第六話 決意
雪が指輪をプレゼントしてくれたあと、私達は早速夜ご飯として買ってきてくれたパンを食べた。
「このパン美味しいね!」
「流石、雪さん!」
女子二人に褒められた雪は少し照れくさそうに笑った。
私達がご飯を食べ終わると、私は二人に向かってこう話した。
「あのさ、私達、いつまでもここにいちゃだめだよね……だから、お金もあるし明日にでもここを出発しない?」
私が言ったあと、少しばかり沈黙が生まれる。
「俺は賛成する。それに、いつかは現実世界への扉を探さないと行けない。見つけたとしても、なにか条件があるかもしれないし」
雪が賛成してくれる。続けてユメも
「私も雪さんの意見に賛成です。他のグループの方とも合流しなくちゃですもんね」
「2人がそう言ってくれて嬉しいよ。じゃあ、明日の朝、ここの店主に少しお金を渡して出発しよう」
「はい!」
「あぁ」
「じゃあ、明日は早くに行くから寝よ〜!」
私が言うと、さっきまでの張り詰めた空気が薄まり、いつものほんわかした空気がここに漂った。私が布団に潜るとき、雪から貰った指輪が月明かりに反射しキラリと光った。
朝
「うぅん、、、あ、おはよぉ……」
私が目覚めると、その声に反応して2人も起きた。
「おはよう」
「うぅ〜ん、おはようございますぅ…」
雪はともかく、ユメは朝が苦手なタイプのようだ。
「あ、昨日雪が買ってくれた夜ご飯の残り食べよ」
昨日雪は、朝ご飯分もと買ったのか、それとも単に沢山買ってきただけかはわからなかったが少なくとも朝ご飯にする分のパンはあった。
「「「いただきま~す!」」」
「やっぱり一日経っても美味しいですね!」
「そうだね!」
そのまま私達はモグモグとパンを食べ尽くした。
「じゃあいよいよ出発するか!」
私が言うと、
「おぉ〜」
とユメが乗ってくれた。そういえば、と思い出し雪に聞く。
「そういえば雪ってもう女装しないの?」
「あ、あぁ、まぁ、い、色々心変わりしたっていうか…うん……まぁ、その……」
こんなにも声を詰まらせる雪は始めて見たのであまり詮索しないこといする。私達は店主のもとに行くと
「この数日間泊めていただきありがとうございました。僅かですが私達からのお礼です。」
と、900ゴールドを出した。
「こ、こんな大金どこで……」
とオドオドしていた。その様子に私達は
「決して怪しいお金ではありません、使ってください」
と言った。
「いやいや、大丈夫だよ。なかなかここに冒険しに来る若者は減ったからね…」
「……昔は多かったんですか?」
「う〜ん、昔はこのあたりに伝説の剣があるって噂されて夢を抱いた少年少女、ましてや大の大人まで来たもんだよ」
懐かしいとでも言うように目を細めた。
「そうなんですね、ちなみにそれってどこだかわかりますか?」
「えっと……確かねぇ、ここから南に真っ直ぐ言ったところかなぁ? 大きい山が目印だよ」
「ありがとうございます!」
私達は深く店主にお辞儀をすると、店を後にした。出るときに、店主がこんな事を言っていた。
『魔者が出るから気をつけるんだよ』と。確かに本は読んだが、実戦は全くしていないので苦労しそうである。
「皆さん、夜に買わなくてはいけないものをリストアップしましたよ。まず、テント・マッチ・ランタン・寝袋が最低必需品です」
「なるほど……」
なんてユメは優秀なんだろう? 雪も優しいし、私はこんなで大丈夫か心配になるほどだ。そんなことも思いつつ、私達は雑貨屋さんに向かった。
雑貨屋さん
「わぁ! いっぱいありますね!」
「そうだね、早く買わないといけないの見つけなくちゃね」
というと、3人はバラバラになって必要なものを探し始めた。
〜数十分後〜
「お会計お願いします!」
「は〜い。合計は1万ゴールドだよー」
「お願いします!」
と私達がお金を差し出した。
「ピッタリ1万ゴールドだねー、ありがとうございましたー」
今回私達はちょっと高級な品々を選んだのでそれなりの値が張ってしまった。仕方が無い。
「アイ、このまま南に向かうんだろ?」
「え、うんそうだけど……なんでわかったの?」
「え、あ、う、ん……勘ってやつかなぁ…」
うまい具合にはぐらかされてしまった。ちょっと気になる。
「まぁ、それはさておき、南に行きましょうか!」
とユメが言うと私達は、南に向かって歩き始めた。