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地球魔力改変  作者: 443
序章 移ろい
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8.二人でダンジョンへ

Tips:ゴブリン(魔物)

緑っぽい体色をした人型の魔物。身長は140〜160が多いがもっと大きい者も存在する。

動きやすそうな運動靴に上下ジャージと帽子を被り、手袋を着けた手には伸縮する警棒を持つ。

背にはリュックに予備の警棒を1本とライトを入れ準備は完了。

兄はちゃんと生身の人間なので水分と非常食も持っているようだ。

更に辻本さんから貰ったらしい腕輪も身につけている。


お姉さんに連絡しダンジョンまで連れて行って貰う。

お姉さんには本当に頭が上がらなくなってしまいそうだ。

表情も少しきつそうで、やはり何度もワープをするのは楽なことでは無いみたいだと感じた。

警察の姿や監視は既に無かったのですぐにダンジョンに入る。


魔法陣が描かれた台に上がると光が僕らを包み迷宮の中へと誘った。

中は外よりは暗いが視界が悪くなる程ではなく、広い洞窟が連続しているようになっている。

少し進むと分岐路からスライムでは無く人型の亜人、例えるならゴブリンというのが正しいだろう生物がいた。

距離約15メートル、単独かつ無手で襲いかかってくるゴブリンに前に出たにいにが応戦した。

にいには昨日の今日なのにすごく強くなっており、警棒を数回振りゴブリンを殺していた。

人間とは違う暗緑色の血を散らしながら地に伏せるゴブリンに無情な追撃を喰らわすその姿に少しだけ驚いた。

そう、少しだけ。

なぜか感情がすごく抑えられてる感覚がする。

元の僕なら驚きと恐怖で逃げ出していそうなものなのに。

けれどそれらの感情はほとんど無く、これからはこうしなければいけないと頭で分かっているのもあるが一番大きな原因はこの体だろう。

心配したのだろう、にいには僕に向かい聞こえない声を発する。

それに僕は『大丈夫だよ』と言い、続ける意志を示す。

その場から消えたゴブリンの死体から残された小さな石を回収する兄を見ながら警棒を強く握り締めた。


本来多少重く感じるだろう警棒を軽々と振り回し、僕たちはゴブリンを倒した。

ゴブリンを倒すと何かを体が吸収する感覚がある。

これを何度か感じた後に全能感が僕を包み込み、若干動きが良くなった様な気がした。

数戦後それは気のせいでは無いと確信する。

踏み込みや武器を振る速度などが上がったことで戦いやすくなったからだ。

……もしかしたら武器の扱いに慣れてきただけかもしれない。

兄の休憩を挟みつつ進み続けた。


1時間程経った時2階層への階段を見つけた。

ダンジョン毎に多少違いがあることを知り、開始地点に戻るためダンジョン内を移動する。

お互いが強くなったこともあり、行きより危なげなく進行できた。

僕は知らなかったのだがスタート地点に帰還用の魔法陣があったようでそれに入り僕らはダンジョンを脱出した。


お姉さんに家まで送って貰い、帰ったら交代でシャワーを浴びる。

生身の人間はやはり相応に疲れるのだろう。

椅子でぐったりしているにいににお水を渡して僕も席についた。

にいには思いついたような表情を浮かべしきりに僕に話しかけてくる。

それでも聞こえないものは聞こえないので分からないよ、と声をかける。

すると突然手に包丁を出現させる。

少し体が硬直しすぐに『何してるの!』と声を出したが多分『ごめんごめん』などと言い兄はそのまま思案を続ける。

少ししたら僅かに声が聞こえてきた。


「あー、……。…………?聞こ……」


『ちょっとだけなんか聞こえたよ』と返すと喜びまた練習をしている。

たまに包丁を手から出したり消したりするのは怖いからやめてほしいと思うが、きっと兄のスキルである魔力剣から構想を練っているのだと思い言い出せずに待ち続ける。


◆◇


「これどうかな?」


「うんばっちり聞こえるよ」


「魔力を声に乗せるっていうのがやっと分かったよ。また話せてよかった」


「にいにがんばってくれてありがと。うれしかったよ」


「いやいや、こんなのして当たり前だよ。じゃなきゃにいにが眠れないから」


「辛くない?顔苦しそうだよ」


「いや全然……」


どうやらギブアップみたいだ。

紙に『練習に魔力使いすぎたみたい、また明日ね』と書かれた。

『ありがと、また楽しみにしてるね』と返し、兄によってつけられたテレビを見る。

そこでは過疎地の村々で魔物が跋扈している映像が流されていた。

それを見て息をのむ兄。

僕らは魔物による侵食は始まっている事を理解した。

その他凶暴化した野生生物や輸入資源の枯渇問題、ダンジョン行方不明者数などが放送される中、異彩を放つニュースが目についた。

総理大臣など日本のお偉方が日本ダンジョン協会というものの設立を決定するもの。

また一定の強さや練度が確認された個人また団体にギルドの設立を可能とするもの。

他にもいくつかあったがインパクトが強すぎて思考停止してしまった。

しかしきっと辻本さんが陰で糸を引いたのだろうと思い納得する。

兄はスマホを手にどこかニヤニヤした表情を浮かべている。

なぜこんなことがいきなり起こり得るのか想像がついているからだろう。


急速に世の中が変わっていくのを感じながらまた1日を過ごした。

9/5再編集済み


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