の訓練に夢中になっていて気付けなかったが、思ったよりも時間が経っていたようですっかり部屋の中は真っ暗になっていた。
「明かりをお持ちしました」
部屋に入って来た使用人は、ランプをいくつか手にしているが……中の明かりは蝋燭ではない。
彼女が壁にランプをかけていくのを見ながら、「それはどうなってるんですか?」と訊ねた。
「こちらは照明の魔道具になります。最新型ではありませんが……その分扱いやすいんですよ。使い方の説明はいりますか?」
「あ、お願いします」
先程読んでいた魔道具の入門書は、家庭用……っていい方でいいのかはわからないが、こういった魔道具ではなくて、もっと大掛かりな装置のような物ばかり記されていた。
自動で消えたりするのかもしれないけれど、使い方は知っておいた方が安心だし、ここはちゃんと使い方を教えてもらおう。
彼女の下に行くと、彼女は壁にかけたランプの底を指した。
「この底の部分に仕掛けがあって、そこを触れることで点灯と消灯が出来ます。一応その操作には魔力が必要ですが、ほとんど消耗せずに起動出来ます。……アリスお嬢様は魔力が豊富だと聞いていますし、問題なく扱えますよ」
「ふむふむ……試してみてもいいですか?」
「ええ。こちらです」
ボクは教えられた箇所に手を当てると、灯っていた明かりがフッと消えた。
そして、一度手を放してからまた当てると、明かりが点いた。
確かに魔力が作用するあの反発は感じるんだが、彼女が言うように魔力が減る感触は一切ない。
あくまで底に手をかざすことで魔道具のオンとオフを切り替えるだけなんだろう。
前世であった、ライトや洗面所のセンサーみたいな物がかな?
その場で何度もオンオフを繰り返していると、彼女がランプの補足の説明を始めた。
「明かりを維持するための魔力は大体明日の明け方まではもちますから、もし夜更かしされるようでも大丈夫ですよ。こちらは火を使っていないので、消し忘れても心配はいりませんからね」
ボクはその言葉を聞いて、オンオフを繰り返す手を止めて振り向いた。
「そんなにもつんですか?」
見たところそんな特別なパーツが付いているようには見えないし、髪を乾かす時に使ったドライヤーのように、外の動力に繋ぐコードが付いているわけでもない。
どういった仕組みなんだろうか……。
「通常のランプは底に油が入っているんですが、代わりに魔道具の仕掛けを設置しているそうです。私も詳しくはわからないのでこの程度の説明しか出来ないのですが……」
もう少しじっくり見たら何かわかるかもしれない。
申し訳なさそうな彼女に「それで十分ですよ」と笑って言った。




