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第四話 王城

「俺、男なんだよね」

「「ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

なんて声をかければいいのかわからず、雪くんの返答を待つしかなかった。

「俺さ、女装してるんだよ」

と言って、被っていた黒髪のかつらをとった。

「なんでって顔してるけど、名前が"雪"だから女の子だって虐められてきたんだよ。だから、女装してる」

「そうだったんだ……」

「え、あ、あの、私、雪"ちゃん"って呼んじゃってたんだけど、なんて呼べばいい?」

「あぁ、"雪"だけでいいんじゃん?」

「了解」

「てか俺……君たちのことなんて呼べばいいの?」

「あぁ〜、確かに下の名前で呼ぶの抵抗あるよね」

「愛月桜さん、私のことは"ユメ"と呼んでください」

「ん〜じゃあ、私のことは"アイ"って呼んで」

「了解。流石にここでは俺着替えられないからトイレで着替えてくる」

「オッケー、ありがとね」

雪が部屋を出たので私達も着替え始める。

「アイさん、この服……かなりボロボロでかなり風通しが良いですね……」

「確かに……ユメ……スカートじゃなくてズボン履いてるはずなのに生地が薄いから寒い」

「ですよね……あ、早く着替えないと雪が入れないので急ぎましょう!」

「そうだね」


数分後〜

コンコン

「は~い、入って良いよ」

というと雪が入ってきた。入ってきた雪はいつも通り(?)だった。まぁ、男だとは言ってたけど、まだ他のチームの皆は知らないから一応女子の格好をしてる。

「あの〜、あんまりジロジロ見られても困るだけど……」

「あぁ、ごめんごめん」

「そういえばもう夜ですけど、寝ますか?」

「そうだね、でもベッドが2つしか無いや」

「俺床で寝るからいいよ」

「でも…、風邪ひきますよ」

「大丈夫。馬鹿は風邪ひかねーから」

「いや……でもね……」

私が渋っていると、

「おやすみ、もう寝るから」

と言って、雪は床で寝息をたてて寝始めた。

「この人3秒で寝れるのか」

私がツッコミを入れてもぐっすり寝てしまっている。

「仕方がありません。私達は、ありがたくベッドで寝ましょう」

「そーだね」

「「おやすみ」」

と言って私達は灯りを消してベッドに潜り込んだ。



翌朝〜

「愛月桜さん、起きてください、朝ですよ」

「うう〜ん…」

「起きてください!」

「はっ! ごめんごめん……すっかり寝ちゃったわ」

私がベッドから体を起こすと、雪はもう起きていた。

「んで、今日どうすんの? 俺等無一文だけど」

「確かに、私達……昨日の服を買うので全財産使い切りましたね」

「あ! 私達が元々着てた服を売ればいいんじゃない? ツギハギはないし、布の素材もいいから……」

「そうですね! そうと決まれば早速いきましょう!」

善は急げと言うようにユメが立ち上がる。

私達は服屋の店主に出かけてきますとだけ伝えると、急いで店から飛び出た。

「売ることのできるお店はどこでしょうか…?」

「こっちのほうじゃね?」

「あ、ありましたよ!」

「雪なんでわかったの?」

「昨日ここ通ったときに、これからに役立ちそうだったから記憶してた」

「雪凄!」

「いやいや、褒められるほどでもないけど……」

「まぁ、行こうよ!」

私は皆に声を掛けると雪が言ってたお店に向かった。そのお店は朝早くなのにも関わらず開いていた。

「おはようございま〜す」

私達が入店すると

「いらっしゃいませ~」

と店主の方が返事した。

「すみません、私この服を売りたいんですけど……」

と言って机の上に売りたい服を出すと店主は目を丸くした。それから服をゆっくり見渡すと、

「嬢ちゃんたち……冒険者か?」

「う〜ん……まぁ、そんな感じです」

「ほぉ〜」

それから暫く考え込むと、

「すまん、ここの店では価値が分からない。こんな服見たこと無いからな。王城にいって王様に見てもらえ。これは珍しい」

なんとも言えない返答……

「すみません、王城ってそんな私達がホイホイ入れるところなんですか?」

「ああ、そうだった。この店は王様との繋がりがあるから紹介状を持っていけ。そうすれば王城の前にいる騎士たちも入れてくれるだろう」

というと、こちらに向かって紹介状であろう手紙を渡してきた。

「ありがとうございます!」

私達はお礼を言うと、王城に向かうべく急ぎ足で店を出た。

王城にいく道中にて

「あの……今思ったんですけど、私達こんなボロボロの格好で王城なんか入れるんでしょうか……?」

ユメの疑問にハッと思い出す。

「もしかしたら服装だけ見られて門前払いされるかもしれない……」

と、私は呟く。隣から雪が

「大丈夫だろ。あのおじさんが俺達を見た目で判断せずに紹介状書いてくれたんだから。多分だけどね」

「ま、まぁ、大丈夫でしょう! 気を取り直して行きましょぉ!」

「そうだね、そうなったらまた考えよう」


王城に着くと王城の門の前に二人の騎士が立っていた。勇気を振り絞って騎士に話しかける。

「あの……すみません。私達、紹介状を貰って来ているものなんですが……」

私達の事をなめ回すように見ると紹介状を一瞥し、

「わかった。客室に案内する」

とぶっきらぼうに返事をしてくれた。私は二人に向かって

「良かったね」

とだけ言うと、ユメがニコッと笑ってくれた。私達が案内された部屋のソファに座ると、お茶とお菓子を出してくれた。私たちがのんびりお茶を飲んでいると、

「待たせたな!」

と、客室の扉が勢いよく開いた。その人物はこちらに向かって歩きながら、

「俺はこの王国の王様、アレンだ」

この瞬間、3人は察した。

「(オレオレ系の人だ!)」

「(なんですか、この人……本当に王様ですかね)」

「(うわ! 俺の苦手なタイプ!)」

「で、話は知ってる。鑑定してほしいものを出せ」

「こちらです……」

「ほぉ〜、これは珍しい。初めてみたな」

王様はじっと、私たちの出した洋服を眺める。

「これらは……ざっと一着10万ゴールドかな」

「「「えぇぇぇぇ!!!」」」

「うるさいぞ、お前等。今すぐ現金で渡そう」

というと王様は近くにいた家来(?)に命令すると、こちらに向かって話かけてきた。

「お前等……勇者か?」

「いいえ、私達は勇者ではありません」

私が代表して応える。

「じゃあ、何者だ」

「異世界の者……というのが一番近い答えでしょうか?」

「ふ〜ん」

返事がつまらなかったのか、興味を無くしたようにしていると、丁度いいタイミングで家来さんが来て、お金を私達に渡してくれた。

「「「ありがとうございます!」」」

私達がお礼を言って、お暇しようとすると、

「おい、お前等の名前を教えろ」

と、言われてしまった。

「愛月桜です」

「夢奈と申します」

「雪…です……」

「なるほど……」

それからしばらくして。

「ユキといったか? お前男だろ」

「そうですが何故分かったのですか?」

雪がなんでわかったんだという呆れ半分の声で言った。

「男の勘ってやつだ。ちょっとユキこっちこい」

と王様は雪を連れて行くとなにやら話を始めた。私は隣にいるユメに向かって

「なに話してるんだろ」

「わかりませんねぇ」

とヒソヒソ話した。しばらくすると雪が顔を真っ赤にしてなにかを握りしめて帰ってきた。

「そういえばお前等……魔力の属性はなんだ?」

「魔力の……属性……ですか?」

「知らんのか? ここはどの民も魔力を持っているぞ。持っていないものは生まれた瞬間に斬首だからな。丁度いい、お前等の魔力の属性を図ってやろう。こっちに来い」

と言って客室から飛び出していったので、仕方なく後について行った。


神殿にて〜

「ここは、どこですか?」

「神殿だ。今から属性を図る。全員赤いカーペットの上に立て」

私達は指示された通りに赤いカーペットの上に立った。王様はなにやら操作をすると、ニヤリと笑って、

「お前等の属性を言う。まずはユキ。お前は魔力持ちで、風の属性と、火の属性を持っている。次はユメナ。魔力持ちで、土と水の属性を持っている。最後はアヅサ。魔力持ちの中でも珍しい、全属性だ。頑張り給え。属性的に、ユキは剣士でユメナは錬金術師、アヅサは魔法使いが向いているだろう。以上だ。下がれ」

とだけ、短く指示されると家来の人たちによって速やかに王城から追い出された。

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