表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/51

45. クラウド・ノード零②

 ――黒炎が、天を覆った。

 まるで世界が裏返ったようだった。

 クラウド・ノード零の空間が、完全に反転する。

 上も下もなく、光も影もひとつに溶けた世界。


「何もない、何も感じない……まるで墓場のようだ」

 イエヤスが低く呟く。

「それが“完璧な秩序”だとすれば、人の温度は不要ということか」

 ケンシンの瞳に、冷たい光が映る。


 天嵐院が腕を広げる。

 背後には、ブラック企業団幹部たちのホログラムが並んでいた。

 その姿は神々しく、しかしどこか悲しかった。


「彼らも私と同じ結論に至った。理念を守るには、感情を削ぐしかない。心を失えば、誰も傷つかない」


「……それで全てが救われると思うのか」

 ノブナガが一歩、前に出た。

「何の想いもない仕組みなど、機械と一緒だ」


「機械は嘘をつかない。人は裏切る」

 天嵐院の声が響くたび、空間がひび割れ、光の断片が散っていく。

 雲の底から、巨大な演算装置のようなものが浮上した。


「アルゴリズム・ドライブ、稼働率120%」

 天嵐院の掌から黒い蔦が伸び、6人の足元に絡みつく。


「っ……動け……ない!」

 ヒデヨシが苦しげに声を上げる。

「データが逆流している……感情が奪われていく!」

 イチリンの桃色のオーラが薄れていく。

 彼女の瞳に、迷いと恐怖が広がる。


「人の心は誤差が生ずる。完全な数式の上でこそ、完璧な秩序が成立するのだ」

 天嵐院が指を鳴らす。

 その瞬間、6人の視界が白に染まる――。


 それは幻ではなかった。

 彼らは“過去”を見せられていた。


 シンゲンの前に現れたのは、疲れ果てて倒れた部下たち。

「守りきれなかった……あの頃の俺だ」

 製造部長としての後悔が胸を締めつける。


 ケンシンの前には、心を病んで退職していった仲間の影。

「義を貫いても、誰も救えぬのか……?」


 ヒデヨシの目の前には、かつての裏切られた上司。

「俺は“結果を出せばいい”と思ってた。でも、あの時は笑顔を……忘れてた」


 イエヤスは、自身の机に積まれた請求書を見ていた。

「数字しか見えていなかった……人を、見ていなかったのか」


 イチリンの目の前には、育児との両立に苦しむかつての仲間。

「あなたの思いを、私はわかっていなかった……」


 そしてノブナガ。

 彼の前に立っていたのは、若き日の自分。

 スーツも刀も持たない、ただの一人の男だった。


『何のために戦う?』

 若きノブナガが問う。

『理念か? 勝利か? それとも、仲間のためか?』


 ノブナガはゆっくりと俯いた。

「俺は……何のために」


「そうだ……もはや私と戦う意味などない。私と同じ黒き戦士よ。共にゆこうか」


 天嵐院がノブナガに近づく。

 目が合った瞬間、ノブナガの足元から黒い蔦が外れ、天嵐院に引き寄せられる。


「待てよ! ノブナガ!」

 ヒデヨシが叫ぶ。しかしノブナガは振り返るとこう言った。

「何のために戦うか……」

 

 ノブナガの目を見たヒデヨシ。

 すると――

 

「俺は、ノブナガについていく」


 その判断は一瞬だった。

 ヒデヨシもノブナガと共に、天嵐院に吸い寄せられるように歩いてゆく。

 だが――その瞳の奥には、微かに“光”が宿っていた。


「おい! 2人とも!」とシンゲンが慌てる。

「どうなってるんだ?」とケンシン。

「目だ。彼らの目を見てはいけない!」とイエヤス。

「じゃあどうすれば……」とイチリン。


 天嵐院は奇妙な笑いを見せる。それだけで背筋が凍りそうだ。

「ノブナガ、ヒデヨシ――やれ」

「……」


 2人は目を合わせる。

 次の瞬間――黒と金の光が、交差した。


「まずい!」とシンゲンが息をのむ。

「風林火山!」

 盾でウォールを作って、どうにか他のメンバーたちを守ろうとした。


 しかし黒と金の光はシンゲン達の方には向いていない。

「もしかして……あの2人は」


 2つのオーラが渦を巻く。

 炎の刀と金の扇が煌めいている。

 

「俺たちは、不完全だからこそ強い!」

 ノブナガの声が響く。

「志は完成させるためのものじゃない。受け継ぎ、育て、繋ぐためのものだ!」


 天嵐院が顔を歪める。

「お前たち! 私の術が効いていないのか?」


 ヒデヨシも叫ぶ。

「……そうさ。俺ははるか昔、ずっとノブナガの近くにいた。彼のことは目を見ればわかる!」

「何だと……?」

「笑顔と絆にお前の術は勝てない!」

 ヒデヨシの笑みが、重圧の闇を吹き飛ばした。

 金の扇が広がり、黒の刀と共鳴する。


 ――黒金融合。

 志と人情が共鳴し、空間全体を包み込む。


「「合体奥義――天下共創陣ユナイト・オブ・フェローズ!」」


 闇を貫くような風が走る。

 金の光は温かく、黒の光は鋭く――だが、決して相反しない。

 両者がひとつになり、希望の旗が風になびく。

 そしてシンゲンたちに絡まっていた黒い蔦を、2人の光が断ち切った。

 

 天嵐院が驚いたように目を見開く。

「これは……抑え込めない……?」


 6人の足元から、再び光が立ち上がる。

 彼らのスーツが次々に輝きを取り戻してゆく。


「終わらせはしない……!」

 ノブナガの力強い声。


「まさか……理念が、数式を超えるというのか……!」


 天嵐院の瞳に、わずかな“人の色”が戻った。

 その瞬間、空間全体が振動を起こす。

 光と闇の衝突が、次の段階――全員による合体奥義の共鳴へと進もうとしていた。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ