第3話 王太子殿下押し付けプロジェクト
授業を受けるなんて、一体何年ぶりだろう。
教壇には初老の教師が立っている。
すり鉢状の教室に生徒が五十名弱。
一学年三クラス…ということは、全部で百五十名ほど。
学園は三学年制。
王侯貴族が通うこともあり、敷地は広く、無駄に豪華だ。
全日制で寮もあるらしい。
リザベッタは2年生で頭の出来は教科書を見る限り、上の下というところかな。
あっ、ここ間違ってる……ここもだ。
赤で修正を入れる。
……ダメだ、この癖……
まあいい。計画を練ろう。
ふと、目を黒板に向けると教師が何かを書いている。
……いや、先生、そこ違うでしょ。
思わず赤で修正を入れたくなる。
生贄…じゃない、王太子殿下の婚約者を押し付ける相手が早々に見つかったのはラッキーだった。
あの子を王太子殿下のタイプに仕上げつつ、イジメる。いや、“教育的指導”という名の圧をかければ問題なし。
健気にいじめに耐える少女。
それを見かねて手を差し伸べる王太子殿下。
「もう、我慢しなくていい」
……とかなんとか言って。
気づけば二人は惹かれ合い――
だが、そこに立ちはだかるのが、この私、悪役令嬢リザベッタ・エヴァンス。
目に余るイジメについに王太子殿下は悪役令嬢を断罪する。
王太子殿下と男爵令嬢は結ばれ、晴れて平民となる私。
誰も損をせず、みんなハッピーエンド。
最高じゃないの。
問題は王太子殿下が男爵令嬢に熱をあげるかということと、男爵令嬢が王太子殿下のタイプかということだ。
う~む……
王太子殿下は若い。王宮育ちの、世間知らずの甘ちゃん。うまく持っていけば、運命の恋だとか結ばれる運命の女性と錯覚させるのも難しくなさそうだ。
タイプについては調べれば済むことだし。
なんか上手くいきそうじゃない?
…勝ったな。
そうとなれば……
ニヤリと笑い、赤ペンで修正を入れた。
さて、昼休みである。
資料収集、情報収集はプロジェクト立ち上げの大事な要件。
王太子殿下とやらはどんな人物だ?
私は生徒で混んでいる学生食堂に向かった。
学生食堂は一流レストランのような内装だった。
たかが学生にこの内装。
貴族ってコワい…
更に豪華仕様となっている奥まった場所で、一段ときらびやかな集団を見つけた。
ああ、あれは王太子殿下御一行様に間違いないな。
……うん。物語にでてくるような理想の王太子様だ。
爽やかな笑顔。均整の取れた身体。優雅な所作。これはモテるのも無理はないな。
取り巻き連中も極上の部類だ。
侍女からの情報によると、宰相の息子に近衛将軍の息子、その財力は国一番の子爵の息子ということだった。智・武・財取り揃っている。しかも全員が俳優並みに顔がいい。
そりゃ、あそこだけ空気が違うのも仕方ないってもんだわ。
小娘どもがキャッキャッという筈だ。
……さて。
どうやって、あそこに食い込むか。




