ギフテッド 陛下からの頼み
「シオリちゃん、カナタ様はまた陛下のところ?」
「はい、お願いがあるとかで呼び出されました」
「いやー、あの2人多分デキてるぜ! 12年前から知り合いだったらしいよ〜あのセバスっいう執事が言ってたし。今頃、あんなことやこんなこと……」
ヒナコさんはそう言うと下品にニヤニヤと笑っている。下品な思考は置いておいて、ヒナコさんの情報収集能力は凄い。シオリと素敵なダンスを踊ったマークスくんが陛下の弟君ということも教えてくれた。
「ヒナコさん、ヨダレたれてますよ(笑)」
「まじ?」
「嘘です(笑)」
ヒナコさんとも仲良しになれた。今から友達を作る練習をしていかないと〜学校では苦労するかも知れない。
「失礼します シオリ様に来客です」
誰かと思えば…………
「やあ、シオリさん、昨日はありがとう」
「マークス……くん、いや、殿下」
「いいよ好きに呼んで(笑)」
男の人が訪ねてくる事など初めてのことだ。ヒナコさんは……さり気なく部屋から出ていった……シオリの大ピンチである。
「昨日は楽しかったです。また機会あったら踊ってくださいね(笑)」
「うん、喜んで! そうそう、今日はシオリさんを乗馬に誘いに来たんだ。天気もいいし、丘を1つ超えたところに綺麗な湖があるんだ」
「私、馬に乗ったことなくて……」
「そうなんだ……いや大丈夫、では乗馬の練習をしながら行こう! 乗らないといつまで経っても苦手なままだし」
シオリはマークス殿下に押し切られてしまった。殿下に連れられて厩舎に向かう。
「えーとね、ハミはこう、鐙はこう……」
厩舎に着くと早速装具の解説である。何となくヒナコさんがやっていたことを思い出しながら……案外簡単そうに感じた。
「殿下、あのー、一度乗馬を見せてもらってもいいですか?」
「構わないが……シオリさんは実践的な練習の方が好きなのかな」
「なんか殿下の乗っている姿を真似すれば出来そうな気がして……それと殿下、シオリって呼んでください」
「わかったよシオリ(笑) じゃあ僕も……うるさい大人がいない時は私をマークスと呼んでくれ、約束だ」
話していると暖かい気持ちになる。でも今日は乗馬の練習がメイン、シオリはマークス殿下の騎乗をじっと観察した。
「マークス、乗馬ってかなり簡単ですね! マークスの真似をしただけで……もう乗れそうです!」
マークスは驚いているようだ。でもシオリにとって真似をするのは朝飯前、ものの数十分で馬を走らせることに成功していた。
「驚いたな〜、シオリ、君は名ジョッキーになれるよ」
「では殿下、ではなくマークス、湖まで行ってみましょう!」
シオリはまた一つ、初めての経験をした。
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カナタは陛下の執務室に呼ばれていた。執務室はとてもシンプル、帝国の地図が1枚飾ってある。一組4人がけの応接セット、棚は一つだけありそこには沢山の茶葉が見受けられる。そして、フレッド専用の大きな机には山のように書類が溜まっている。
扉が開いた。フレッドとセバス、そしてもう一人人影がある。
「カナタ、ごめんよ。かなり待たせちゃったね。セバス、お茶入れてくれる?」
「畏まりました」
「陛下、お構いなく…………」
「いいよ、今はフレッドで(笑)」
扉の横に少女が立っていた。シオリより年上に見える、カナタを見ているが、敵対心はなさそうである。
「エリン、こっちに来なさい」
エリンと呼ばれた少女は応接に座った……しかし、奇抜な格好をしている。金髪なのに所々青や緑のメッシュが入っていてメイクも異様に濃い、ギャングが好むファッションである。
「カナタ、こいつはエリン。私の一番下の妹だ。ほら挨拶をしろ、会いたかったんだろ」
「うん。こ こんにちは」
「カナタです」
容姿はギャングのようだが口数少ないし反抗もしない。本当に兄妹なのかと疑いたくなる。
「カナタ、相談というのは………」
「あのー、私を弟子にしてくださいっ! どんな試練でも耐えてみせます!」
(なるほど……そう言う頼みか)
「エリン、フレッドそれは無理だな。私はまだ弟子を取る域に達してないから」
「でも、もう1人弟子がいると聞きましたが」
「シオリか……理由があって残念ながら私の弟子にはなり得ん。彼女は私ではなく他の方の弟子にするつもりだ。でもその前に、学校で学ぶ」
エリンはかなりガッカリしている。泣きそう……心はガラスのようだ。
「カナタ、どうだろう。エリンもその学校で学ばせるってのは。そこでエリンが学業を修め立派な人になったら弟子として認めてくれないか」
「エリンはそれでもいいか? 数日後にはノールダムに立つ予定だが」
「はいっ、ぜひ!」
話が終わるとエリンとセバスが席を外した。執務室にはカナタとフレッド、2人きりに。
「フレッド……あの子、ギフテッドだな」
「ああ、小さな頃から変わってると思ったが……内気なのだがギャングや海賊に憧れていて。心かアンバランスなのも気になる だからノールダムに行かせたいと思っていたんだが……」
「本人が嫌がったのだな(笑) 家族の問題に政治力を活用するのは……フレッドらしい」
「ありがとう。そしてもう一つお願いがある」
フレッドは何やら小さな箱を取り出した。
「私は2人ほど后を迎えることにした。でもカナタを忘れることはできん、いつか、いつか帰ってきてくれればいい、だから……私と婚約してくれないか 第一夫人として」
「でも、私は……」
「別に帰ってこなくてもいい、私の心にずっと居続けて欲しいのだ。私のワガママなのは分かっている、12年の年月を経てカナタと再会し、決意したのだ いつか、気が向いたら戻ってきてくれ」
いきなりのプロポーズ。カナタは失神しそうになった。
その後フレッドに何と答えたか、全く覚えていない。断らなかった気はするが……。
その日の午後、皇帝陛下の第2夫人と第3夫人との成婚が発表された。




