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周囲の職人たちから前世のジムのトレーナーのような声援を受けながら、ボクは魔力の放射と操作を続けていたが、やがて筒の中の光が消えたかと思うと、駆動音も止まってしまった。
誰かが操作したわけでもないが、装置が停止したようだ。
「……壊しちゃいましたか?」
直接弄ったわけではないが、何かしていたのはボクだけだし、これはやってしまったんだろうか?
ボクが不安がっていると、職人たちが装置に取りついた。
「いや、大丈夫だ。完了しただけだ」
「あぁ……そうなんですね」
何の合図もなく急に停止したから焦ってしまったが、ただ完了しただけか。
筒から槍の穂先を取り出している職人たちを見ながら、ボクはホッと一息ついた。
「次はその剣だが……一息つくか? それとも続けて行うか?」
「へ? ……あぁ、こっちもありましたね」
槍は彼らに持ってもらっていたが、小剣は自分で所持していて今も腰に帯びているが……すっかり忘れていた。
集中し過ぎて少々疲れているのは確かだが……。
「勘も掴めたし続けてやった方がスムーズに出来るかもしれません。その装置に問題がなければ、今やっちゃいたいです」
「よし。それなら、今やっちまうか。なに……屋敷で軽く見た限りだが、そっちは槍ほど使われていないからもっと簡単に出来るはずだ」
そう言うと、彼らはもう一度装置を起動させ始めた。
ドライヤーと違ってスイッチ一つで動くわけじゃないようで、また少し時間がかかるだろう。
その様子を眺めていると、工房長が声をかけて来た。
「それなら私は穂先を研いでおきましょう。アリスお嬢様、よろしいですか?」
ボクが来たのは魔力を扱う手伝いのためだが、そもそもの目的は武器の手入れだ。
工房長……がどれくらいの腕なのかはわからないが、わざわざ買って出てくれたのならここはお任せしよう。
「そうですね。お願いします」
どちらの作業もどれくらい時間がかかるかはわからないが、突っ立ってもらっているよりはいいだろう。
「研ぎ方に注文はありますか?」
……研ぎ方に違いなんてあるんだろうか?
「あぁ……細かいことはわからないので、お任せします」
ボクが返答に困って適当に言うと、作業中の職人が顔をこちらに向けた。
「お嬢ちゃんは突きがメインらしいぞ!」
「戦闘そのものには慣れていないそうだから、研ぎ過ぎない方がいい」
工房長は彼らの言葉に頷くと「それで構いませんか?」とこちらを見た。
「……ええ、お願いします」
それしか言えないね。
◇
装置の起動準備が完了して、筒に剣をセットしてから再びスイッチが入れられた。
ボクは先程と同じように球体に魔力を放ちながら試験管と睨めっこをしている。
一度行った作業だし、勘はもう掴んだからそこまで苦戦しない……思ったんだが、何故だろうか?
こちらはあまり上手くいかない。
「なんか……上手く出来ない気がします」
魔力を通していると反発する瞬間があるのは先程と一緒なんだが、そこから先が上手く出来ない……ような気がする。
同じようになっているのに何が違うんだろうか?
「お嬢ちゃんは魔力の量も操作も見事だが……魔法は使えるのかい?」
「治癒なら少しは……?」
エリーゼ様の魔法を見て以来、日課の魔力の訓練の際に魔法も試してはいるんだが……全く出来る兆しがない。
自分の治療と魔力の放出は出来るが、それで魔法が使えるとはとてもじゃないが言えないだろう。
でもそれが操作が上手く出来ないことと関係あるんだろうか?
「それが何か関係あるのか?」
そう思ったのはボクだけじゃないようで、他の職人が疑問を口にした。
「多分な。これはミスリルの純度が異常に高いぞ。剣ってよりは……ほとんど魔法の発動体だ。お嬢ちゃん、試しに魔力の流す量を増やしてみてくれよ」
「それじゃあ……」
よくわからないが、とりあえずやってみるか。
ボクは球体に翳す両手に魔力をさらに高めた。




