表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/22

ギフテッド ダンスの試練

(足やばい……踊る? なんて無理無理、どーしよ)


 シオリは完全に萎縮していた。カナタ様やヒナコさんは凄い! 大人の女性を心から尊敬した。シオリの元にも次々と男性陣が挨拶をしてくる。目まぐるしくて顔と名前を覚える暇もない。


「あら、シオリちゃん、大人気! ロリコンオヤジに息子の嫁探し、そんな感じねっ(笑)」


 挨拶が少し途切れたところにヒナコさんが話しかけてきた。ヒナコさんも一通りの挨拶が済んだようである。シオリもヘトヘトだが……


「ヒナコさん、私まだお嫁には行きませんから(笑)」


 シオリは笑っているが内心は気が気でなはない。そろそろ始まるのだ……ダンスが。そしていよいよ……


「シオリ嬢、良かったら踊ってくれませんか?」


「あ、は はい」


 真っ先に誘われたのは、比較的若い男性。とは言ってもシオリよりは10歳以上年上である。確か名前はランドといった。まあロリコン親父ではなさそうなので誘いを受けてみたのだが……。


 初めてのダンス。ステップは容易だが、如何せんヒールとモコモコしたドレスが邪魔、鬱陶しい。相手に合わせるだけのぎこちない動きになってしまい……辛い。その後も次から次へとダンスの申し込みが来た〜もううんざりだった。


「シオリ嬢、でしたよね? お疲れのようで……少し休まれたらどうですか? 私はマークスと申します」


 ダンスを申し込みに来た男性を押しのけてマークスという男性が飲み物をさしだしてきた。シオリはそれを受け取り、お礼を述べた。


「ありがとうございます、マークス様」


「少し夜風にあたるといいですよ さぁ、こちらへ……」


 マークスくん、分かっているではないか! それにカッコいい〜歳は18歳くらいか、陛下と同じ金髪で背はそれほど高くはない。シルバーのタキシードがよく似合う。シオリはマークスくんとバルコニーに出た。


「シオリ嬢、ダンスはお嫌いですか? まああんなに踊らされては楽しくなんかないか(笑)」


「私、ダンスなんてしたことなくて。2日でステップは覚えたんですけど……どうしてもヒールで踊るのは」


「シオリ嬢、ダンスって実はとても楽しいものなんですよ。少し休んだら私が楽しさをお教えしましょう! そろそろラストダンスですし(笑)」


 マークスくんの言葉に躍り上がる! ダンスが終わる、それはこの苦痛からの開放。あと一曲我慢すればいいのである。


「はい、では楽しさ教えてもらいます(笑)」




 マークスくんと暫し談笑していたが、ラストダンスのコールがあった。長かった晩餐会がやっと終わる……


「ではシオリ嬢、行きますか!」


「はい」


 シオリはバルコニーを後にする。



 最後のダンス曲、マークスくんは手を取り膝をつく。そして立ち上がると……


「ではシオリ嬢、失礼!」


 何とマークスくんはシオリをお姫様抱っこしてしまった。そして履いていたヒールを脱がした。これには周囲がざわついた……


「マークス様……」


「大丈夫、君だけに恥はかかせないからっ!」


 そう言うとシオリを降ろしたマークスくんも自身の靴を脱ぐ。そして最後の曲が流れた……。


 この開放感! たまらない……マークスくんにリードされながら、カナタ様から教わった剣技のステップのように、優雅に舞う…………え? 楽しい…………そしてマークスくんの笑顔、シオリも自然と笑顔になる。このまま踊り続けたい……



 ラストダンスが終わった。あんなに苦痛だったダンスが……終わったことに寂しさを覚えた。


「どうだったかな? ダンスを楽しめた?」


「はいっ! とても!」


 シオリの鼓動は早くなっていた。



△△△△△△△△△△△△△△△



 晩餐会は終わった。余韻が残る中カナタはバルコニーでマティーニを飲んでいる。シオリのダンス、思い出すだけで、微笑ましい。


「久々のダンスはどうだったかな?」


「フレッド……ありがとう」


 今はバルコニーに2人きり、名前で呼んでも問題はない。月が綺麗な夜だった。


「最後のダンスには度肝を抜かれたな。まさかマークスが……あんなことを」


「フレッドのデジャブを見ているようだった。笑うのを堪えるの大変だった(笑)」


「まさか12年前の私と同じ行動に出るとは……カナタ、決して12年前の話をマークスに話してはいないぞ(笑)」


「さすがに似てるわね。実の兄弟なだけあるわ(笑)」


 12年前の晩餐会を思い出した。貴族に父を殺され、スラムを這いつくばった少女が剣を学び王子様と出逢う、人生で最高の瞬間だったかもしれない。作り笑いではない、自然な笑みが溢れる。


「やっと笑ってくれたね…………カナタ」


「フレッド……」


「私はカナタを一時たりとも忘れたことはないよ……」


「嘘つき(笑)」


 心地よい風と月明かりだけが2人を見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ