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ギフテッド 無くした記憶

「おはようございます、アルカ先生」


「おはよう、昨日はぐっすり眠れた?」


「はい、でも昨日は急に眠ってしまったみたい……あまり覚えてなくて(笑)」


 シオリは朝目覚めるとベッドの上で寝ていた。昨日は食事をして買い物をして……アルカ先生とキスをした。その後の記憶がない……いや、眠らされてしまったのかも。シオリにとっては初めてのキス、相手はマークスではなかったけど素敵な思い出になるのは間違いない。


「今日は私出掛けるからレッスンはなしね、と言っても無理だから自主練、いい?」


「はい! 先生 大好きです!」


 アルカ先生はそれを笑いながら聞いている。少しだけ恥ずかしそうに…………。



 アルカ先生が出掛けたあと、シオリは魔法の訓練をした。でも昨日のことが頭から離れない……アルカ先生とキス? 先生と生徒、女性通し、あー、頭が混乱する。その時に気付いた……何かが足らない。


(あれ? 頭の中に空洞がある……これって)


 シオリはアルカ先生と出逢った2週間前から記憶を遡る〜いきなり抱きしめられた。なにか理由があって……ダメだ、理由が思い出せない。誰かに似ていたとかそんな話だとは思うが……その記憶が空洞になってるように感じる。


 その後の記憶には暇疵(かし)がないように思える。アルカ先生とキスをしたこともバッチリ覚えている、それも甘い感じ〜恋愛小説で読んだことがある、愛が籠もったキスは甘いと…。


「ただいま戻りました アルカ様?」


 ヨルさんが戻ってきた。シオリは玄関へと向かう。


「ヨルさん、お帰りなさい。アルカ先生は用事で留守にしています」


「なんだ、もう少しゆっくりしてくればよかったな(笑)。今日はマックス充電した私が腕によりをかけて夕飯作りますから後で買い物行きましょ!」


「はい。私もお手伝いします!」


 明るく返事をしておいた。ヨルさんには相談出来ない〜アルカ先生とキスをしたなんて言えない。



 シオリは色々考えてみた。思い出せない記憶はアルカ様に抱きしめられた理由〜カナタ様は皇帝陛下と良い仲という事を考えると、きっと高貴な誰かに似ていて、それが禁断の恋だったりして、あーでも素敵かも(笑)


 きっと悪いことではない。アルカ先生のキスは甘かった。キスした記憶を残してくれたので、他はどうでもいい、とシオリは結論付けた。



「シオリ〜 そろそろ買い物行くわよ〜」


「わかりましたぁ!」



△△△△△△△△△△△△△△△△



「カナタ様〜何ですか? これ……」


「だから言ったろ。転移魔法装置はお漏らしするって(笑) ってかヒナコは両方か(笑)」


 泣きそうになっているヒナコ、失礼なので笑いをこらえる。エリンは……全く平気そうである。


「違います! というか……違いませんけど、、、大きい方はチビッただけで…………」


「なんだ、大きい方が小さいって(笑)」


「クスッ」


 普段はあまり表情を出さないエリンも笑っている。もう少しでカナタの役目も終わることになるが、とても楽しい旅であった、と思える。


「早く着替えてこい! シオリが待ってるぞ」


 シオリは帝都には戻ってこなかった。恐らくマークスと会うのが辛いのだろう。マークス宛の手紙は渡してある、それでお別れか……12年前のフレッドとのお別れと同じである。また縁があれば出逢うことだろう。



 3人はアルカの屋敷を目指した。道中は悪目立ちしている〜エリンの格好が奇抜なのと、ヒナコの際どいスリットドレスのせいであろう。傍から見れば釣り合いの取れない変な集団なのは間違いない。


 小さな公園を抜けて大通りに出る。大通りは人通りが多い。屋台も立ち並んでいて、ここ数年で一番発展したと言っていい街、活気に溢れている。大通りを抜けてアルカの屋敷近くに行くと……アルカとシオリは屋敷の玄関の前でカナタ達を待っていた。


「お迎えご苦労!」


「何言ってんの(笑) まずは屋敷に入って」


 女ばかり6人もアルカの屋敷に集合した。ここで入学の準備を整えてからノールダムに向かう。



「ではシオリとエリン、ヨルとヒナコを伴って入学準備品の買い出しね。私達はミーティング」


「カナタ様、なんか酷くないですか?」


 ヒナコから不満がでるが……


「何を言う、これが世間というものだ。理不尽に不条理、喧嘩も上等!」


「カナタ様は強いから喧嘩は上等ではないです、駄目です!」


 シオリに一言言われてしまった。表情がとても明るい、魔法のレッスンが上手く出来ているのだろう。


「では理不尽上等! 夕刻までに買い物から戻るように。明日の出発に備えて少し話がある では解散!」



 

「みな出掛けたな。シオリの記憶、消去したのか?」


「あぁ。やはりカイル様の転生者という事実は伏せておいた方がいいからね、本人にも。その事実が知れ渡ったとき厄介事が必ず起きるし」


「だな。事実を知るのは卒業後でも遅くない。それよりトコヤミ教の動きが気になる。帝都で一度シオリが狙われてるからな〜シオリの目前で親しい人を殺して、シオリを暴走させようとしてた」


「それは、間違いないのか?」


「昨日、やっと裏が取れた。だからアルカにも報告しておくよ。でも結局、シオリの再生魔法付き回復魔法で無きを得た。呆れる魔力だよ(笑)」


「では当分私はミスルから離れられないか……ノールダムに戻りたかったけど」


「シオリをノールダムに送り届けたら一度戻るよ。なるべく早く」


 ミスルはトコヤミ教の本拠地と考えられている。シオリをトコヤミ教から守るためにも早くノールダムに連れていきたい。明日の早朝、ノールダムに向けて出発することになった。

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